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不穏。同調。不気味。現実。恐怖。不安。
すべてを入れてミックスしても、一つ一つの粒が際立っている。
そんな小説。今のこの時期に読むとかなり現実と同期する感じがする。
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主人公の少女時代の回想として語られる海辺の復興の町。統制された町。幻想のディストピア。病気なのはどちらなのか?狂っているのは誰なのか?苦しくってぎゅうぎゅうする。薄気味悪くってぞわぞわする。どう生きるのが正しくって、どう生きるのが幸せなのか?エンディングも読後感も悪い。作者の術中に嵌っている。
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ーー本当に病気なのはあなた方の方です。せいぜいそうやって、どこまでも仮想現実を生きていけばいいんだ。(p.182)
世界が狂う時、正気でいることは、狂気に囚われていることと見做される。
使い古されたモチーフかもしれないけれど、震災後の風景を念頭に読むと、また違った響きを帯びてくる。
村田沙耶香さんの『消滅世界』や、今村夏子さんの『こちら、あみ子』に通じる読後感だった。
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三角をみて、みんなが丸というとだんだん丸になっていく、と書かれていた言葉が印象的。
同調とか洗脳って自分の考えがなく生きていけるから楽だし、周りからの圧力を感じず生きていけるので、
ある意味究極の幸せなのかもしれない。
まぁ気づいた時の喪失感とか虚無感がすごいだろうから、そうはなりたくない。
だけど実は自分も今同調している状態なのかもなぁ…
と思える怖さがあった
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最終章はまるで鈍器で頭を殴られたような衝撃があった。全編を通して作中にずっと漂っていた不気味さ、海塚市の気味の悪さがこの最終章で一気に昇華されている。見事な結末。
こんなに最後の一行で打ちのめされた小説は他に記憶にない。
主人公の小学五年生の恭子の目を通して描かれた海塚市民の姿がとにかく不気味。得体の知れない悍ましさが漂っている。大人の欺瞞に疑問を持ち斜に構えてしまう子供ならではの感性の裏に、「本当にこの街の人々はどこかおかしい」と思わせる確かな淡々とした描写。直接的なビッグブラザーが存在しない、よりグロテスクな日本的管理社会。“世間”という言葉の持つ異様性、異常性。
出版時期から間違いなくあの災害を念頭に置いて書かれたことは察せられるがその深奥にある日本社会の薄暗さの描写は他に類するところがない。
同調するか、抵抗するか。狂うか、狂わないか。普通や一般という名の異常な正常者。正気なのは、間違っているのはどちらなのか、次第に分からなくなる。これは一種のサイコホラー作品だ。
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なんて怖い小説なんだ。
読み終わったあと、背筋がゾッとした。
冒頭から、薄々と漂う不穏な空気。
何かおぞましいものをみんなが見ないふりをしていることだけがわかるけど、それが何かはわからない。
淡々と子供が死んでいく。
最後の章で、これまでの点々とした違和感が線になる。
どうして、浩子ちゃんは似顔絵を見て首を絞めるほど怒ったのか。
どうして、赤ちゃんを見つめることが咎められることになるのか。
どうして、肉や魚をわざわざ買って捨てるのか。
どうして、緊張するとTシャツが濡れるのか…
どうして、うーちゃんは後ろ足で立って体当たりで餌を欲しがるのか…
主人公が淡く心を寄せていた川西さんが、20年もの投獄に引き渡した人物だというのがまた、辛い。容赦ない…
一見のどかな日本の村社会だが、起こっていることは侍女の物語や1984などのおそろしい世界と変わらない。
この人の他の本も読んでみたい。
あぁ、おそろしかった…
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なんてこった。前評判も知らずに手に取ったらおったまげた。小学校女児の目線から語られる東日本震災復興を背景にした薄暗い家族小説かと思いきや、読み進めていくうちにどんどん訳がわからなくなり、最終的に実は限りなくリアルなファンタジー世界観の近未来ディストピア小説だったと理解した。
大災害のようなものが起こり、皆が避難していたけれど結局はどこも同じだと悟り故郷である海岸の漁村に戻ってきて、そこで同調圧力という名の絆を糧に元の生活を営もうとする。相互監視下で反体制派を逮捕し駆逐しながら、子供達が死ぬような毒に侵された食材を美味しいと食べ続けながら。それに同調できない奴等は「病気」であり、隔離施設へ収監されてしまう。その収監された女性が自身の過去を思い出しながら綴った日記がこの作品(でも自由になりたいから感情や考えはすべて嘘で塗り固めましたよ)という体裁。
日本社会特有の田舎の連帯感とか同調圧力というものは、疎外したい異物がいるからこそより結束力を強固に感じ取れる訳で。自分達の絆に罅を入れようとする異物は病気+でも逆に自分達の絆を確かめるための大事な存在ボラートでもある=ボラート病。上手いタイトルつけたなぁと思います。
不気味だし訳わからんし何だこりゃ??と思っていたが、別に主人公も母親も精神患ってる訳でも狂ってた訳でもなかったんだね。最後まで読んでわかるこのどんでん返し、主人公の叫びはお見事。ただもう少し謎や背景が解明される作品の方が好みなので☆3。
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著者は芥川賞作家の吉村萬壱さん。震災から復興した町の物語、ディストピア小説等の触れ込みがあり、怖いもの見たさで手にしました。
物語は、主人公の恭子が小5の頃を回想する形で始まります。舞台はB県海塚市。長い避難生活から戻ってきた人々は、〝結び合い〟で繋がった人たちです。
ところが、何ということでしょう! 少しずつ不穏な様子が描かれていきます。同級生がぽろぽろ死に、葬儀や学校での授業での異様な光景、海塚讃歌、食の安心・安全の同調圧力等々、不穏を通り越して、宗教がかった怖さと危うさを感じます。盲信する人にとっては理想郷、外から見たら暗黒社会です。
因みに、「ボラード」とは、船を繋ぎとめる太い鉄柱で、道路の車止めとしても設置される物とのこと。恭子はどちらの世界に繋ぎ止められるのでしょうか‥?
福島第一原発事故で帰宅困難を強いられている方がいまだにいる中、放射能とその後、被災地の未来と重ねて考えさせられました。
何が正しく、何が真実なのかが曖昧な世の中ですが、簡単に集団心理に巻き込まれずに、違和感をもてる人でありたいし、行政が愚かな方向に進まないことを願うばかりです。
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これは本当に怖かった。
ちょうど震災の数年後くらいに読んだのもあって、排他的な街の雰囲気や、異物を良しとしない不穏な感じが常にまとわりついてくる感じ。
大人になった今、もう一回読んでみたい。
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すごかった。
信頼する案内者のおすすめにて予備知識なしで読んだがそれで正解。先入感やネタバレなしで読むべき。
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怖い。逃げる場所があるようでないのが本当に怖かった。同調圧力を感じずに過ごしたら、気持ちの良い達成感とかあるんだろう。それに乗っかって生きていけたら幸せに死ねるのかもと思う。でも本当に怖い話。