紙の本
二作目で過去に遡るとはずるい
2017/09/30 06:14
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
<刑事ファビアン・リスク>四部作のうちの二作目、読了。
時間軸としては一作目『顔のない男』よりも前、彼が故郷のヘルシンボリに帰ってくる以前の、スウェーデン国家刑事警察殺人課の一員としてストックホルムで働いていた最後の事件。
前作では「社会風刺的・社会の暗部をえぐる的部分は少なめ」(私の基準はヘニング・マンケルなのでそれはフェアではないかも・・・)という印象を持ちましたが、今作はまるでそれを意識したかのようにスウェーデン以外のことが冒頭から。全然違うけど、『目くらましの道』を思い出すような構成。
ストックホルムで連続猟奇殺人事件が発生。
同じ頃、デンマークのコペンハーゲンでも残忍な殺人事件が起こっていた。手口から、過去の事件の容疑者がそれぞれ2名浮上する。コペンハーゲン警察のドゥニヤ・ホウゴーは犯人はスウェーデンに逃走したと考え、ヘルシンボリ警察のクリッパン刑事の協力を得る。ファビアン・リスクもドゥニヤ・ホウゴーも捜査を進めるうちに「この容疑者では理屈が合わない」と考えるようになるが、お互いの事件を知っているわけではないので連携が取れず、事件は泥沼の様相を呈す。それぞれの警察上層部は理由は違えど早く事件の幕引きをしたいと考えていることもあり、刑事たちは焦りの色を濃くしていく・・・という話。
この頃のファビアン・リスクにはきちんと有能なパートナーがいて(双子を妊娠中で体調が万全ではないにもかかわらず、彼女に気遣いできてないファビアンに更に腹が立つが)、『顔のない男』事件の時のように独断専行の捜査はしない。むしろ、チームの他の刑事たちの中で飛びぬけて優秀、というわけでもない印象(その割に、本人は他の刑事を見くびっているところあり)。パートナーのマリーンが優秀なのであって、ファビアンが優秀というわけではない、という感じ。だから事件の終盤で彼が繰り返す失態(その中には取り返しのつかない大失態も含まれる)を読まされるこちらとしては、「・・・そりゃ、その後悪夢に悩まされるのは当たり前。というかヘルシンボリに戻ったのは家族のためが主みたいなこと言ってたけど、結局ストックホルムから逃げ出したかっただけじゃないか」と、ファビアン・リスクのダメっぷりにげんなり。むしろ犯人の覚悟のほうが潔く感じてしまう恐ろしさ。
『顔のない男』で重要な役割を担うドゥニヤ・ホウゴーやクリッパンが登場するのはサービスというか、未来を垣間見る楽しさを提供してくれるけど、ドゥニヤがセクハラ・パワハラに反撃できない弱い状況にあったのは意外(逆に、こういう不本意な過去があるからこそ、強さを身につけられたのかも)。
結局、人間は自分がいちばんかわいい、というところから逃れられない、身も蓋もない話ではある。
しかも数多くの登場人物たちのその後は結構ほったらかしである(ぎりぎりのところまでの描写はあるけど、その先が気になるんですけど!、というところは放置)。
しかもエピローグ後半では、更なるシリアルキラー予備軍らしき人物が登場し、ヘルシンボリを目指すことが判明。 これが、三作目にかかわってくるのか?! また引っ張られる終わりですよ!
なんか、こうなると4作で終わって大丈夫なのか・・・(なんかいろいろ消化不良起こしそう)、という気になってきた。
マリーンのその後、特に気になる。『顔のない男』に書いてあったかな?、と本棚を探す羽目になった。
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ぐいぐい話に引きずり込まれるのは前作同様。
どうなるのか、どういうことなのかとそわそわしながらラストまで駆け抜けた。
やるせなさは相変わらずだけれど、三作目がやっぱり気になる楽しみ。
マリーンがとても好き。かっこいいよマリーン。
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はなはだ残念。
1巻目が、粗削りだけれど面白くて、続きを楽しみに読んだのに。
「なんだこりゃ」である。
ヘニング・マンケル(ヴァランダー・シリーズ)のように国際情勢のからんだドラマを、
ペール・ヴァールー&マイ・シューヴァル(マルティン・ベック・シリーズ)のように刑事とその家庭を描きつつ、
スティーグ・ラーソン(ミレニアム・シリーズ)のように優れて素晴らしい女性をアイコンにして、
ジェイムズ・トンプソン(カリ・ヴァーラ・シリーズ)のようにあっと驚く展開で書きたい‼
と思ったかどうかは知らないが、作者はそれら全部において、大失敗をやらかしたようだ。
とにかく選んだテーマがダメ。難物なのだから、扱うには相応しい力量がいる。作者にはそれがない。結果、ひどい代物だ。
冒頭はよかった。本当によかった。さすがの描き様!! 見せてくれる!! わくわくするー!! と思ったのに。
前半もよかった。人物がいっぱいいすぎて混乱するが、それでも面白かった。この混乱がどうまとまるのか、楽しみに読んでいったのに。
この結果は頂けない。悪意と陳腐のない交ぜだ。
テーマだけが駄目ならまだましだった。今回は大ハズレだけれど、それでも次は違うテーマだろうしきっと面白いよと、希望を見出だすこともできる。
しかし、それも無理。
終盤において、主人公に大きな失点、それも二つ。
彼になんの魅力も感じられなくなった。
スウェーデンとデンマークの比較ネタが面白かったり、レギュラー女性が魅力的だったりと、よい点もあったのに残念だ。
このシリーズはもう読まない。
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スウェーデンで起きた法務大臣の失踪事件をひそかに調査することになった刑事ファビアン・リスク。いっぽうデンマークでは、著名人の妻が殺害され、夫も失踪する事件が起きる。一見何のつながりもなさそうだった2つの国での猟奇事件には、思いもかけない共通点があった。
いきなり余談その1。九っていうとあれじゃないですか、九尾の猫とか・・・なんかミステリ的に本歌取りみたいなあれあるのかなとか・・・まあ全然関係なかったですね。。
いきなり余談その2。ネタバレなんですけど、最後のエピローグのその後の1節の意味が全然わからなくて、自分なに見逃したのかなって思って読み返したり考えたりしたんですけどやっぱりわからなくて、他の人の感想を探して読んだわけですよ。そしたら、みんな普通に「3作目への布石かな」ってちゃんと理解してて、自分の読解力のなさに戦慄した。
やっと本題。
リスクが退職して故郷のヘルシンボリに転居するきっかけとなった、ストックホルムで起きた事件の発端から顛末まで。いきなりイスラエルとパレスチナ問題やら、スウェーデン法務大臣の失踪事件やらから始まるので、例の手紙にはとんでもない国家機密とか書いてあるのか!?と思うわけですが、これがミスリード。いやまあ、それは言い過ぎか。ことがややこしくなったのはある意味、国家スキャンダルモノの秘密が隠されていたせいだしな。しかしながらこのミスリードとスウェーデンとデンマークのそれぞれで起きる事件が、そして関係者がクロスするようなしないような展開が、ジェットコースターのように読者をあちこちに連れて行ってくれるのではらはらしつつもさくさく進みます。
これでもかっていうくらいしょーもなく嫌なやつ(この作者はこういう人を書くのが上手だな・・・)がいる一方、ドゥニヤにまた会えてとても嬉しかった!ちらっとヘルシンボリのみんなが出てたのも嬉しかった!前作でドゥニヤを助けてくれたIT部門の彼がもっと活躍してくれればなお嬉しかったな・・・。3作目はドゥニヤは警察官じゃないだろうから、もう出てこないかもなー。
とまあ、事件の展開以外にもみどころいっぱいで楽しいのですが、さきに書いたように今回他の方の感想を結構読んだところ、リスク嫌われすぎ。。別に「嫌われ者設定」の主人公でもないのに、好感持てない、共感できない、主人公に魅力がない等々、みんなひどい。でも超わかる笑 わざとかなって思うくらい、マリーンやドゥニヤのほうが突き抜けてて魅力的です。わざとじゃないならなおひどいな笑
3作目はどうなるのかなー。こうなると、今回すべてを闇に葬ったエデルマンにひとあわ吹かせてほしいけど、そういう展開じゃないのかな。3作そろってすべての借りを返せるような展開になれば、多少はリスクの株も上がりそうなのに笑
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この長さなんだから一気読みというわけにはいかない。なのに、二つの事件(それも結構ややこしいヤツ)が並行して起き、しかも国境を越えてあっち行きこっち行き。中断するたびに、えーと、これはどっちだったっけ?としばしば混乱した。地名とか人名でデンマークかスウェーデンか無理なくわかる人なら そんなこともないだろうけど…。
事件自体はかなり異様で凄惨。ゲーッというグロテスクな犯罪が次々描かれる。北欧にはずっといいイメージを持っていて、今も基本的にそれは変わらないけれど、次々紹介されるミステリを読んでると、どこの社会にも深い闇があるのだなあと思わされる。
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あらすじ
スウェーデンで、法務大臣が誘拐される。直前にはイスラエル大使の息子も誘拐されている。
デンマークでは、女性が殺害され、同じ手口であることから出所した猟奇殺人犯かと疑われるが、女性刑事ドゥニァは疑問を抱く。彼女はスウェーデン刑事マリーンと交流を深めたり、セクハラ上司スライズナーに嫌悪したり、恋人のカルステンとの仲に悩んだりしながら単独で捜査している。
一方、スウェーデンでは誘拐された人々の死体が次々と発見される。彼らの遺体からは内臓や角膜がなくなっていた。かつてイスラエルでは合法的に臓器売買が行われ、奪い取った臓器を移植していたのだ。デンマークの事件も同じ。
犯人は、恋人だった女性。彼女は掃除係として働きながら様子を伺っていた。一番先に気づいたのはマリーン。双子を妊娠中で入院したが、連れ去られ、イスラエル大使館に連れ込まれる。助けに入ったファビアンは負傷し、若手刑事二人は殺される。
イスラエル大使館、イスラエルの病理学者、ファビアンの上司エデルマンは黒幕だつた。犯人は無事故郷に帰る。結局ファビアンは家族が再び結束することを選び、国家刑事警察を退職した。
前作第一作の前のエピソード。オリジナルでも、この順番みたい。前作も思ったけど、話がややこしい。あっち行ったりこっち行ったりしている。別にデンマークを絡めなくてもいいんじやないの?あと、主人公ファビアンが使えない。大事なところで動けない。かたくなに銃を撃たないので、仲間が倒れてしまう。むしろ妊婦のマリーンが有能。
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北欧ミステリの良いところは、なんと言っても日本と全然違う土地感を堪能できるところ。澄んだ寒い空気感とか、雪と灯りの美しいイメージとか、広々とした自然と都市部との融合とか…。旅行した気分になれるというか、針葉樹の香りを清新な風が運んできてくれるような感じ。
まぁ、とはいえ内容はミステリなので、ハラハラドキドキする要素とか、怖いけど謎を追いたくなる要素とかもあって、そこがまた良いのだよな。ただの綺麗な文学作品じゃなくて、ちゃんとエンタメ性があるところが魅力かも。あと、たまたまかもしれないけど、最近手にした北欧ミステリは事件が結構凄惨なことが多くて、綺麗な土地の様子とその事件のダークさのギャップというか、清濁併せ呑んだ両面性が独特の世界観を醸し出すのかもしれない。
私はこのシリーズの前作は読んでいないのだけど、登場人物の生活や今までの経歴がしっかり書き込まれているのと、会話シーンもたくさん散りばめられているので、それぞれの個性が光ってキャラを掴みやすくてぐいぐい世界に入っていけた。ミステリ以外の人間模様もストーリーに深みを持たせる大事な要素だと思うけど、過不足なく絡めることができている印象。(魔性のキャリアウーマン、ニヴァは友達にいたら大変そうだけど!)
スウェーデンの事件とデンマークの事件という、一見どう繋がるのか分からない別々の要素が収斂されていく様子も面白かった。地理力の低い私からするとどっちの国も同じようなイメージなのだけど、当人たちは色々思うところあるんだろうなー。
ところどころ、「イヤそれちょっと小説っぽすぎるでしょー!」みたいなラッキー展開もあって、非現実性に対して心で小さく突っ込んだりしてしまう点もあるのだけど、それもエンタメの味わいの範疇というか、悪い余韻は残さないので嫌な読後感にはつながらない。盛り上げるために無駄に主要キャラを殺す展開の作品も多いけど、そういうシーンが少なくて良かった。
とりあえず、順序は逆だけどファビアンシリーズの第1作目を次に読む!
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刑事ファビアン・リスクシリーズ「顔のない男」の前の設定です。前作が気に入って読みました。
グロさが増幅。謎解きは途中でわかってしまう、ありがちパターンです。ヨーロッパ人てここに罪悪感があるのかな。
主人公2人が好きな私としては楽しめましたが。
「顔のない男」後が知りたいなー。