紙の本
幻想文学テイストが似合う『冬』
2017/06/08 04:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
スウェーデン南東部に、海岸線に沿うようにして浮かぶエーランド島が舞台。
最も近い都市はカルマルで、ストックホルムとマルメのちょうど中間地点ぐらいにある。
島はバルト海に面していて、冬は海が凍るしブリザードもやってくる。 スウェーデンといっても、広い。
なんかもう、このシチュエーションだけで心惹かれる。
ストックホルムを離れて、近くに灯台のあるこの島の家に越してきたヨアキム一家。
この家族には悲しい過去があったが、それを振り切るために新しい生活を出発させたのに、またしても悲劇が・・・。
この古い屋敷には幽霊伝説があり、それがキワモノとしてではなく物語にうまく入り込んでいるというか、不思議な抒情性を全編に漂わせる効果をもたらしていて素敵です。
ほんとは『黄昏に眠る秋』から続くエーランド島四部作らしいのですが、主要人物が違うので(探偵役になる人だけが同じっぽい)どこから読んでも大丈夫らしい。
実際、この話の中では『黄昏に眠る秋』に関しての言及はなかった。
雰囲気だけで十分に読ませる作品なんだけど、最後にはしっかりミステリとしての解決が提示されていて・・・なんだかいきなり現実的になってちょっとびっくりした。
幻想文学的にまとめてもよかったのかもしれない。
もうひとつの主役は時の流れと、過去の死者たちだから。
投稿元:
レビューを見る
ストックホルムから島に移住してきた一家。
越して間もない頃、妻が海で溺れて発見される。
殺されたのか?事故なのか?
同じ頃、島に来た警察官。警察官の大叔父がその謎を解く。
#幽霊現象
投稿元:
レビューを見る
なんとも、地っ味ぃ~な話(笑)
もちろん誉め言葉。それも最大限!
北欧ミステリーは前に何冊か読んだけど、どれもイマイチで。
読んでる時はそこそこ面白いんだけど、読み終わった途端「あぁー、つまんなかった」と、なぜか口から出ちゃう昨今のハリウッド映画みたいだなーと、すっかり敬遠していたのだが、これは逆転満塁ホームランだった。
とにかく地っ味ぃ~に、少しずつ少しずつ話が進んでいくところがよかったんだろうなぁー。
最期の「なんだよ、それ?」的な明後日の方から飛んでくるような変化球が全然気にならないくらい、というより世の中の事件なんてまぁそんなもんだよなぁーと思えるのは、やっぱり地味なストーリーの一つ一つが少しずつ少しずつ積み重なった展開なればこそなんだろう。
話の舞台であるウナギ岬の屋敷を買ったヨアキム、コソ泥のヘンリク、警察官のティルダと大叔父のイェルロフと、もはや誰が主人公だかわからない3つのパートがゆっくりゆっくり進みつつ、間にウナギ岬で起こった過去の話が語られていく。
ヨアキムの奥さんの死体が見つかることで物語が動くかと思いきや、それでもペースは変わらない。
たぶん、2/3くらいが進んだ辺りだったか?
ティルダがヨアキムに昔のウナギ岬を知るイェルロフを紹介し、ヘンリクとコソ泥仲間の関係が不穏さを見せた辺りから、話は少しずつ加速していく(むしろ、そこから先の方が長く感じるのは面白いところw)。
「過雪」という暴風雪がやってくる気配漂う中、ティルダはヘンリクたちコソ泥の手がかりをつかみ、イェルロフはヨアキムの奥さんの死の真相を推理、ヘンリクとコソ泥仲間は決裂。
一方、ウナギ岬の家で不可思議なことを体験していたヨアキムは、そこである物とあることを見つけたことで、かつて起こった姉の死に疑問を抱くようになる。
ついにやってきた「過雪」。3つのパートがウナギ岬に集まって……
大体こんな感じか?
書ききれなかったが、それぞれのパートに大なり小なり怪談めいた出来事が絡んでくるのが面白いところ。
その怪談めいた出来事が話を展開させ、登場人物に真相を気づかせていく、その辺りのさじ加減は絶妙。
でもって、その怪談の怪談っぽさのさじ加減がまたいいんだよなぁー。
どこぞの国のミステリー小説に出てくる「怪談」、または「実話怪談」と称する作り話のような、オドロオドロ話じゃないところが。
怖がらせるための作為がないから、ソレはさり気ないんだけど、そのさり気なさゆえソレの冷たさが伝わってくる…、みたいなところがある。
難を言えば、その「過雪」の極寒っぷりがイマイチ伝わってこなかったかなぁ…。
登場人物たちがそれほど防寒着を着ている風でもないのに、何だかずいぶん長い時間外にいたように感じた。
あと、「ウナギ岬」と「過雪」は、現地の通称にした方がよかった気がする。日本語にしたことで、逆にイメージしずらい(違うイメージになっちゃう?)気がした。
(日本人からみて)不思議だったのは、ヨアキム夫妻とミカエル夫妻が親しい友人であること。
スウェーデン��超福祉国家くらいで、経済事情とか市民の暮らしとかはよくわからない。
でも、夫妻とも教師であるヨアキム一家と別荘とモータークルーザーを所有するミカエル夫妻って、日本でいえば地方公務員(学校の先生)とそれなりの会社経営者となると思うのだが、その二つが家族ぐるみで親しく付きあっているって、日本だと普通ないけどなぁ…。
それが、いわゆる北欧の高福祉高税金で成り立つのなら、日本人もいろいろ考えた方がいいと思うんだけど…。
ただまぁ日本は税金ガッポリ取ったら、取っただけガッポリ使っちゃう(ていうか、ぽっぽしちゃう?w)国だから、まずそこを変えないと無理だろうな(爆)
投稿元:
レビューを見る
面白い。でも、600ページ近い作品は初老には読了に時間がかかりすぎて。もっと早く読めたら、さらに面白さは増幅したのかもしれません。ただ、やっぱり私は海外ミステリーは苦手かもしれません。
投稿元:
レビューを見る
スウェーデン、エーランド島にある双子の灯台を望む古い屋敷に越してきた家族に訪れた悲劇。前作「黄昏に眠る秋」同様、ゆっくりと人間関係が剥がされてゆく。過去と現在を往復しながら、ブリザードの雪や暗い海に世界に引き摺り込まれるような錯覚を覚える。
前作に続き、老人イェロホフも登場し、ほっとさせられる。
投稿元:
レビューを見る
・あらすじ
エーランド島シリーズ2作目。
エーランド島東北部、ウナギ岬にある19世紀に建てられた灯台守の屋敷が舞台。
屋敷に越してきたヴェスティン一家に起こった事件とそこで暮らしてきた人々の歴史、幽霊話と追悼と思い出話が本筋。
そこに空き巣三人組とエーランド島に赴任してきた新人女性警官の3組のエピソードが交錯し後半で収束していく。
・感想
ミステリー要素はメインではなく、厳しい環境の中人々の営みを支え続けてきた屋敷とその土地で過去生きていた人々、そして現在生きている人々の苦悩や自然への畏怖が描かれてた。
屋敷に刻まれた悲しみの記憶とそこに生きていた人々に想いを馳せ、そして連綿と続き交差してきた様々なものの途中に自分はいっときぽつんと立っているんだな、とふと考える。
基本的には諸行無常盛者必衰の精神で生きてるけど、だからといって人々の歴史、大切にしてきたものを軽んじることは違うし、その塩梅やせめぎあいってどこでも難しいねと思った。