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マーケティングにたずさわるものとして
とても興味深く、面白く、共感をもって読めた。
・市場の成長が頭打ちで、所得増加が見込めない。
・お金やモノに執着することへの疲れ。
・同じ目的や価値観をもった多くの人たちと出会える
ソーシャルメディアの普及。
これらが折り重なり、新しい消費の形態や価値観が
生まれ始めていることを
アメリカのいくつかの事例をもとに紹介してくれる。
特にこれからの消費の形態が
「消費=有償」ではなく、
「有償」+「交換」+「無償」という選択肢からなる
という考え方は目から鱗の表現だった。
金融危機から始まる生活の閉塞感や将来への不透明感、
持続的なモノコトへの関心から
このようなライフスタイルやビジネス的思考が生まれることに
共感とともに納得感があるが、
これがこれからの時代、普遍性を持つのか、
多数派になっていくのかを注目していきたい。
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著者の一人ジョン・ガーズマが勤めるマーケティング&コミュニケ
ーション会社のヤング&ルビカムは、1993年以後、BAV(ブランド
アセットバリュエーター)と呼ばれる調査を行っています。この調
査によると、近年、明らかに米国人達の消費や生き方に対する価値
観は変化してきているのだそうです。
調査から浮かび上がってきたのは、カネやモノに対する考え方を改
め、シンプルで堅実な生活を指向するようになると共に、企業や組
織に頼らず自分でできることは自分でしようと自立的に生きるよう
になり、家族や友人や地元の価値を再発見している人々の姿です。
明らかに「幸せ」に対する価値観が変わってきているのです。
そして、堅実で思慮深くなった人々は、消費行動においても、自ら
の価値観や幸せ観に合う企業の製品を選ぶようになっています。
「何を持つか」から「どう生きるか」へ関心が移った人々にとって、
「企業の生き様」が消費の判断基準として浮上しているのです。
このデータが示す変化が、現実にどんな変化として現れているのか
を確認するために、著者達はアメリカ中の個人や企業にインタビュ
ーをして回ります。カンザスシティから始まり、ロサンジェルスま
での10都市での個人や企業との出会い。その実践に明日のアメリ
カをつくる《希望の灯》を著者達は見ます。そう、実際にそれは希
望を感じさせる取組みばかりです。
これら10都市での実践から教えられるのは、解決策は一つではな
く、必ず何か希望につながる道はあること。そして、大きく見える
問題も、小さなことから始めればいつしか解決の糸口が見えてくる、
という問題解決のアプローチでした。同時に、苦境に陥った時でも、
それまでの生き方に捉われず、柔軟に状況に適応していけば人は必
ず生きられる道を見つけられる。そういうしなやかでしたたかな生
き方がこれからの時代を生き抜く上で何よりも大事になる、という
ことも教えられたのでした。
実際、先日、石巻を訪れた時に思ったのも同じことでした。全てを
失って生きる気力をなくし、自殺する人が増える一方で、それまで
の仕事は捨て、新しいビジネス機会に果敢に挑戦している人々も生
まれています。危機を前にして、個人の生き方、考え方の違いがこ
んなにも露骨に出てくるのかとショックを受けたのですが、恐らく
戦後の復興期も同じような感じだったのでしょう。ホンダやソニー
の設立が1946年ですが、危機をチャンスと捉え、新しいことに果敢
に挑戦していける人々が次の時代を切り開いていくのだと思います。
過去10年間、アメリカでは同時多発テロ、イラク戦争、サブプライ
ム問題、リーマンショック等、ロクな事がありません。しかし、混
乱が続く社会の中で、人々はしなやかに、したたかに生き始めてい
ることを本書は教えてくれます。その実践の中から、従来の古臭い
企業や国家の論理とは別の、新しい価値観に基づく新しい世界が生
まれてく���のかもしれません。
震災後の社会を生きる上でも、これからの企業経営を考える上でも
必読の一冊です。是非、読んでみてください。
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▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)
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アメリカの消費者は、経済力の低下にもかかわらず、市場では以前
よりむしろ大きなパワーを発揮している。思慮深い支出をとおして
需要を抑制することにより、品質を向上させてより責任ある行動を
とるよう、企業に迫っている。言葉を換えるなら、希少性を増す一
方のお金を、よりよい経験や社会、それどころかよりよい世界を買
うために使っているのだ。
「不運に見舞われた土地も、機会に溢れた現代のフロンティアたり
える」
地元で稼いだお金を地元で使い、多くの人々にこの町を捨てさせた
不安に立ち向かおうというのだ。これは戦術というより生き様であ
り、希望の表明である。
景気が悪いなかで経済的な苦境への対処、自己研鑽、公開講義によ
る啓発などを望む人々にとって、公立図書館はなくてはならない場
所となる
「物持ちのよい生活」への志向が強まっているため、凄まじいDIY
ブームが巻き起こっている。
他力本願を脱して自助自立するには、新しい技能や知識を身につけ、
たゆみない向上を目指せばよい。(…)アメリカ人は他の支出は切
り詰めても、勉学にはお金を使いつづけている。
「物事の答えはひとつに決まるとはかぎりません。臨機応変に対応
しなくては。ですが、解決策は必ずあるはずです」
「しなやかに生きる」という戦略をとる人々は、枠にとらわれない
発想をし、余計な費用を削ぎ落とし、景気の風向きに応じて優先順
位を決めている。
「モノを手に入れる」ことがかつてのアメリカンドリームだったと
するなら、いまでは「機敏さを身につける」がそれにとって代わっ
た。しかも、人々は「モノへの執着を断ち切ったら、肩の荷が下り
て気分が楽になり、チャンスを掴みやすい」という感想をさまざま
な局面で抱いている。
ソーシャルメディアの時代には、多くの従業員を抱える企業は社外
から届いた苦情や批判に対応するために、誠実さや風通しのよさを
培わなくてはならないだろう。これをうまく行うには、経営者やマ
ネジャーには包容力が求められる。「他人に影響力をおよぼそうと
するなら、周囲からの影響を受け入れる姿勢も必要でしょうね」
おおむね1980年から1998年のあいだに生まれた新世紀世代は、幅
広い視点で人生と向き合い、なすことすべてに意味を求める。
この世代はきわめて楽観的だといえ、全体の80%近くが「上の世代
と比べて、自分たちはよりよい世の中を築くチャンスに恵まれてい
る」と回答し、「前向きな変化へと社会を導かなくてはいけないと
感じる」としている。新世紀世代は、危機後の状況をさまざまな意
味で真っ白なキャンパスのようにとらえている。そもそも、失うも
��などそれほど持っていなかったのだ。
「何を持つか」から「どう生きるか」へと重点が変化したのだ。
信頼。
市場に、いや、人間関係すべてに関係するもののなかで何より重要
なもの、それが信頼である。当然すぎて拍子抜けするかもしれない
が、信頼は人と人とのかかわりや、個人、地域社会、そして国家に
とってもあまりに重要であるから、あらためてじっくり考える意義
がある。
彼(ザッポス創業者のトニー・シェイ)は息の長い繁栄を目指す人
に向けて「優先順位をつけるなら、カネは上位五つのうち上から四
番目でなくちゃいけない」と語る。上位三つとは他者との関係性、
価値あるものを創造したいという志、人生を自分で切り開こうとす
る意欲である。つまり、お金は幸せを運んでくれるわけではないが、
幸せであればお金は稼げるのだ。
「信頼とは(…)コミュニケーションを続けていくための枠組みだ」
「真の開放性だけがビジネスを前進させるのです」
顧客は企業とその行動に注意深く目を光らせている。インターネッ
トで武装した彼らは、何かあればすかさず批判を展開するが、聞く
耳を持つ企業には建設的な助言もする。
2008年以降、高い支持を集めるのは、ビジネスを超えた高次の理
念、プロジェクト、施策とのかかわりが強く認識されている企業や
ブランドである。
わたしたちは、消費しない社会に向かっているわけではなく、消費
のもたらす変化をとおして社会をよい方向へ導こうとしている。
世の中が変化するなか、リスクを最小限に抑えようとの姿勢で世間
とかかわるのではなく、「市場に対して開かれた企業になる」と腹
をくくらなくてはいけない。先頭を走る企業は、思いやりや人間味
を示すことが競争優位になるのだと悟っている。
寛容の重要性が増しているのは、危機後は絞り込みではなく、包み
込みの時代だからだ。「右か左か」という発想は通用しない。無私
になって大多数の人々に尽くそうとする者がパワーを手にする。
ネットワーク化した経済に加わる企業が増えて、ネットワークの論
理をもとに「大きな問題も小さな問題が絡み合ったものにすぎず、
解決策もまた互いに結びついている」と悟ると、大きな問題への解
決策が見えてくるだろう。
理念をとおして顧客とつながると、企業は唯一無二の存在になれる。
そのような企業が売るのは、靴などの商品そのものよりもむしろ共
感や尊敬の念である。食事を供するというより、希望に満ちた地域
社会を生み出している。自動車を製造するというより、公正さ、懐
の深さ、対話を約束している。
わたしたちがお金を払うのは商品に対してではない。意味に対して
である。
過去に危機に陥った時期と同じく、アメリカ人は自分たちの理念を
頼りに危機から抜け出そうとしている。犠牲を払い、自分たちにつ
いて考え直し、いっそう身を粉にして働くなか、思っていた以上の
逞しさと能力があることに目覚めている。不況のせいで必要に迫��
れて自己改造に乗り出し、優先順位を改め、創造性を解き放ち、本
当に大切な人や物事とのつながりをあらためて築いている。大不況
は予期せぬ贈り物をくれた。わたしたちは前へ進むためのエネルギ
ーと決意を新たにできたのだ。
正しい発想をする人はいずれ、大不況を「アメリカにとってまたと
ない慈雨だった」と振り返るはずだ。
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●[2]編集後記
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先週と今週は、妻が娘を連れて里帰り中につき、やもめ生活を送っ
ています。妻や娘に会えないのは寂しいけれど、誰にも邪魔されな
い一人の時間があるのはやはりいいものです。
もっとも、一人になったからと言って炊事洗濯掃除等の家事がなく
なるわけでなく、分担ができない分、かえって家事に費やす時間が
増えているような気もします。家族や友人と過ごしていると気付き
にくいけれど、生きるということの大半は、実は、食べたり、身の
回りのことをしたりということに費やされているのだな、と改めて
思います。コミュニケーションの時間を除けば、人間の暮しなんて、
実に即物的なものなのですね。逆に言うと、コミュニケーションが
あるからこそ、人間は人間でいられるということかもしれません。
老いて仕事も家族もなくなったら、人と交わる時間が少なくなりま
すから、この即物的な時間に支配されることになります。気の置け
ない、お金がなくても気兼ねなく遊べる仲間がそばにいればいいけ
れど、そうでないと家事をする以外は家に引きこもってテレビを見
るだけ、という生活になってしまう。そうならないためには、一生
追い続けることのできるライフワークを持つか、豊かな人間関係を
築くか、しかないのでしょう。
こうやって久しぶりの一人暮しで「お一人様」の老後に思いを馳せ
てしまうのも、自分が中年になった証なのでしょうね。
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アメリカのデータであるが、「自分の意思で目的をもって対価を払う」消費行動に変わったということについて書いてあり。
その消費行動にソーシャルメディアが目的をもった人をより繋げやすくしているとのこと。
最近のメディアトレンドと、消費者の行動変化の関係をかかれていて、なんか整理できた。
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リーマンショック、またはその頃から、消費者(これからは「顧客」と呼ぶべきと本書では言っているが)のマインドがどのように変化しているか、「何を持つか」より「どう生きるか」について、市井の人々から、著名人にまで、数多くのインタビューで解説。また、ヤング&ルビカムのBAV(ブランド・アセット・バリュエーター)の調査結果からもその傾向を明らかにしている。前半はちょっともったりしているが、後半はおもしろい。昨今の「シェア」や「マーケティング3.0」に通じる部分もあり、ブランドについて考える人にお勧め。
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購買活動に起こっている変化をいろいろな事例を交えて、紹介している。
ソーシャルメディア、信頼、本質。面白い事例がたくさんあって参考になる。
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消費社会に疲れていた。
会社の価値観が一緒なら買う。
広告発信者通りにはもう動かない。(ツイッターでの酷評)
「モノを集める」から「知識を蓄える」図書館の役割
ソーシャルメディアが目的と人をつなげる
4,5人の熱心なメンバー→嗜好の一致する顧客を結びつけてコミュニティへ
リピート客>客単価の最大化 ※うちはどっち???
低価格っで長時間居座る客を歓迎。
無料ネット接続、ライブ演奏
【グルーポン】一定以上の仲間が集まったらアッと驚く大幅割引
自己表現は新しいエンターテインメント
個人が巨大メディアと互角に
込み入った世の中で意味あるつながりを探し求める人達
(ツイッター、読書会は自然なこと。
自分の内側から楽しむ。
×マッサージ ○自分で体を動かす
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今まさに、私が感じていることがそのまま書いてあるような本。
アメリカではサブプライムローン問題を契機として、危機感から消費者意識に変化が起こった。その結果、本の帯に示されているコピーに言わせれば「何を持つか」から「どう生きるか」に意識が変化し、それが消費のスタイルにも影響を与えたという趣旨。
私は「efficiency」から「sustainability」の消費に変化してきた動きだとみている。
日本ではまだ始まったばかりの段階だが、東日本大震災を契機に、復興とともに消費の質が変わっていくものと思う。
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世界の幸せの基準が確実に変化している、それを実感させる一冊。
リーマンショック、大震災、無差別テロなどの経験を通じ、今を自分らしく、助け合い、つながり、自然のめぐみの大切さ、それを求めることが幸せにつながることを感じ始めている。今まさに世界は幸せの基準のシフトチェンジをしている。これから世界がつながり、ともに助け合い、平和に導かれるイメージが沸く一冊で勉強になった。
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人々の購買行動や幸せの基準、価値観が変わってきている(一部は正常に戻った)ことを実例を交えながら記述されています。
個人的には、日本ではこういった動きは(あるけど目立ったものが)まだまだ少ないかなぁと感じています。
もちろん、自分自身がそういったものを生み出していく(見出していく)世代で、「少ない」と言っている場合ではないのですが…。
完全に好みの問題ですが、訳された文章が若干読みにくく、読むのに少し時間が掛かってしまいました。
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リーマンショック後に大不況となったアメリカを舞台に展開している。
様々な地域におけるその土地土地の本来の文化と通じながら、人と人との間の距離(企業とお客様の距離)を縮めていくような事業を行っている人々の活動を取材し、それらの行動や信念などを解説している。
企業とお客様の距離について距離を縮めるにはどうしたら良いか?を悩む自分にとって、この著書の中で出てくる様々な人々の行動や信念は、事業を行うための当たり前の心構えを再認識できたり、新たな視点の発見につなげることができた。
実体験を基に記述された内容は一読の価値があると思います。
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時代と共に変わる消費のあり方。
消費動向を見ることで、人々が何を大事にしているのかが見えてくる。
WEBでの買い物が出来る時代だが、人との繋がりが大事なのは変わらず、SNSの拡大で消費者はただものを買うだけの存在ではなく、企業・会社へ大きな影響力を与える顧客となってきている。
企業・会社は素直さ・正直さ・謙虚さ・公益性などが重要になり、偽装されたそれらのものはすぐに見破られ相手にされなくなる。
企業としての姿勢を考えさせられる本。
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http://ameblo.jp/w92-3/entry-11072736615.html
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スペンドシフトとは?
・自分を飾るより、自分を賢くするためにお金を使う
・ただ安く買うより、地域が潤うようにお金を使う
・モノを手に入れるより、絆を強めるためにお金を使う
・有名企業でなくても、信頼できる企業から買う
・消費するだけでなく、自ら創造する人になる!
少なくとも世界的に先進国に住んでる人の心理は変わってきてると実感させてくれる本。
自分自身も消費に対しての気持ちの変化を感じていたので、すんなりと共感できる部分も多かった。また、そこにはビジネスチャンスを感じることもあった。
メインはアメリカの事例ではあるが、「欲しいものから必要なものを重視する」、「虚栄心を満たす商品への関心を失い、本物らしさや意味を感じさせる商品を購入するようになった」、「公的資金で救済された企業の製品やサービスを購入する可能性は低い」等々。
背景には金融危機がある。これまでの過剰な支出は借金の上に成り立っており、投機的なお金が右から左に流れるだけだった。今は投機的な資産が相当な目減りを記録し、使えるお金は汗して稼いだお金となる。
当然同じお金でも重みが違い、大事に使う様になった。
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2,3割ぐらいしか読んでないけどアメリカってものすごい遅れてるのかもって思った。見えてる部分は進んでんのかもしれないけど見えない部分がすごい遅れてる感じ。日本と真逆
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モデルケースが延々と続くので(そういう本なのだけど)後半は結構飽きた。世の中を動かすのはモノから意味へ。消費者→顧客へ。そんなに新しい話でもないような。