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宇宙はいつ、どのように始まったのか?人類の永遠の謎とも言えるその問いには現在、ビッグバン・モデルという解答が与えられている。この概念の誕生に到るまでの、古代から現代にわたり様々に繰り広げられてきた天才たちの苦闘を描く、科学ノンフィクション。
コペルニクス、ガリレオ、ケプラー、ティコ・ブラーエ、アインシュタイン、ハッブルなど、科学の教科書に必ず登場するそうそうたるメンバーの人生、業績を細部にわたって描き出しており、数学概念や科学的な専門用語もわかりやすく説明している。
人間誰もが一度は抱く、「宇宙はどうなっているのか」という疑問に真っ向から立ち向かった科学者たちの生き様に、驚嘆せずにはいられなかった。
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数学の奥深さを平易な表現で語る著者・サイモンシン。本書では、宇宙の成り立ちの証明に取り組んだ科学者らのドラマを真正面から論じている。天動説の誤りを指摘した地動説、『そもそも宇宙はどのように出来上がったのか』という疑問に答えるビッグバン理論。それらが提唱された時代背景や人間の執念などをダイナミックに描く。これまで同様、分かりやすく面白い。科学の醍醐味を味わえる1冊。
著者は科学者と科学技術者は“似て非なるもの”といい、科学者の目的についてアンリ・ポアンカレの言葉を引用する。
「科学者が自然を研究するのは、それが役に立つからではない。科学者が自然を研究するのは、そのなかに喜びを感じるからであり、そこに喜びを感じるのはそれが美しいからである。もしも自然が美しくなかったなら、それは知るに値しないだろうし、もしも自然が知るに値しなかったなら、命は生きるに値しなかったろう。もちろんここで私は五感を刺激する美、質と見かけの美について語っているのではない。私はそのような美の価値を低く見てはいない。それどころか私はそうした美を高く評価している。ただ、そのような美は、科学とは関係のないということだ。科学にかかわる美は、各部分が調和した秩序からもたらされ、純粋な知性によって把握されるようなより深い美なのである」
そして、「良い科学は、検証可能な理論を生み出し、科学は検証によって進歩するのである」と断言し、論をすすめる。
紀元前276年頃に生まれたエラトステネスは、夏至の正午に太陽光が真上から降りそそぐ1つの井戸と1本の棒を使って、地球の円周を測定した。コペルニクスは宇宙の中心は太陽の近くにあり、地球は太陽の周りを回転しているという当時の宇宙観を揺さぶるアイディアを提唱した。ケプラーは、コペルニクス説と詳細な観測データとの間に横たわる矛盾をクリアする新たな説を提示。惑星は円ではなく楕円、一定ではなく速度を変えて運動するなどと主張した。ガリレオは望遠鏡を使い、金星に満ち欠けがあることなどを観測、太陽中心モデルを擁護した。アインシュタインは、空間と時間は伸び縮みするという特殊相対性理論と、ニュートンのものより現実に合う重力理論「一般相対性理論」を作り上げる。エディントンは、日食時の恒星の観測を行い、一般相対性理論の正しさを証明した。
フリードマンとルメートルは“膨張する宇宙”を支持。ルメートルは膨張の出発点「原初の原子」の状態があったと述べ、のちに「ビッグバン・モデル」と呼ばれる宇宙モデルを唱えた。スライファーはドップラー効果による波長のずれを測定し、ほとんどの銀河が遠ざかっているとした。ハッブルは極寒の過酷な夜を望遠鏡のそばで過ごし、精密なデータを発表。宇宙はたしかに膨張しており、しかも規則正しく膨張していることを示した。
ミクロの世界でもビッグバン・モデルを裏付ける研究成果が発表される。ガモフ、アルファー、ハーマンは「初期宇宙を陽子、中性子、電子からなる高密度のスープだった」と考え、長期間かけて行った計算で算出したビッグバンの元素合成と、今日の宇宙に存在する原子の構成比率が合致することを示した。
また、目には見えない電波も裏づけに貢献。「電波天文学」は宇宙に関する莫大な知見をもたらし、新しい銀河が宇宙の遠いところに存在することを明らかにした。ペンジアスとウィルソンは、上記のアルファーら3人が予測したCMB放射(宇宙マイクロ波背景放射)を検出、ビッグバン・モデルに有利な証拠を拾い出した。その後、衛星による観測でCMB放射に微小なゆらぎが見つかり、ビッグバン・モデルの正しさが証明される。
肉眼で遠くを眺める。電波、赤外線、X線望遠鏡を使って多様な側面をみる。ミクロの世界に目を向けて原子の構成からもアプローチ。また、既知と未知の隔たりを“思考の飛躍”で繋ぎ合わせようと試みる。マクロとミクロ、人間の五感では捉えられないものと机上の論理。それらを総動員してもなお、あるいは総動員することで新たに生まれる疑問を解き明かそうと試行錯誤する、科学者らの“飽くなき好奇心”が本書には溢れている。
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宇宙はいつ、どのように始まったのか?人類永遠の謎とも言えるその問いには現在、ある解答が与えられている。ビッグバン・モデル。もはや「旧聞」の感さえあるこの概念には、実は古代から20世紀末の大発見へと到る意外なエピソードと人間ドラマが満ちていた―。有名無名の天才たちの挑戦と挫折、人類の夢と苦闘を描き出す傑作科学ノンフィクション。
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天文学にはほとんど興味のなかった私でも読める内容、天文学者の地道な研究・観測の結果が新たな事実を発見、実証する瞬間は感動的ですらある。しかしどんなにすばらしい発見、確実に裏付けられた事実でも、研究会を牛耳っている高齢な研究者が亡くなるまで、認められなかったというのも悲しい現実。
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ローマ時代から天動説、そして現在のビッグバン理論まで、宇宙というものが数多くの研究者によって少しずつ解き明かされてきた歴史を知ることができる。このシリーズは好きです。
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ビッグバンというある意味であまりに有名な題材ではありますが、実に読ませます。この上巻では時系列に沿って、宇宙のはじまりがビッグバンだと気がつくまでの歴史を延べています。人類はこのような思考と観測をもとにビッグバンにたどり着いたのかとその筋道に感心し、学者たちの織りなすドラマとエピソードに魅せられました。
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天文学から、物理学、化学まで、ビックバン理論が出来るまでの過程が順を追って説明される。フェルマーの最終定理と同様、読みやすし、読んでるとアガル。有名人の格言がツボ。
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「フェルマーの最終定理」に引き続き、明快な文章と、簡易な例え、そして適切な図解が豊富で非常に読みやすい。軽快な読み口ながらも、読者の知的好奇心に訴える文章は、昔読んだアシモフの科学エッセイが思い起こされて、懐かしさも感じつつ非常に興味深く読めて面白かった。
ちょっとだけ難点を挙げれば上下巻とはいえ、何となく話の進み方が遅く感じるところ。希望としては最終的には現代物理学まで踏み込んだ宇宙創成の瞬間の解説までしてくれることを期待しているのだが、このペースでそこまでいけるかどうかがちょっと不安。
まあそこは今後の楽しみということで引き続き読み進めて行こうと思う。
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面白かったです。
同じ作者さんの本でいうならばフェルマーのほうが好みでしたが、宇宙もすごくおもしろかった。
ビックバンモデルが作られるまでには途方もない時間がかかったのですねぇ。すごいな。
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天文学の変遷については、以前読んだ「眠れなくなる宇宙のはなし」で把握していたのだけど、それでもサイモン・シンの知的興奮を呼び起こす構成・文章力にしてやられた。
なによりも解説がわかりやすい。特に苦もなく読み進めることが出来た。
さて、上巻ではビッグ・バンがついにその可能性とともに姿を現した。下巻ではどんなドラマと知的興奮が待ち受けているのだろう。
-下巻に続く
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サイモン・シン氏が書いているのでとても読みやすい.
宇宙だけではなく,関係が深い物理学についても説明している.
そっちの方面も知ってるとなお良いが,知らなくてもサクサク読めるかと.
サイモン氏はどれもおすすめ.
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サイモン・シンの本は、内容が難しいのに読んだら止まらないすごい文章力。
村上春樹と同じくらい、名前で読みたい!と思わせる人。
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第一章 はじめに神は・・・のまとめ
初期の社会は神話、神、怪物ですべてを説明していた。
①紀元前六世紀のギリシャで:
哲学者たちは宇宙を自然現象として(超自然現象としてではなく)記述し始めた。
↓
ギリシャの〈原〉科学者たちは、
・シンプルで
・正確で
・自然で
・使い勝手の良い
理論とモデルを探した。
⇓ ↓
⇓ 彼らは
⇓ ・実験と観測
⇓ ・論理と理論(と数学)
⇓ を使って、地球、太陽、月の大きさと、
⇓ それら相互の距離を測ることに成功した。
⇓
⇓ ギリシャの天文学者は宇宙について、
間違った「地球モデル」を確立し
太陽と恒星と惑星は
不動の地球のまわりを回るとした。
②地球中心モデルでは不十分だとわかると、
天文学者たちはその場しのぎの対応をした。
(例:プトレマイオスの周転円は惑星の逆行運動を説明した)
↓
神学者は、聖書と矛盾しない地球中心モデルに
忠実であることを天文学者に求めた。
③十六世紀:
コペルニクスは宇宙の太陽中心モデルを作った。
そのモデルでは地球とのその他の惑星は太陽のまわりを回る。
このモデルはシンプルで、まずまずの精度をもっていた。
残念ながら、コペルニクスの太陽中心モデルは無視された。なぜなら、
・コペルニクスはほぼ無名だったから
・彼のモデルは常識に反していたから
・彼のモデルはプトレマイオスのモデルより精度が低かったから
・宗教上の(そして科学上の)主流派は、独創的な思想を抑圧したから
④コペルニクスのモデルはティコの観測結果を用いた
ケプラーにより改良された。ケプラーは、惑星は円軌道ではなく
(ごくわずかにつぶれた)楕円軌道を描くことを示した。
かくして太陽中心モデルは、
地球中心モデルよりもシンプルで、精度が高くなった。
⑤ガリレオは太陽中心モデルを擁護した。彼は望遠鏡を使って、
木星には衛星があること、太陽には黒点があること、
近世には満ち欠けがあることを示したが、
これらは古代の理論と矛盾し、新しい理論を支持した。
↓
ガリレオは、太陽中心モデルの正しさを説明する本を書いたが、
残念ながら教会は1633年、ガリレオを脅してそれを撤回させた。
その後の数世紀に、教会はもっと寛容になった。
天文学者たちは太陽中心モデルを支持し、科学は盛んになった。
⑥1900年までには、宇宙論研究社者は、
宇宙は過去のある時点で想像されたのではなく、
永遠の過去から存在しているうと結論した。
しかしこの理論を裏づける証拠はなかった。
宇宙は永遠だとする仮説は、殆ど神話と変わらなかった。
⑦二十世紀の宇宙論研究者は、
あらためて宇宙の大問題に立ち返り、
科学的に取り組んでいくことになる。
↓
宇宙は過去のある時点で創造されたのか?
それとも、
永遠の過去から存在していたのか?
第二章 宇宙の理論のまとめ
①1670年代、レーマーは木星の衛星の一つを観測することにより、
光の速度は有限であることを証明した。
結局、光の速度は秒速三十万キロメートルであることがわかった。
②保守的な人々は宇宙はエーテルで満たされていると信じていた。
エーテルは光を運ぶ媒質である。
測定される光の速度は、エーテルに対する速度だったと考えられていた。
地球はエーテルを突っ切って宇宙空間を進むから
エーテル風が生じるだろう。エーテル風に逆らって進む光の速度は、
エーテル風に沿って進む光の速度とは違うはずだ。
↓
1880年代、マイケルソンとモーリーはこれを検証したが、
速度に違いがあるという証拠は得られなかった。
それゆえ二人はエーテルの存在ん対して、反証をあげたことになる。
③エーテルは存在せず、光の速度はエーテルに対するものではない。
そこでアインシュタインは、光の速度は観測者に対して一定であると主張した。
これはほかのすべての連動についてわれわれが経験することと矛盾する。
アインシュタインは正しかった。
↓
この仮定(と、ガリレオの相対性原理)から、
アインシュタインは特殊相対性理論を作り上げた(1905年)。
特殊相対性理論によれば、空間と時間はともに伸び縮みする。
時間と空間を統一したのが時空である。
↓
1915年、アインシュタインは一般相対性理論を作り上げた。
この理論はニュートンのものよりも優れた重力理論となった。
一般相対性理論は重力が非常に強い状況下(たとえば恒星など)でも成り立つからである。
④アインシュタインとニュートンの重力理論は、
水星の軌道と、太陽のまわりで光がどのくらい曲がるかに関して検証された(1919年)。
どちらの場合もアインシュタインが正しく、ニュートンは間違っていた。
⑤アインシュタインはこの新しい重力理論を使って宇宙全体を調べた。
問題:重力による引っ張りのため宇宙は収縮する。
解決策:アインシュタインは一般相対性理論に宇宙定数をつけ加えた。
・これにより一種の反重力効果が生じる。
・これが宇宙の収縮を食い止める。
・静的で永遠な宇宙という一般的な宇宙観に合う。
⑥その間、フリードマンとルメートルは宇宙定数を捨て、
宇宙は動的かもしれないという案を出した。
二人は膨張する宇宙を描きだした。
ルメートルは非常に小さな原初の原子を考え、
その原子が爆発して、膨張して、今日の宇宙に進化したと述べた。
↓
これを宇宙のビッグバン・モデルと呼ぼう。
ビッグバン宇宙か?
あるいは
静的で永遠な宇宙か?
フリードマンとルメートルの膨張する宇宙は無視された。
それを支持する観測事実がないうちは、
ビッグバン・モデルは沈滞を余儀なくさ���た。
科学者の大半は、あいかわらず永遠で性的な宇宙を信じていた。
第三章 大論争のまとめ
①天文学者たちは次々と大きな望遠鏡を建設していった。
彼らは天空を探り、星までの距離を測定した。
②1770年代にはハーシェルが、
太陽は星の集団に埋もれていることを示した。
この星の集団が天の川銀河である。
天の川銀河はことによると宇宙で唯一の銀河なのか?
③1784年までに、メシエ星雲(ぼんやりした光のシミのようなもの)の
カタログを作った。それは星(くっきりした光の点)とは違って見えた。
大論争は星雲の素性に関するものである。
↓
星雲は天の川銀河の内部にある天体なのか?
↓
星雲は別個の銀河なのか?
↓
天の川銀河は唯一の銀河なのか?
宇宙のいたるところに銀河がちりばめられているのか?
④1912年、ヘンリエッタ・リーヴィットはケフェウス型変光星を調べ、
変光周期は実際の明るさの指標となり、
変光星までの距離を見積もれることを示した。
↓
天文学者は宇宙を測定する物差しを手に入れた。
⑤1923年、エドウィン・ハッブルは星雲内にケフェウス型変光星を見つけ、
その星雲は天の川銀河のはるかかなたにあることを証明した!
(ほとんどの)星雲は別個の銀河であり、
われわれの天の川銀河と同様、何十億個もの星を含んでいる。
◎宇宙は銀河に満ちていたのだ。
⑥分光学:原子はそれぞれ決まった波長の光を放出したり吸収したりする。
星の光を調べれば、星が何でできているかがわかる。
↓
天文学者は星の光の波長がわずかにずれていることに気付いた。
この現象はドップラー効果によって説明できた。
ドップラー効果とは、
近づいてくる星の光は波長の短い方にずれ(青方偏移)、
遠ざかっていく星の光は波長の長い方にずれる(赤方偏移)
というもの。
↓
銀河の大半は天の川銀河から
遠ざかっているように見えた(赤方偏移を示す)!
⑦1929年、ハッブルは銀河の距離と速度のあいだに
直接的な関係があることを示した。
これが今日ハッブルの法則として知られているものである。
↓
もし銀河が後退しているなら、
1、明日は今日より遠ざかっているだろう。
2、昨日はもっと近かったろう。
3、昨年はもっともっと近かったろう。
4、過去のどこかの時点で、全ての銀河は天の川銀河に重なっていたはずだ。
ハッブルの測定は、
宇宙は小さなぎゅうぎゅう詰めの状態から出発して、
外向きに膨張したことを示しているらしかった。
宇宙は今日も膨張を続けている。
これはビッグバンの証拠なのだろうか?
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最初は「え? ああいやアレですよ。もういまさら地動説から説明しなくても」……と若干流れに乗り切れなかったんだけど、科学者だけれど、人間味あふれる争いやら、学説のライフサイクルの過酷さ、今まで名前も知ららなかった科学者の偉大な発見の積み重ねの上に築かれた現在。
まだ上巻なのに、私の知識レベルを超えているんだけど、下巻理解できるんだろうか。
不安になりつつも、下巻を読むのが楽しみである。
そういえば、大体の科学系の本に載ってるニュートンの扱い……「あいつすごいんだけど、アインシュタインの方がすごいんだよね」という、アインシュタインの踏み台となっているような。
発見の割りに、ページの割かれ具合が酷い気がする。気になる。
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第二章の相対性理論も面白いが,ハーシェルやハッブルらの個性の強い観測家たちの登場する第三章がとても面白い.最小限の式しか使わずにダイナミックに話を展開していく著書の力量はすごい.もちろん勉強はするにしても専門でもない分野でこれだけ読者に語ることのできるのはとんでもない才能だと思う.