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やっぱり、窪美澄さんの小説は好きだなぁ。
湿度や温度が体感できるような文章だとか、登場人物の描き方だとか。
作品に漂う不穏な雰囲気も、丁度良いバランス。
239ページの終わりで、わざと伏せられている「誰」の部分に、読者はちゃんと気が付いているんだけれど、ページをめくって初めて、「あ、やっぱり」となるのとかも、流石です。
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恋愛小説と呼ぶにはもったいない。でもなんて表現していいかわからない。人間小説みたいな?たまに無性に読みたくなるこういった人間臭い小説は大概の場合すっきりとした終わりではない気がするけれど、窪さんが書くお話は最後に一掬いの許しがある。みひろも圭佑も裕太も、みんな何らかの形で許される。そして同時に読者も何か許されたような気分になる。そんな生ぬるい心地よさがきっとこの本の魅力なんじゃないかと思う。
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裕太とみひろは遠回りしたね。圭祐が囚われていたのは自己嫌悪かな。
最初の「なすすべもない」が一番引き込まれた。恋なのか、性欲なのか。生々しい。
最後の圭祐の章は大事なのかもしれないけど、なくても良かった。
窪さんの小説は、隙間を満たして欲しいと他人に願ってもいいと思わされる。
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遠回りを重ねて、自分の手に入れたいものを手に入れる人たちの話。
自らの決めた枠から飛び出すことがなかなかできない圭ちゃん。
セックスもできない自分に、一人の男として、などと言う権利があるのだろうか。
この独白が象徴的だな。
と言っても、こういう圭ちゃんみたいな、枠の中に他人もはめ込もうとしてしまう人が苦手なので、最後まで好きにはなれなかったけど。。でもそうやって圭ちゃんのことを見てる私も、圭ちゃんと同じなんだろうなぁ。
みひろよかったねーと思いつつ、タッチ的な関係性があまり好きではないので、それほどのめり込めなかったな。
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小さな商店街の中で育った3人。文房具屋の娘のみひろに、酒屋の兄弟・圭祐と裕太。
みひろの母は男が出来て家を出ながらまた舞い戻ってきた経過を持ち、兄弟の父は浮気性で妻に隠れて他所に通った過去を持つ。
夫婦の契りを結びながら、ひとりの人に添い遂げることが出来ない人の性を、間近に見ながら育った3人の三角関係。
圭祐と同棲しながら裕太に思いを残すみひろの中で迸る明け透けで赤裸々な女の生理が生々しい。
みひろに思いを残しながら他の女性と交わる裕太もよくある男の生態なら、みひろの欲望を取り違えて不妊治療に励む圭祐も切ない。
ひとりの人に決めて結婚しながら他の異性に気が行くのはよくあることで、人間ってどうしようもない動物だとは思うけど、そうした男女の情欲を描いて、それぞれの狂おしい心持ちは自分に当て嵌まるようでもあり、どうしようもない妄想が弾ける中、彼らがどうなっていくんだろうと頁を捲った。
感情の奔流の物語であったが、終章の話の落ち着け方に好感。
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なんていうか窪美澄のどろっとした生々しさの良いところが詰まってる気がして、とても好き。
優しくなんてないし、この世は割とどうしようもなくて、悲しいことのが多くあって、それはだいたい避けようもない、誰も悪くないものだったりもするんだけど、最後は何故か笑って明日を迎えられるような気がする。窪美澄の小説を読むと、話は重いのに、何故か救われたような気持ちになる私がいて、それなのにしばらくは、その小説のことが私を支配していて、一週間は小説のシーンが頭の中で反芻されてる。
三角関係、で済ませられるなら、どれだけ楽だろう。セックスレス、で済ませられるならどれだけ楽だろう。
大人になればなるほど、余計なしがらみのようなものは増えていくように思うけど、それは逃れようがないのかも
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商店街に生まれ育った少女とその幼なじみの兄弟、大人になった三人の関係が揺らいでいく様をそれぞれの視線で描く。「いんらんおんな」と卑下される愚行や思慮に欠ける行為も憎めない登場人物たちにかかると無垢な営みに思えてくる。ボタンをひとつ掛け違えると修復不能になりそうな事態に陥りながらも温かみを感じさせるラストにホッとさせられる。
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『アニバーサリー』は正直物足りない面があったけど、これはもうずっしり……そして、もやっとした読後感。圭ちゃん、かわいそ、というのが素直な感想です。圭祐と裕太の兄弟は同じ商店街で育ったみひろに恋をして、みひろが選んだのは圭祐。なのに、結婚を目前にして圭祐がEDになり、セックスレスに。まあ、大切な問題ではありますが……なんだかなあ、とも思う。根底には裕太への想いがあり、都合よく逃げ込める場所があるみひろのことがずるいなあと感じてしまう。えらく遠回りをして収まるべきところに収まったということだとしても後味悪し。みひろ、モテモテでいいなあ、狭い世間だからこれから大変だろうなあというのが率直な感想です。
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抑揚をかんじさせない世界観。それぞれの主人公がかかえる言葉に出来ない悩みが、共感できて、自分の救いにもなる。
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同じ商店街で暮らした、兄弟と兄の彼女。3人の物語をそれぞれの目線で語った連作短編集。3人がそれぞれ2つの短編で主人公となる。
性欲と愛情、親子の確執、それぞれのパートナーとの苦悩、さびれていく商店街。いんらんじゃない女なんていないってフレーズは男にとって恐ろしく、とても切ない。
誰もが持っていそうな歪な愛の形を描くのが上手な作家だ。
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あぁ人間臭いなぁ…と、まず感じた。
基本的にはみんな自分が一番大事で、自分の気持ちに正直になることで誰かを傷つけたりして、そのくせ変に気を遣い合ったりもして。
そして、女性の性欲というものにまっすぐ向き合っている作品というのはもしかしたら珍しいかもしれない、と思った。
同じく窪さんの「ふがいない僕は空を見た」にもそういう要素はあるけれど、この小説ではもっとリアルに描かれている。
同じ商店街で幼なじみとして育ったみひろと圭祐・裕太の兄弟。
高校時代から付き合い始め圭祐と同棲しているみひろは、長い間圭祐との間にセックスがないことに悩み、そんなことで悩む自分に嫌悪感を抱いていた。
昔からみひろに対する淡い想いを抱いていた裕太は、うまくいかなくなってきている2人の関係に感づき、そしてみひろは、同い年で気安く接することができる裕太に徐々に惹かれ始める。
スタートが違っていたら、と考えるのは、鶏が先か卵が先か、という話になってしまうのだけど、物事のはじめが違っていたら遠回りしなくて済むこともたくさんあるんだろうな、とついつい思ってしまう。
でもその遠回りの過程が人の関係性に影響をもたらすことも多々あるだろうから、そう思うと必要な無駄だったのだろうか、とも思う。
シンプルな三角関係なのだけど、少女マンガ的な美しいものではなくて、だからと言ってドロドロもしていなくて、みんなが少しずつ諦めたり狡さがあったり見ないふりをして逃げたり、そういうところがリアル。
本当はこうすれば良いのだろうと頭では分かっていても実際そんな風に行動することはできなくて思い悩んだり、好きな相手の幸せを願いつつも自分の欲望を捨てきることができなかったり。
みひろが持つ、女の生理的な感情にドキっとさせられることも多々。これは男の人は見たくない側面なのかも。
自分の彼氏や夫の性的な部分を、女って平気で友だちやら同僚やらに言っちゃったりするけど(この小説にもそういう場面が)男の人は絶対嫌だろうなと思う。
私も出来れば友だちからそういう話は聞きたくないけど。笑
心が繋がっていれば体なんて、という話って昔からあるけれど、そのふたつを切り離すのは無理がある、表裏一体のもの。体の面が原因で心が離れてしまうことも実はけっこう多いだろうから。
でも大切に思うからこそ口には出せなくてすれ違うっていうのがまた厄介なところだったりして。
窪さんの小説は相変わらず鈍い爪痕を残す、と思う。致命傷ではないものの長く残る傷痕のような。
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商店街の女性と兄弟の話。
愛と欲と情は一緒ではないんだな。
人間らしく暗くて淋しい。
それだから人の温かさが欲しいんだよね。
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生きることは本当楽しいし、難しい。いろんな生き方があって 私ではない誰かの生き方を感じたい。そう思ってなんだかどろどろと生々しさを感じる話に浸りたくて本屋で見つけて手に取った。
地元の商店街の、ちいさな世界の中でのお話。それぞれの生活を覗き見ているみたい。
「誰にも遠慮はいらないの。なんでも言葉にして伝えないと。どんな小さなことでも。幸せが逃げてしまうよ」
素直ではない自分には、なかなか難しいなぁ。卑屈にならずに、まっすぐ生きるには一体どうしたらいいんだろう?
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以前「晴天の迷いクジラ」を読んだ時、体調が悪かったこともあり、ずっと苦手意識が強かったのですが
今作は目が疲れるのも構わず読みふけってしまいました。
小さな商店街で育ったみひろと、みひろを好きな兄弟の圭祐と裕太。みひろは圭祐と結婚を前提に同棲していたが、セックスレスになったことで三人の関係が変化して行き…。
みひろの性欲を受け入れられない圭祐、自分の強い性欲が嫌いな母親に似ている気がして苦しむみひろ、自分を使えと言いながらいざとなったら拒絶する裕太と、
普段は気づかないフリをしている感情がとても丁寧に細やかに描かれてしまっていて、読みながら苦しくなるのに、その苦しさが心地良くなって読むのを止められなくなりました。
小さなコミュニティ内の息苦しさもまた然りです。
描写が目に浮かびやすく映画を見ているようで、いつか映画化されたらいいなぁと思える小説でした。
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商店街小説が好きなので読んだのですが、アタリ!でした。
兄と弟が幼なじみの女の子を好きになって取り合うとか、とてもロマンチックです。この小説はとっても現実的でロマンチックな雰囲気はないのですが、楽しめました。