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芥川賞のコンビニ人間が読みたくて、予習として。「授乳」よりは読みやすかった。
こういう、もしもの世界の話は割と好き。
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10人産んだら1人殺せる世界。
少子化社会の中、子どもを持つことが一つのステータスになりうることはひしひしと感じる現実があるので、本作の一見とんでもない設定も妙なリアリティーがあるように感じられる。正義とは?正しい、とは?倫理観の転換。
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短篇集。10人産んだら一人殺して良い“殺人出産制度”のある世界を描いた「殺人出産」、二人で恋愛をする(カップル)現実とは異なり、三人で付き合う(トリプル)という選択肢が生まれた世界「トリプル」、ほか2篇。
<表題作>
構図としては『消滅世界』に似ており、「殺人出産制度」を称賛する人、批判する人がいて、主人公がその間に立っている。
異なる点としては、殺人の是非が議論されているように、命の重みについて語られることが多いことだろうか。この世界では、人口減少を食い止める制度として殺人出産があり、それが推奨すらされている。10人産んだ人に殺された人は、「皆のために犠牲になった素晴らしい人」(p.51)扱い。時代が時代なら英霊とでも呼ばれていただろう。大きな時代の流れの犠牲者、と考えると何だか戦争文学みたいだけど、日常生活の中に潜んでいるという点ではこっちの方が不気味。
現実世界の常識に対する懐疑の姿勢は他の小説同様で、主人公のセリフ「今の私は、昔の世界も今の世界も、遠く感じます。大きな時の中で世界はグラデーションしていて、対極に思えても二つの色彩は繋がってる。だから、いま、立っている世界の『正常』が、一瞬の蜃気楼に感じるんです」(p.89)は印象的。
ただ、だからといって、自分を大切にしましょうね・・・的な大団円を迎えさせてくれるわけではない。正常が疑われるべき存在だったところで、正常の本流から外れれば傷だらけになることに変わりはない。殺人出産を批判する女性に対し、殺人のために出産を繰り返す主人公の姉はこう述べる。
「突然殺人が起きるという意味では、世界は昔から変わっていませんよ。より合理的になっただけです。世界はいつも残酷です。残酷の形が変わったというだけです。私にとっては優しい世界になった、誰かにとっては残酷な世界になった。それだけです」(p.84)
この小説においては、残酷な世界に生まれた人間に救済は用意されていない。正常側にいたいという悲しい願いは、ずっとなくならない。
<トリプル>
男女の仲を「カップル」と形容するのに対し、3人での交際を指す「トリプル」。3人で付き合うことが一般化してゆく過程の時期を描いた小説。
本来であれば、2人だろうが3人だろうが好みで選べば良いのだろうが、倫理的なものが絡んでくるが故に面倒なことになる。正しいことを大切にするということは、自分が正しく思わないことを潰しにかかることにもつながりかねない。相手の正しさを尊重するには、適度な汚さや、無関心も必要なのかもしれない。白河の清きに・・・的な。
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カバーイラストと題名で買いましたが、衝撃です。
今ある常識は、過去にも未来にも、一貫してあるものではないということを突きつけられます。世界に立っているのだから、国が違えば常識も違う、考え方も違うとわかっいたつもりになっていたっていうことを、確認した感じです。
10人産んだら、一人殺せる。
人口減少のための、命を生み出すシステムとして「殺意」が導入されたという設定がすごい。
そして、出産が刑罰のレベルってのもすごい。
この本を読むと、きっと誰もが、今殺したい人を心に思うかべるんじゃないかと思う。自分の時間を犠牲にしてまで、叶えたい思いなのかどうか。
設定が独特なので、他の本を読んでみたいかも。
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久しぶりに小説読んだー。出産って言葉にとりあえず飛びつくのは職業柄。エキセントリックな設定が静かに進んでいく、好きな雰囲気。極端に振り切れたところから、本質に迫る問題提議や矛盾や違和感がじわじわ炙り出されてる感じ。なんか引っかかる読後感もいい。これ好きー、って思ってる間にあっという間に読み終わった。
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この衝撃、恐怖は乙一以来!
読んでいくうちに、自分の常識の感覚が正しいのか、読んでいる文章が本当は常識なのか、わからなくなってくる。
こういう日がいつか来るかもと思ってしまう。
発想がすごすぎて、唯一無二なのではないかと思う。現代の社会にマッチしすぎているのも怖い。
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短編集です。
「殺人出産」
少子化対策の一環として、10人産んだら1人殺せるようになった日本の話。
殺人出産は、どうして人を殺してはいけないのか、死ぬことは何かについて考えさせられる話でした。
「トリプル」
「カップル」ではなくて三人で付き合うのが流行っており、主人公の若い女の子も男の子二人と付き合っています。男の子二人もお互い付き合っていることになるんですね。
「清潔な結婚」
「家族」なのだから男女関係なんて気持ち悪いと考える夫婦が子供を考えて、とあるクリニックを訪れる話。
「余命」
科学が進み、蘇生技術がかなり進歩した世界。
人は自ら死を決め始めます。
死に方を考えて自ら薬品などで死にます。
生と性がテーマになった濃い話ばかりでした。
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「しろいろの街の〜」がよかったので、同じ作家の本を探して、設定が面白そうなこの本を手にとった。
殺人は悪だけど、テロ組織を殲滅したら正義なわけで。常識なんて、今の、ここの、限定的なものだというのはよく言われることだけど、僕もがっつり作り上げられた社会の常識に洗脳されている。良いとか悪いとかではなく。
だけど、考えることは大事だと思う。
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いつか世の中が変わって、
生と性の概念が変わってしまったらどうだろう。
という、作者の創造世界が炸裂していて面白かった。
今とは180度変わってしまった概念や道徳観でも、
読んでいるうちに、まあそれも有りかもなと思ってしまったり。
4つの短編の中で、清潔な結婚はラストの意味するところがよくわからん。もうちょっと続きがあってもいいのにな。
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4つの短編から成る。
表題の「殺人出産」が一番長くまた楽しめました。
近未来の話で10人出産した「産み人」は人を1人殺す権利が与えられる。
設定がありそうでありえない形でそれを未来でなく現代の世界感に合わせていて、読みやすかった。
他の3作品も設定が秀逸。よくこんなこと考えるなという感じです。
ただ、「殺人出産」以外の3作品は結末が物足りなかった。
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10人産んだら1人殺せる「産み人」という社会システムに好奇心をもち購入。殺人や出産システムなど「正しい」とされていたことが時代により移り変わっていく、そんな短編集が3つ収録されている。社会制度としての「産み人」という発想は面白いが、どこか文学的で、制度としての面白さより情緒的な物語な点で好みから少し外れた。
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子供を産まなくなった社会で新しく生まれたシステム。
10人産めば、1人自分の手で殺していい。
公的に認められた殺人と殺人がもたらす救済的効用。
殺せるという事実が逃げ道になる。
そしてそれが新しい正義になった。
人は新しい正義に価値観を犯され続けて生きている。
生や性や死は完全にコントロールできるようになると瑣末なものになってしまう。
趣味的なものになってしまう。
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「殺人出産」
10人産んだら1人殺してもいい、という殺人出産システムが採用された世界。
何が正常、正義であるかは時代により変わる、というお話。
「トリプル」「清潔な結婚」も、設定的には、時代が変われば…、な話なんだけど、内容的にはいささか閉口気味。
最後の「余命」は、本当に短いんだけど、なかなか印象的。
医療が発達した事により、死がなくなった世界で、いかにして死ぬか、というお話。
村田さんの作品は初めて読みましたが、ちょっと新井素子さんを彷彿させるような…?
芥川賞受賞作の『コンビニ人間』もその内読みたいな、と。
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村田さんの本はいつも
テーマに惹かれて手に取ってしまうけど
どうにもこうにも気持ち悪くなってしまう。
汚いところもしっかり描かれてるからかな。
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生死・性愛のあり方を根本からひっくり返す短編4編といったところ。数日の間引き摺る。眠れなくなりそう。