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舞台は昭和30年代後半の阪神、エロを生業とするエロ事師たちが、大衆の求めるエロを追求しながら生きて行く様が描かれている。
内容はエロなのにのかかわらず、個性的な登場人物や、大阪弁のゆったりとした文章を中心にストーリーが展開されて行くので、よんでいてとても気持ちがいい作品でした。
エロに飢える大衆のため、警察に隠れながらエロ商材を提供する様は、エロが満ち溢れてしまっている現代を生きる我々からすると衝撃的であり、将来の日本、いや世界を憂いてしまう。
これは現代人がエロを見つめ直すために読むべき一冊かもしれない。
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2012/11/19読了。ピース又吉の本で紹介されてたのを見て、読んでみました。又吉のように本屋さんでタイトルを尋ねることはなく、Amazonでポチっと購入。便利な時代です。
"エロ事師"とはエロを扱う商売で、ブルーフィルムやらエロ写真やら、コールガールの斡旋などなど扱ってるんですが、主人公スブやんは『これは人助けなんや』、と純粋で真面目。
アングラな内容かと思いきや、明るくて笑えて、スブやんの仲間たちのやりとりが微笑ましいのです。何ページかに一回、プッと吹き出しちゃいました。
大阪弁と独特な文章も、最初は読みづらいと思ったけど、だんだんヤミツキになります。
最後のオチ、んーースブやん、そうきたかぁ。可笑しい、でもちょっと切ない。
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ピース又吉さんの『第2図書係補佐』でも取り上げられていたと思う。傑作と聞きながらなかなか読めていなかった。
野坂さんは前に「火垂るの墓」とかを読んだことがあったので初めてではなかったが、読み始めて「そういえばこういう文体だった」と思い出した。講談師のような(講談師で合っているのか?)独特の語り。
語りがそうさせるのかもしれないが、可笑しさと哀しさが同居している。読んでいるこちらも泣き笑いとなる。まあ「エロ」だし、出てくるエピソードもかなりきわどくて爽やかさは皆無なのだけど、人を見る視線がやさしくて、そこがいい。
出だしに神戸の空襲でスブやんの母親が焼死してしまうところがある。そう言っている箇所はないのだが、何となくスブやん(スブやんだけでないけど)が、「こんなことしてたらお母ちゃんに怒られるなぁ 悪いなぁ」と言っているような気がする。この悪くなりきれない感じが、どこか温かい人物像につながっているのかもしれない。
最近読んでいた、内田樹『寝ながら学ぶ構造主義』でのフーコーに対する記述で「性のカタログ化」というタームがあって、読んでてそれともだいぶ呼応した。
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明るく悲しく滑稽な男たち。
戦争童話を書いた同一著者とは思えなかったが 陰気なところが無いので面白く読めました。
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ブルーフィルムやら、エロ本やら…エロ事師のスブやんは、あの手この手でエロビジネスをする。そんな調子だから、アゲられたりするものの、徐々に仲間を増やし、ビジネスを広げていく。
ただ、終盤は仲間割れを起こし、相手方は組んだパートナーが悪く、うまくいっていない様子。そして、こちらはスブやんが死んでしまう…
際どいこと書いてるはずなのに、すっきりまとまっていて、底辺の方であがきながらも笑いアリで生きている様子に好感が持てた。
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戦争から十数年後の貧しい世の中でエロ事師という不法な商売をするスブやん以下その仲間、そして家族をめぐる話。
結構露骨な描写をしているのに、古語を交えた関西弁のような文体で、下品にはならない。
“狼口鯨頭”やら“竜飛虎歩”などと厳厳しく書かれたら、
馬鹿馬鹿しいのになにか崇高なものさえ感じさせる。
独特のリズムや哀愁、土地の雰囲気が染み込んだ文章を書けるのは羨ましい。
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エロを生業とする最低な人間たちの悲喜こもごもを明るく活写。落語のように軽快な語り口は誠に中毒性高し。唾棄すべきはずの彼らを、愛おしくすら感じてしまいました。
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追悼。
こういうのが真骨頂なんでしょうね。
文体に迫力があるし、大阪弁がそれにはまってええ味出してますね。
世の男どもの「エロ」を満たすために奔走する事師たちの執念がすごいです。
そして「エロ」を求める男どもの哀しい性。。
なかなか手に入らないからこそ妄想が膨らみ、渇望するところを、現代だとちょっとスマホをいじれば簡単に「エロ」が手に入ってしまう訳で。
草食系だの少子化だの言う一因かなーと思いますね。
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ピース又吉推薦!の帯を見て購入。
時代は昭和初期(?)
とにかくずーっと昔。
ブルーフィルムの制作に情熱を注ぐエロ事師たち。
それぞれが想う、男のロマン。
貫く思い。
とか言ってみたものの、
その真剣さが馬鹿馬鹿しくて、
笑える。
女の私には決して分からない気持ちもあると思う。
言葉が理解できなくて、読むのに少し難儀したけれど、
ラストは秀逸。
なんだそれ、馬鹿馬鹿しい 笑
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戦争が終わった後の日本で生きることを「エロ」を通して描いた名作。エロには人間の歪さや本能、醜悪さ、そして美しさが詰まっている。他人には理解できないとされる嗜好を、共有し実現させる登場人物達は、法律で取り締まれても、その慈愛の精神は尊い。
戦時中を生き延び、その世界でしか生きられない人間が、その世界で生きることを選びとり、生きる意味を見出そうと必死にもがき続けるなか、戦争を知らない世代があっさりとその境界線を超える残酷さとそれでも知恵を使って生き延びようとする人間の覚悟を、エロを通じることでライトに、そしてストレートに伝えてくる。
人間の本能と秘事と強く生きようとする意志、生き抜く覚悟は不変のものだから、訴えるものは強く、古くならない。
軽妙に現実を描く作者はやはり時代の寵児であり、大いなる語り手であったのだろうと再認識させられる一冊。
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くだらない、と思って読みはじめたのだが、単なるエロではない、あくまで「エロ事師」としてのプロ根性を見せつけられて、思わず感心してしまった。世の男のロマンへの献身、そこにかける情熱、そしてそれ故に最後には仲違いまでしてしまうエロ事師たち。そこに見る、人間のおかしみ、せつなさ、いとおしさ。大阪弁の独特の浪曲風の語り口と相まって、その音楽の中にどっぷりと浸ってしまった。くだらないと思っても、是非最後まで読んで頂きたい。解説は澁澤龍彦。
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ポルノや売春などのエロを生業とした男たちの悲喜こもごも。
猥雑だが淫猥な印象は受けない。
巧みな語り口に滑稽さが見えるからだろうか。
エロにまつわる仕事や、携わる男たちは醜いと思う。
だがこの小説における登場人物たちはじつに愛らしい。
これは"リアリティがない"せいなのか
偏見を取り去った"これこそがリアリティ"なのか
私にはわからないが、
(一元的に取り出すことはできないにせよ)
美しくないものだからこそ志高く持ちたいと思う
人間というちっぽけな存在ありのままが
この作品には描かれているのかもしれない。
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書けば天才、飲めばその量きりがなく、歌えば幾人もの女とろかす・・・天才野坂昭如の異色デビュー作。
この小説にはある種の「悲しさ」が通底している。まず主人公のネーミングだろう。主人公のあだ名は「スブやん」。これは酢豚から来ているのだが、ただ豚のように太っているだけなら「ブタやん」でいいだろう。そこをもの悲しさからくる酢豚にひっかけて「スブやん」・・・野坂さんはあだ名をつける天才だ。『とむらい師たち』の主人公はデスマスク業者にひっかけて「ガンめん」だし『騒動師たち』はチェ・ゲバラにひっかけて「ケバラ(毛腹)」だし、『スクラップ集団』はバキュームカーにひっかけて「ホース」。
次に特筆すべきは会話文と地の文のテンポの良さだろう。スブやんご一行が温泉宿に泊まり、暇つぶしにわが逸物の比べあいをするシーンのわけわからない難解漢字を入り混ぜた近世文学風の描写、オカマバーでのオカマと処女の「子宮に腕突っ込んで奥歯ガタガタ言わせたるぞ!」「ええやん、やってみて!」みたいなテンポの良い会話、どれも型破りである。
そして大阪弁のテンポの良さ。大阪弁と言っても一昔前の大阪弁だろう。これがかわいらしくて良い。
最後に主人公スブやんの死にざま。スブやんは途中でインポになるのだが、最後に車にはねられて死ぬ時に背骨を強打してなんの具合か勃起したまま死んでしまう。「観念としてのエロティシズム」とかはよくわからないが、印象的なシーンだろう。笑ってしまいました。ジョンジョンジョン―――。
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50年近く前に書かれた作品。
この頃に比べると、露骨で直接的なエロを誰もが見れるし発信する事が出来るようになった。
でもね、本質的なものは何も変わらない。この時代に「スブやん」みたいな人がいたら、やっぱりエロ事師になっているだろうな。ここまでカッコよく大往生は出来ないと思うけど。
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女性の立場から、作者の言葉を借りて言えば「けったくそわるい」のに、どこか憎めない。あとがきにもあるとおり、男女の営みそのものが微細に描かれるわけでないのがポイントかも。あくまで芸術、ヒューマニズムとしてのエロを追い求める登場人物と、それぞれのキャラクターに用意された皮肉的なのに軽快なオチ。特に主人公の追う道は女性の私からすれば滑稽なのに、最後は本の少し涙を誘われような展開、作者のうまさにしてやられた。