紙の本
戦争とは
2017/08/24 08:24
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:akiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
恥ずかしながらキスカ島の撤退作戦についての知識がほとんどなく、こんなことがあったのか、こんな人々がいたのか、と驚くことがたくさんあった。困難な状況において極端な方向へ走ってしまうことがままある「組織」というものの中で、冷静な判断ができる人物の重要性は、どのような時代でも変わらないのではないだろうか。
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1943年、北の最果て。戦史に残る救出劇
戦後占領政策転換の決め手となった、命を軽視し玉砕を好むといった野蛮な日本人観を変えた米軍諜報部の報告とは? キスカ島に残された兵員五千人救出のため、日本軍は人道を貫いた。戦史に残る大規模撤退作戦。
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史実に基づいた1943年の北の最果てキスカ島での救出作戦を描く。
玉砕等が叫ばれる中、島に残った兵士5,200名を救出したという作戦。
それは戦時下にあって、人命を大切にする指揮官たちの熱い想いが込められていた。
気象士官という天気を予測する人物も乗艦した。
戦争と言えば原爆投下が強烈だが、様々な戦いが繰り広げられ、終戦の玉音放送後もなお攻め立てるソ連軍と戦わざるを得なかった北海道の地。
八月だからこそ、更に深く胸を打つ。
あの時代に生き、戦わざるを得なかった人々の苦難と計り知れない覚悟。
もうあの過ちを繰り返してはいけないと、月並みかもしれないけど、願わずにはいられない。
2023.8.13
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アメリカ兵、日本兵。
ひとくくりにされてしまい、固定されたイメージを持ってしまう。
この本を読んで、当たり前のことだけれど、一人ひとり違う人で、違う考えを持っているのだと実感できた。
自分の行動一つ、決断一つが人の命に直結してしまう時代。今では想像もできない状況だけれど、その中で必死に生きていく人々を見てすべての人を応援したくなった。
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この作品は今日読まねばと思っていた。人命救助に心を砕く様は感動とともに特異な時代であったことを浮き彫りにする。当時の日本のことを熱病、洗脳という表現で語られることがあるが私は脅迫の方が近い気がする。脅迫に負けずに立ち向った人達を忘れてはいけない。
あらすじ(背表紙より)
アメリカが敵視した、人命を軽んじ易々と玉砕するという野蛮な日本人観が、一人の米軍諜報部員の報告で覆った。戦後占領政策転換の決め手となった一九四三年、北の最果てキスカ島での救出劇。日本は人道を貫き五千人の兵員を助けた。戦史に残る大規模撤退作戦を、日米双方の視点で描く感動の物語。
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こんなに清涼感に溢れる戦争小説は産まれた初めて読みました。
凄惨な場面もあるのに、なんて清々しいお話なんだろう! と本当にびっくりです。もう後が無く自決しか無いような人生の終点とも思える場面において、見え隠れする家族や自分が率いる部下などへの思いやりがたくさん詰まった一冊だと思います。
島で窮地に追い込まれた全員が自決してしまいそうで、読んでいてはらはらしましたが、部隊を率いた隊長も隊員も付随してきた記者の気持ち全ての連携が上手くいったと思います。悲しい思いも背負うことになりますが、上に立つ人がとても立派だと思いました。
戦争小説といえば、酷い有様や玉砕、特攻隊など無慈悲で悲しいお話が全部と言っても過言ではありませんが、そんな戦争小説のジャンルを1つ増やしてくれたまさに明るい希望が見えるお話で、とても感動しました。
有名な戦艦や駆逐艦、作戦名などの名前も随所にでてくるので、歴史の時間軸的にもとてもわかりやすい作りだと思います。
戦争のあらゆることは次の世代に伝えていかなければならないと思いますが、そんな中、こんなお話もあるんだよとぜひ多くの人に読んで欲しいと思いました。
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アメリカが敵視した、人命を軽んじ、易々と玉砕するという野蛮な日本人観が、1人の米軍謀報部員の報告で覆った。
戦後占領政策転換の決め手となった1943年、北の最果てキスカ島での救出劇。
日本は人道を貫き5200名の兵役を助けた。
歴史に残る大規模撤退作戦を日米双方の視点で描く感動の物語。
この小説は史実に基づく
登場人物は全員実在する
戦後の日本の運命を大きく方向付けたキスカ島の休日劇。
多分ほとんどの日本人は知らない事実。
かなり考えさせられる一冊だった。。。
『本土決戦、一億玉砕、一億総特攻、神風。軍部の呼びかけに国民から強く反発する声もなく、むしろ積極的に応じているとの報告が多々ある。… どの戦術でも、日本の軍事司令は玉砕を強いて、無慈悲に兵を見捨ててばかりだ。なのに遺族は訃報を聞いても感謝を捧げている。…』
『兵士ばかりか非戦闘員までが玉砕をためらわないがゆえ、上陸による戦闘は熾烈を極めるとの意見が、いつしか大勢を占めました。空襲や原爆投下の決定にも、少なからぬ影響を与えたでしょう。しかし、日本人が国のため命を投げ出す危険な民族という見方は、かなり偏っていると考えています。彼らはわれわれと同じく人命を尊重し、殺戮を忌み嫌い、平和を愛しているのです。』
『日本国民が人命について、私たちと同様に重く考えているとお伝えください。犠牲を払い、無理を押してでも仲間の救出に向かう、これは私たちの心理となんら変わりません。彼らの玉砕も、戦局全体でみれば民族を絶滅から救おうとする自己犠牲であり、積極的な戦闘行動の一つだったのです。けっして自滅や破滅に肯定的ではありません。そこまでして戦う必要はないと教えることが、私に課された義務だと思います。』
by ロナルド・リーン(キスカ島への戦闘に同行した通訳)
→ 米国は日本人が、自決行為を積極的に行う野蛮な民族で、上陸による戦闘は熾烈を極めるため、それを避けて原爆の投下を決断したという、おそるべき事実。
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キスカ島の奇跡の撤退作戦の話。
キスカ島における、奇跡の撤退作戦は知っていました。小説なので、いろんな脚色はあるでしょうけど、人命を大事にした木村昌福少将は、そんな感じの人なんでしょうかね?現代人の感覚からすると、この小説で描写されたような感じがぴったりくるんでしょうけど、当時の軍人ですからねぇ。しかも、将官まで登った人ですから、そこまでほのぼのとするような人だったかは疑問。
物足りなかったのは、この作品のもう一つのテーマが、「人命を軽視する、狂気の民族」と言うアメリカの認識を一変させた出来事は何かと言うことなんですが、確かに、キスカ島撤退作戦は、人命を重要視したがための作戦ですが、それを目の当たりにした通訳官の、アメリカ軍上層部への過酷な占領政策の転換を呼びかける訴えの描写が、意外にあっさり。なんか、もう少し厚みを持たせられなかったですかね?「え?それだけ?」とちょっと思いました。
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「この小説は史実に基づく
登場人物は全員実在する」
第二次世界大戦中、アッツ島玉砕後、同じ運命を辿ることになると思われたキスカ島5,200人の救出劇
本の最初と裏表紙にこう書かれていたら、もう、読むしかない、と思わせた。結果、読んで良かった、と期待を裏切らなかった。
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『黄砂の籠城』に続く2冊目を読破。前著に続き、冒頭に「この小説は史実に基づく」との記載があり、従来の固定観念にとらわれた戦前の日本の姿とは違う一面を描こうという著者の姿勢が表れている。
とにかく、日本の近代史を冷静に見つめることは非常に難しい。これに対して真剣に挑戦している著者の姿勢は大いに応援したい。
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1943年8月15日、終戦の2年前のアリューシャン列島のキスカ島からの5200人の救出作戦の前後談。このような事件があったとは知らなかったが、アッツ島の玉砕の直後で米国が日本の死に急ぎ、不可解な民族との恐怖を抱かせた直後に陸軍の樋口季一郎中将、海軍の木村昌福少将らの連合作戦の見事な成功。そしてそれに振り回された米軍。1945年の8月15日以降もソ連との攻防戦で奮闘する樋口中将。そして1948年8月15日には地元で家族と共に製塩に従事する木村昌福氏が登場する。爽やかなこの2人と、それを尊敬する従軍記者菊池など、爽やかな人物たちだ。米国側の描写においても源氏物語に親しむ知日参謀としてロナルド・リーンなる人物が出てくるが、明らかにキーン氏!
そもそも8月15日という日付は終戦記念日ではない。戦争が始まる前から英霊を祀る日だったらしい。
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松岡圭祐さんの本、新刊が出るたびに買っているのだけれど
急に近代史モノになって、歴史が苦手で、『黄砂の籠城』も読み終えていないのに
これも買ってしまいました。
せっかくなら8月15日に読もう、と思ったりしたけれど
保留、再開してなんとか読み進めていた『黄砂の籠城』を優先しようと思い
こちらは少し遅れての読了(^-^;
戦史に残る大規模撤退作戦。
それを様々な視点、さらにアメリカ海軍通訳官からの視点でも描かれています。
全然知らなかったし、玉砕とは逆のこういう一面があったのだと知りました。
松岡圭祐さんでなかったら、手にとらなかったと思うので、
苦手ながら頑張って読んでみてよかったです。
アメリカ海軍通訳官のロナウド・リーンは仮名で
ドナルド・キーンさん、だとのこと。
お名前や著書はよく見ますが、今の日本があるのは、この方の進言のおかげなのでしょうか。
解説の最後の方は、この小説の解説の範囲を超えているんではないかと思いました。
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感動と興奮の脱出劇。全く知らない話で衝撃的ですらあった。松岡圭祐は突然近現代史に目覚めたのか、実に公平な視点での力作を連発している。次回作にも期待したい。
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この作家の歴史小説が意外だったので、思わず手にとった。語られることの少ない、太平洋戦争北方戦線での史実を非常に分かり易く、かつ劇的に伝えている。戦争ものが苦手の人でも抵抗なく読めそうな敷居の低さが良い。占守島の悲劇を描いた浅田次郎の「終わりなき夏」の哀しさとは対照的に爽やかな余韻。「黄砂の籠城」も読みたくなった。
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一気読み。戦争に関する小説で、感情に訴えるようなものも多い中(それが悪いわけではないんだけど)、日本人万歳的なことも、死を美化みたいなこともなく、冷静に、戦争って愚かだ、ということを訴えかけられたように感じました。
「軍人である前に人である」という言葉が印象的でした。
是非たくさんの人に読んでもらいたい作品です。