紙の本
民主主義というものを深く考えるきっかけになる本ですね、これは。
2017/06/18 12:58
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投稿者:汗牛充棟マン - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が必ず新刊を買うと決めている佐伯啓思の本に通底するのは、民主主義に対しての警鐘でしょう。
ある事柄についてあまり強い意見もなければ、特に信条もない。
よくわからないし、政治にあまり関心もない、そういう人が多いのが現代であるということでしょうか?
良き社会を目指すのは市民として当然であると社会科学に携わる人にとっては当然のことのように考えられがちですが、そう思わない人が多いのも現代でしょう。
政治活動をしなくても、普通に働いていれば普通に生活できるのですから、政治活動の重要性を説いても豚耳念仏になってしまうのでしょう。
しかし、それでは政治家や官僚の寡頭制になってしまうから駄目だ、ということを大学時代に政治学で学んだのですが、そういうことを書いてもどれだけ現代の日本人の心に響くのだろうかと思います。
こういった意味でも、民主主義に万般の信頼を寄せるのは危険というほかないでしょう。
しかし単に政治や行政に携わるスペシャリストだけに頼り、無批判でいることにも警句を発したいです。
こういった面でも、「民主主義とはなにか?」を深く考えるきっかけになってしまったのです。
そんな深い議論をしていきたいと思う人にはぜひとも読んでほしい本ですね。
そして行動してほしいですね。
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憲法・民主主義・自由・平等・基本的人権・博愛などなど、結局、すべて西洋発の「観念」を日本社会が受け入れ、借り物として運用しているか、という自覚が必要だろうと筆者は言う。
このようなことは、一貫して述べられている。
一神教であるユダヤ・キリスト教が育んできた価値観、その前のギリシャ・ローマの価値観からなる、西洋社会の価値観と、日本人が歴史的に育んできた価値観とは、根源的に異なるものであり、彼らが構築した、憲法・民主主義・主権なる観念をきちんと分析し、もうそろそろ日本人の歴史観・自然観・死生観にあった政治制度を作るべきだろうということだ。
しかしながら、ギリシャの民主制度でソフィストが行ってきた政治論争の手法は、あくまで、空虚の議論に陥ってしまう。論争の手段であるロゴスとは、構造的にそうなってしまうという。特に、開かれた「場」における論争は大いなる嘘の積み重ねとなってしまう。
結局、ソクラテス・プラトンが守ろうとした政治の対極にある哲学的思考・論争が重要となってくる。
最後に、究極の主権者たる一個人が歴史観・死生観・自然観を共有しながら、ユーモアや皮肉にまぎれて、なかなか公然とはいいにくい本心を伝える会話空間をその社会がきちんと持っているのかがもっとも大切なことだと締めくくっている。
蛇足で申し訳ないのですが、現代におけるあまりにも皮相的で・刹那的で・享楽的な情報流通空間に身を置けば置くほど、人生つまらなくなるので・・・(涙・笑・・・)
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そもそも民主主義って何なの、ホントにそれでいいの?とは思うが、じゃあどうあるべきなのかという答えを持つ人は少ない。日本国憲法も然り、戦争は反対だけど、どの部分がどう問題なのか、一筋縄ではいくまい。色んな人の色んな意見を聞いて、色々考える他あるまい。
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濃い書籍だわ・・・時事評論思うておったら大間違いやぞ。
佐伯氏の思想が随所に炸裂しておる。
10年以上かければ、ワシのような阿呆でも読み方を
覚えるもんやな。いつの間にかお迎えが近うなってしもたわ
もうちょい深い読み方できんかな
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ふだん何気なく使っている「自由」「平等」「民主主義」「立憲主義」「国民主権」などの言葉は、実はその国の人々の「死生観」「自然観」「歴史観」などと深く結びつけて捉えるべきで、表層的に考えてしまうとあたかも一般的で普遍的な原理だと捉えかねない。そしてそういう理解の仕方は非常に危険である、という筆者の主張はわかりやすい。
ちょうど衆議院選挙のときに読んだので、余計にしっくりきた。