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2015年11月にカナダで開かれた 「ムンク・ディベート」と呼ばれる公開ディベートを本にしたものである。ディベートのテーマ「人間の未来は明るいか」で、パネラーは肯定派はスティーブン・ピンカーとマット・リドレー、否定派はマルコム・グラッドウェルとアラン・ド・ボトンという豪華メンバー。マット・リドレーは最近も『進化は万能である』や大著『繁栄』を読んだ好きなサイエンス・ライターの一人だし、スティーブン・ピンカーは『心の仕組み』や『暴力の人類史』はkindle化されればすぐにでも読んでみたい。マルコム・グラッドウェルは名前は聞いたことがある程度、ボトンという人はまったく知らなかったということを考えると、最初から肯定派と言えるかもしれない。
会場の事前のアンケートでも71%がYESで29%がNOだった。
ディベートの中でなぜか明示的にならなかったが、肯定派が貧困や死亡率などの数値が歴史を通じて上向いていることを主な理由として上げているが、否定派は人の制御を超えるテクノロジーの進化が致命的な問題を起こす可能性があるのではと懸念している。この二つは必ずしも排他的ではない。特に後者は可能性の問題でもある。どうも噛み合わないのは、主催者側がディベートとして設定していることもあるが、無理をしているところもあるのではないだろうか。特にボトンの主張は、あまりにもずれていて少し痛々しい。
さらにミスリードをしていてとても残念なのが、日本語書名やメインの第二章の扉タイトルの「人類は絶滅を免れるのか」。英語では、”Do humankind’s Best Days Lie Ahead?”。まったく意味合いが違ってくる。いったい誰がこんなタイトルをつけたんだと、言いたい。
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『赤の女王 性とヒトの進化』(マット・リドレー)のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4150504180
『進化は万能である』(マット・リドレー)のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152096373
『繁栄 (上・下)』(マット・リドレー)のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152091649
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4152091657
『ゲノムが語る23の物語』(マット・リドレー)のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4314008822
『やわらかな遺伝子』(マット・リドレー)のレビュー
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図書館で見かけ、ピンカーの名前に惹かれて借りる。大学のレポートで、ピンカーの言語野の本が面白かった記憶がある。
ただ、あまり内容のない議論のような気がした。
本のタイトルからして、ディベートの「人類の未来は明るいか」と異なるし…
しかも、かわいそうなことに、4人のディベートなのに、表紙には3人の名前しか載っていない。なぜボトンさんは外されたのか。
ひとまず最後まで読んで、私は楽観主義者でいたいと思った。
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カナダのトロントで半年に1回開催される公共政策に関して専門家を招いて実施される「ムンク・ディベート」というイベント。2015年11月は「人類の未来は明るいか」をテーマに、4人の専門家がディスカッションしており、本著はそれをまとめたもの。
90分のディベートの発言録と、前後のまとめパートで1〜2時間もあれば読了できるでしょうか。
テーマ自体は面白いものなのですが、なにぶんディベートの現場。足の引っ張り合いに終始しているようなシーンもあって、言い返し方のテクニックを見ているのはそれはそれで悪くはないのですが、中身はちょっと薄いかも。
※相手が納得感があることを言ったら「それは今回のテーマとは関係ない」と言い返したり。
面白い論を提起している専門家を見つけるためのツールとして読んで、興味が湧いたらその人の本を読むのがいいのではないかと感じました。
ちなみに、邦題はネガティブな物言いですが、原題は「人類の未来は明るいか」であり、これは出版社さんが日本人にはこの方が売れると思ったからでしょうか。なんとも。
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最高の人工知能が実現すればホモサピエンスは過去のものになる。科学技術を研究する人の数と彼らが自由に使えるテクノロジーの量、そして彼らが得て来た知識の量を考えると、人類は50年前よりも問題解決能力が高まった。
人間はもがく苦しみ続けるが、哲学や芸術などの助けを借りることができる。哲学や芸術は科学と肩を並べて存在し、完璧でなくても痛みの小さな人生を送る助けになってくれる。
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未来に対しての肯定派マット・リドレーとスティーブン・ピンカー、懐疑派のマルコム・グラッドウェル、アラン・ド・ボトンの文明の過去・現在・未来に対するディベートの本。
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ムンクディベート。テーマが壮大過ぎてやや消化不良といった感じ。ただ、リドレーとグラッドウェルの対決は個人的に○
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錚々たるメンバーでのディベートな割に中身は貧弱な印象。まず、日本語のタイトルがあまりに原書と違う。(原題: Do humankind’s best days lie ahead?)
進歩主義の欧米人に「明日は今日より良い日か? 」というニュアンスで問いを立てれば肯定派がやや有利なのは仕様がなく、事実その通りの投票結果となっている。テーマ設定をもう少し狭くした方が良かったかもしれない。
日本語タイトルから、ビョルンロンボルグのような内容の本と期待しただけにやや残念。
ディベート形式なのでスラスラ読め、時間を損した感はないけれど。
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短時間でサラッと読めるディベート。
マルコムグラットウェルのジョークが冴え渡りなかなか楽しい。
しかし結果は予想に反していた。
現場の臨場感はまた違うのだろう。
ともあれ、進歩によって一人の人間が及ぼす事のできる影響は過去に例のないほど大きくなっているのかどうか。
なかなか面白かった。
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賛成派と反対派に知識人を分けて、ディベート開始!その内容を記録したエキサイティングな本で面白い。知識人同士が対談すると、妙に気を遣い合って議論にはならず、相互補完的な意見交換に終始する。そんな日和見な論壇風景が生温いと感じるなら、この本は最適だ。ひろゆきの論破シリーズも本にしてみては?と思い付いたほどだ。お題は、「人類の未来は明るいか」さて自分はどちら側で参加しよう。
と、上記が読み始めた前半。で、読み進めると、ディベート特有の噛み合わない空中論争。テレビタックル読書編。意味のない揚げ足取りと一方的主張にだんだん辟易してくる。あー、そうか。ディベート番組のエンタメとしての醍醐味は、揶揄中傷、煽り発言を発した、あるいは受けた時の「顔」が重要なんだ。それが無い、空回りの言葉の応酬は、トップクラスの知識人の無駄遣いであろう。グダグタ感が目立つ。
それでも、面白かったのと、最後の方、結局、肯定的な内容を示すデータが多い中でのペトロフ事件の引用。マルコム・グラッドウェルのターンだ。ペトロフ事件とは、韓国の民間機がソ連に爆撃された後、ソ連のペトロフ中佐がコンピュータ上に、その報復とも取れる、アメリカからの核ミサイルの発射メッセージを受け取った。アメリカから先制攻撃を受けたら、核を用いて反撃しなければならない。しかし、ペトロフは、これをコンピュータの誤作動としてボタンを押さなかった。
テクノロジーの進化が齎らす未来は明るいか。技術力やグローバル化により規模が拡大し、誤った判断で一撃に未来が損なわれるリスクは高まった。乳児死亡率や貧困率は下がり、教育、健康、衛生水準は上がり、人類は過去よりマシに暮らしている。しかし、テクノロジーの使い道を誤らないようにしなければならない。会場が息を飲む、そうした雰囲気が伝わるようだ。明るい未来への警鐘である。
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「知の最前線」が読めると思って購入したのだが、ディベート特有の「朝まで生テレビ」的罵倒の応酬に心が塞ぎ込んでしまい、低評価に。
訳者によると、『かなりギスギスしたもののような印象を受けるかもしれないが、/会場の雰囲気はとても明るい。/知的な皮肉とジョークをたっぷり交えて/会場の笑いと拍手で議論がストップすることも少なくない』らしいのだが、活字で読むと、残念ながら、キツイ言い合いとしか感じなかった。
そして、議論が深まったとか、他の誰も展開できないほどの論旨の展開があったとか、そういう感想は全くなかった。
ディベートは勝ち負けがあり、負けないためには論理的整合性や相手への敬意を一旦棚上げして、相手の喉元に刃を突き刺す必要があると思う。
私は個人的には、そのような緊張感の中では、知性は活性化しないと思う。
少なくとも、日本人的感性の持ち主にとっては。