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「世のため人のために」、という言葉があるが、宇沢氏ほど、
これを実践した方は、稀だろうと思います。
世界的な経済学者でありながら、どこまでも、社会的弱者のために行動され、
社会的矛盾と闘い、そして、悩み苦しみぬいた生き方は、
後世を生きる私たちにとっては、かけがえないメッセージとなっています。
どうやったって、社会は良い方向に変わらないし、やはり、お金が幸福になる上で、
もっとも、確実な手段だと、小学生でも思うようになりました。
まさに、消費者です。
ソニー生命が2017年3月21日~3月27日の7日間全国の1000名の中高生に対し、「
中高生が思い描く将来についての意識調査」をインターネットリサーチで実施した結果、
「日本の10年後の将来のイメージ」の調査で、
「明るい」と答えた中学生は39%、高校生は、わずか31%です。
かなり衝撃的な結果ではないでしょうか。
過半数以上が、日本の将来に対して、悲観的な予測をしている。
そして、「将来の夢」に対しての回答は、
中高生の第一位が、「安定した毎日」です。
平和な世界を実現するなら、おお!なりますが、
将来の夢が、安定って、、、今の日本社会は、病的だということでしょうか?
宇沢氏が、この結果を見たら、どう思うのでしょうか?そしてどう行動するのでしょうか?
日本は戦後、奇跡的な経済成長で確かに豊かになりました。その恩恵を少なくない人が受けました。
しかし、それと引き換えに宇沢氏が提言した社会的共通資本(森林・大気・水道・教育・報道・公園・病院など
産業や生活にとって 必要不可欠な社会的資本)を崩壊させていった過程でもあります。
儲けの論理で、これらを考えると、確かに社会が歪むだろうということは、誰だって理解できます。
この著作を読むと、氏がいかに日本を愛していたかよくわかります。
自分の才能を自分のためだけに使うのではなく、社会の健全な発展と弱者救済のために使う。
今、「普通」でいることさえ、厳しいですし、明日、経済基盤をなくす自体も当たり前になりましたが、
個人、個人が、動かなければ、結局の所、社会は健全にはならないと、
当たり前なことを、この著作から学びました。
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私は大学時代、経済学部に所属していたが、この人の本をもっと早く読んでみたかったと思う。
形而上学的な経済学、古典派、市場原理主義をズバッと批判し、「人の心」が大事だと説く。
こんなにも感受的に、
環境、医療、教育問題に心を配り、世の中のことを憂う経済学者が居るなんて知らなかった。
当該著書は、理論的なところは省いているため、「社会的共通資本」についての本をしっかり読んでみたいと思った。
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新自由主義(リベラリスト)の観点から世界を切り取る経済学者の未来へのメッセージ。その内容は経済資本と世界の潮流、医療、教育、自然、農業と多岐にわたる。
各項目についてさらっと心に残ったところを。。
「経済について」
世界はパックスブリタニカ(帝国主義時代)の後にパックスアメリカーナ(市場原理主義)(共産主義もあった)となった。いずれも倫理の面から問題のある経済政策であり、両方とも失敗した。これからは社会的共通資本という聖域を持つ資本主義とするべきである。
「医療について」
イギリスのNHS政策のように当初は国民皆保険制度のようなものであったにも関わらず、財政支出を抑えるようにした結果、しわ寄せは現場にかかり、優秀な医師は育たず、医療システムそのものを揺るがすようになっている。またこれには悲しいかなアメリカからの経済抑制政策による負債も絡んでいる。。
「教育について」
デューイの三原則(教育の役割)
・人間としての共通理念や生き様を学ぶ
・教育機会の平等
・子供の長所を伸ばしながら、社会的にバランスの取れた人間にする
「環境と経済」
排出権取引というシステムの横暴さ。
自然と共に感謝を持って生きること。
経済は仏教のように社会をよりよくする、優しくする方向へ向かわなくてはならない。
最後に工学で生きる私に刺さった言葉
「工学はもともと、全ての人々が豊かな文化的香りの高い生活を営むことができるように、自然も社会も安定的に持続的に維持できるように社会的インフラストラクチャーを作るのが目的ではないか。その工学を勉強した学生たちが、ただひたすら金儲けを求めて自分の人生を送ろうとすることほど悲しいことはない・・・」
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宇沢哲学がコンパクトにまとまっていると思います。石橋湛山やヴェブレンに共感する姿勢に氏の一生を通じて辿り着いた哲学がみてとれます。経済学部出身の私としては、経済学とは何ぞやということを30年振りに考えさせられました。
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居住まいを正して読む本
宇沢節全開。石橋湛山から連なる日本の経済思想の流れがわかる。こういうのはアメリカでは全く受けないだろうなと思うが、その人がシカゴ大学の教授だったのだから感慨深い。
死後遺稿を集めたもので、若干まとまりに欠ける。過去の事件や現在の社会問題について気の向くままに語っていて、まるで宇沢教の信者向け経典のようだが、論理的展開は過去の論文を追えばよいということか。
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難しい経済学の話が苦手な私にも、宇沢氏の弱者に対する眼差し、その根底にある氏の経歴、体験に触れることができます。一方で、日本の先行きについて暗澹たる気持ちにさせられる内容も多い。一読をおすすめしたい1冊です。
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新自由主義(市場原理主義)は、水や大気、教育や医療といった分野についても、自由市場を追求していくものであり、宇沢は強く反対。新自由主義とは、簡単に言えば、すべては換金可能ということ。お金さえ持っていれば大切なものはいつでも買い戻せるはず。一方、宇沢は、大切な物はお金に換えてはいけないと諭す。
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学生時代からずっと気にはなりつつも、恥ずかしながら、宇沢弘文教授の著作を読むのはこの歳になって初めてだと思います。
テーマは「社会的共通資本」。
読んでみての印象ですが、理論や論考で塗り固められているような内容を予想していたのですが、大いに(いい意味で)裏切られました。宇沢教授の自伝的なテイストも漂う内容で、それを辿っていくだけでもとても興味深いものでした。 久しぶりにとても楽しい本でしたね。
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2020.25
社会的共通資本の補足的な本。
よかったのは、
「あるアフリカの民族には、
「宗教」「文化」「自然」が同じ言葉である」
ということ。
僕たちが捉えている以上に、
文化や宗教、自然は深いもの。
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日本の経済学者ではあるが、経済だけでなく、様々なことに造詣が深く、示唆に富んだ講演の書籍化。宇沢弘文の社会的共通資本を知るのに、入門編としてちょうど良い。平易な言葉で、より良い経済活動のあり方、倫理的経済のあり方について述べており、初心者にもおすすめ。
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「国富論」のなかにあった"There is no wealth, but life."を「富を求めるのは、道を開くためである」と訳し、基本姿勢とした。
ヴェブレンや石橋湛山に共感。
ヴェブレンの最も重要な考え方である、金融制度は経済的な生活が円滑にいくために存在しているのであって、そこで売り買いをして儲けるためではない。また企業は永続的なもので、皆がそこで仕事を持ち生活していくための基礎になっているのだから、儲けばかりをもとめて簡単に売ったり買ったりしてはいけない、ということ。
ケインズの「一般理論」ではこの考えをそのまま使っているところがあると指摘。
社会的共通資本は、いかに自然を大事にして、自然の恵みを十分に享受できるような制度を作らなければいけないか。医療や教育、自然環境が大事な社会的共通資本だが、もう一つ付け加えるなら「平和」こそが大事な社会的共通資本。
こうした考えがベースにあることから、ミルトン・フリードマンのように市場原理主義に対して酷評。
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Facebookで勧められた宇沢弘文の考え方を表した良書.資本主義が金という単一の評価に基づいていることを批判している.
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経済学者かくありきという感じ。SDGsが生まれる前からよほどサステナビリティと生命の幸福を追求してきた学者。
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市場原理主義、フリードマンの批判がとても良かった。排出権取引に至るアメリカのスタンスを見るとすさまじい。
学問、医療、農村などの記述は共感する。ただどうすればいいのか、社会的共通資本は改めて理解しておきたいと思った。
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2021年4月「眼横鼻直」
https://www.komazawa-u.ac.jp/facilities/library/plan-special-feature/gannoubichoku/2021/0401-10058.html