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デパートに対する人のイメージはそれぞれある。物産展、デパ地下のおいしいもの、値段が高いなど。
著者はデパート業界で長く活躍した後、日本経営理念史研究所主催して、百貨店の経営理念史を研究という内部事情を知っている方の本。
百貨店という名前について、1909年を過ぎてから、「実業界」という雑誌の主幹であった桑谷定逸が使い始めたとある。明治20年から30年ごろにかけて、欧米の「デパートメントストア」を視察に訪れた日本人が、「百貨万般を取り扱っている店」すなわち「百貨店」という語呂の良さを選んだからと言われていると書いている。
最初は、三越がイメージを大事にした戦略を取って高貴な方から時の英雄、東郷平八郎まで得意先にして、そして、売れっ子芸者に三越の最新の帯を送って締めさせてアピールしたそうだ。表の派手さもさることながら、客に対する誠心誠意の接客を心掛けて信用を確立したとある。
しかし、関東大震災で被害を受けて、百貨店業界は廃砂イメージだけではやってはいけないので、生活必需品の販売を始めた。そして、著者は、日本の百貨店は欧米と比較すると食料品の比率が高い特徴があり、震災後の復興の過程で、現在のような食料品を扱う「日本の百貨店」の原型が出来上がったと述べている。
厳しい百貨店業界。これからどう魅力をアピールしていくのか気になる。