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ルワンダの隣の国,ブルンジ共和國.知らなかった国だけど,起きていることはルワンダと変わらないフツ族とツチ族の終わることのない反目に根ざす闘争.フランス人の父親とツチ族の母親をもつガブリエル.マンゴーを盗んだりしながら悪ガキ五人組でふざけて過ごす幸せな子供時代が,ある日突然のクーデターで幕を閉じる,ルワンダとの関連したこの殺戮の前に,みんなの運命も変わっていく.フランスに逃げて20年,過去を振り返りつつふるさとに立って母親に出会った時のシーンが、何とも言えなかった.
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瑞々しい少年たちが活躍する前半から
後半の悲惨な状況には
心が壊れても仕方がないな
と思うひどさ
身内を殺された悲しみが
次々に憎しみの連鎖を生む
どこかで止めないといけないけど
どこで止まるんだろうか・・・
考え込んでしまう本でした
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背が低い、鼻がつぶれている、肉体的に違いがあるだろう。少し習慣も違うだろう。それが民族固有の文化だから、お互い大切にしたい。そこまでは理解できるが、手に山刀をとるほどの憎しみはどこから生まれるんだろう。
ルワンダ内戦は映画にもなり、ツチ族、フツ族の紛争は広く知られるようになったが、それはルワンダに限定されたものではなく、隣国のブルンジという小国でも同様のことが起こっている。フランスに逃れた作者が、愛おしくも切なく、また、少年時代を中断された虚無的な想いを交えながら書いた少年時代の風景だ。
大人になると美しく思い出されるはずの少年時代を、過酷な状況に支配された作者の想いがにじみ出てくるようだ。
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インドやアフリカなどに行くと、様々な理由で自分の国では生きていけない先進国の人間が、自国ではあり得ないほど幅をきかせていることがあるが、この主人公の父もそういう人。そういう人たちのコミュニティもある。現地人の妻と暮らしてるけど、妻を対等に扱っていない人も多い。
この主人公や友人たちは生粋の現地人よりいい生活をしてはいるが、それは差別や妬み等危険もある。そういう情況は想像がつくのだが、ここでは更にルワンダの悲劇が起こる。
はじめの父の言葉が厭な感じだ。
フツは背が低く醜い、ツチはスラリとして美しい(もちろん妻はツチである)。こういう白人の意識がルワンダの悲劇を生んだと言っても過言ではない。更にツチのルックスは褒めながら、何を考えてるかは分からないという。分かろうという努力はしないのである。
ワルガキの友情とそれが戦争で壊れていくところ、ギリシャ人の老女から本を借りて夢中になる様子は実体験ではないかと思う。
若い作家のデビュー作たから、センセーショナルな(しかも実話に近い)ところが評価されたのかと思っていたが、きちんと古典を読んで育った人だと感じた。
内線の原因となった白人社会に対する批判は弱い気がした。
これからに期待したい。
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早川書房の外国文学は、いわゆる流行本の系譜と、出版社としての心意気を感じさせる一本気な文学とが、割とくっきり別れており分かりやすい。しかし、時にそのどちらに属するのか見分けにくいタイプの本がある。
本書は一見すると前者なのだが(作者がミュージシャン、高校生が選ぶゴンクール賞、ベストセラー)、実際に読んだ印象は、紛うかたなき後者。人間一人が、書かなければおさまらない胸に焼き付くような記憶を筆に込めた作であることは、疑いがない。
フランス人の父と、亡命ルワンダ人の母との結婚生活は、さながら宗主国と植民地の軋轢をそのまま影絵にしたが如き不安定さ。さらに加えて、亡命ルワンダ人の母が属するツチ族は、祖国ルワンダでは虐待される立場であり、ブルンジでは虐待する側であるという、複雑な存在でもある。
主人公の少年は、それら政治的状況を見ずにすむ環境に育ったが、クーデター勃発以後は次第にツチとフツの半目に絡め取られてゆく。牧歌的な小説の前半と、いつの間にか追い詰められてゆく後半との対比が恐ろしい。
作家デビュー作の本書は、小説の完成度としても構成の妙がある。二作目が日本語訳になることを期待したい。
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リアルだけど美しい描写が心地良い。
あたかもルワンダにいるかのような、主人公の少年が感じる争いの恐ろしさとそこにいる人々の感情の渦に入っていくかのような小説。
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ノンフィクションの感覚で読んでしまったので、ほんとにこんな展開あるのか?と思いながら読んでいたが、あくまでも自伝的小説だということを訳者あとがきで改めて知った。
それでも、やはり事実は小説より奇なり…ではなく「残酷」、ということなのだろう。それは治安のいい国に住んでる私には、想像もつかないけれども。
少年の目を通したブルンジでの生活や情景は、TVなどを通したアフリカとは違って新鮮だった。現在は内戦と経済制裁によって世界最貧国だというが、マンゴーがなる袋道は、平和で豊かだったんだろうな。
YouTubeで見れる、Gaël Faye の Petit Pays、フランス語なのでわかりませぬ…
グーグルマップで少しだけ街の雰囲気がわかる。
便利な世の中だなあ
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アフリカのブルンジで暮らすガブリエルは、ルワンダからの難民でツチ族の母とフランス人(白人)の父と妹と暮らす比較的裕福な家の10歳の少年。家のある袋道になっている地区には、同じ年ごろの少年たち4人が住んでおり、空き地に捨てられている壊れたフォルクスワーゲンに集まっては、泳ぎに行ったり、近所の家のマンゴーの実を採ったり、時々たばこを吸ったり、ヤンチャな少年らしい日々を送っている。両親は、あまり仲が良くなく、ある日母は家を出て行ってしまう。そこには、古くからあるツチ族とフツ族の対立があり、ツチ族としての誇りを持つ母の兄弟はルワンア愛国戦線の戦士でもある。
決して平穏な日々とは言えないガブリエルの周辺ではあるが、仲間と共に過ごす少年期特有の連帯感に満ちていた。
しかし、少年はやがて成長し、国の政情も怪しくなってくる。子どもの力ではどうしようもない流れの中で、母方の親せきは消息が取れなくなっていく。ある日、ガブリエルの家で長く働いていた料理人が道端で殺されていた。フランスからのブルンジからの引揚げ勧告に従い、ガブリエルと妹は父の国であるフランスへ逃げることになる。
平和な国・フランスで暮らすようになったガブリエルにとって袋道での少年時代は忘れられない心の一場面としていつまでも残っている。
フランスでミュージシャンとしても人気のある著者の自伝的物語。フィクションではあるが、日本には知られていないアフリカの国々の暮らしや、民族の深い対立を描き、感慨深い。
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装丁に惹かれて手に取ったけれど、内容は、装丁のような和やかな雰囲気とは程遠い。
描写力はすごくて引き込まれる。それだけに、印象が強くて、読後感はものすごく苦い。
でも現実に起こったことだということからは目をそらしてはいけないのだろうけれど。
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読んだ後にみるとグッとくる。
ファイユの曲。
https://youtu.be/XTF2pwr8lYk
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同世代の、ブルンジ生まれの、フランスとルワンダのハーフの人の自伝的小説。作者がラッパーなので、ポンポンと繰り出される文章は短く、詩的で、ぐいぐいと引き込まれる。原語(仏語)で読めれば良かったのだろうけど、日本語訳でも読み応え十分(訳者さんすごい)。
なぜ内戦が激化するのか分からなくて混乱していく主人公の様子はとても正直でリアル。90年代、私がのうのうと行きていたときにこんな風に子ども時代を奪われていった人たちが同世代でいたのかと思うと、教科書やルポでは得られないリアリティをもって、内戦やジェノサイドの恐怖が迫ってくるようだった。折にふれて描かれるブルンジの光景はとても壮大で和やかで鮮やか。
姉からのいただき物。
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アフリカ諸国の一つにしては小さな国ブルンジ。この本を読むまでどこにあるか正直知らなかった。しかも、あのルワンダ大虐殺と時を共にして、同じようにフツ族とツチ族との紛争により30万人の死者が出たことも。ルワンダ難民の母とフランス人の父との間に生まれた筆者の実体験を元にした小説なのだけれども、その目を瞑りたくなる程の内容はさておき(があるからこそ?)是非主人公と同じく小学生〜中学生に読んでもらいたいと思った。「こちら側」と「あちら側」、「敵」と「味方」の境界線がいつ形成されるのか、主人公の問いかけに考えさせられる。「背が低い」「鼻が潰れている」といったステレオタイプで相手を捉えるようになった時点で圧倒的な壁は出来上がってしまっている気がするが、逆にそういった固定観念を抱かないようにするにはどういった条件が必要なのか…教訓を引き出す必要はないので、是非子供達から意見を聞きたいと思った。それにしてもブルンジのように、たわわに実るマンゴーに、日向ぼっこをするワニとハチドリがいる…そんな極彩色の動植物に恵まれた天国のような地であっても、血塗れの地獄に急変し得るのは、ある意味で絶望的でしかないな…。人間はいつになったら変わるのだろう。それもどう思うか聞いてみたい。
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徐々に悲惨な暴力の影が近づいてくる感じがヒシヒシと感じられて怖かった。
急に『殺人』『身近な人の死』『理不尽な殺人』が日常茶飯事になってしまう恐ろしさ。
そこから逃れる術のない人達の多さ。
敵と味方を作らないといけなくなってしまう怖さ。
めちゃくちゃ重い内容やけど、読みやすい文体で、それでも色んな事を考えながら読めた。
みんなが読んだら世界は少し変わると思う。