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妻だけが知り得た、「最後の将軍」の真実
幕府と朝廷の関係に動乱の機運が高まる中、公家から一橋慶喜に嫁いだ美賀子。英邁と称えられる夫の振る舞いに翻弄される美賀子は、ある哀しい決意を抱く。幕末の新たな一面を描ききる、傑作大河小説を文庫化!
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副題が「慶喜と美賀子」にはなっているがヒロインは一人ではなく、最後の将軍・徳川慶喜の姿を「正妻(御台所)側」と「妾(側室)」から描いた一遍。
明治維新で慶喜の役割は他の躍動したひと達にくらべると、薄い印象。
殿様だからこそ果たした何かがあると、しっかり思わなかった。
しかし、司馬遼太郎さんが『最後の将軍 徳川慶喜』をお書きになっているので、それを読んではいないが司馬さんが書かれるほどなら、何かがあるのではと短絡的な気持ちで読みはじめる。
う~ん、
人物像なら司馬さんにかなわないな、と読んでもいない本と比較してしまう。
女性から見て封建時代の英雄なり人物なりを描くというのは難しい。
大体、時代物が多い大河ドラマの主人公が女性になると失速するように、どだい封建時代の女性がくっきりと、歴史に足跡を残せるはずがないのである。無理があるのである。
この本に描かれている歴史的事実はやっぱりおざなりに見えてしまう。
林真理子さんはうまいストーリテーラーだし、女の気持ちをつかんで描ける。
だけど、歴史を動かす何かを女性から掘り起こすのは難しい。
この本が面白くないのではない。
慶喜さんが維新後も生き延びて「大奥」ばりの女性を確保(笑)子供たちも多々残し(夭折しなかっただけでも13人)趣味多彩、新し物好きなど、知ってみればなるほどね、エネルギー溢れた人物を彷彿させるではないかと、それを我慢したやんごとなきお生まれの「正妻」
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徳川慶喜の正妻、一条美賀子の物語。
同時代の篤姫や和宮は良く知られていますが、
ほとんど知られていないこの女性(公武合体で江戸に嫁ぐことになった公家の姫君)
に焦点を当てた所が林真理子らしいと言えるでしょうか。
大河「西郷どん」の原作が林真理子です、
女性側からみた幕末動乱期はそれなりに面白かったのですが
う~ん、林真理子は他にもっと面白い小説があるなぁ!
って思ってしまった。
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司馬遼太郎は慶喜を描いたけどぞんざいな扱いだったような、そんな慶喜の妻はどんな人か、慶喜を尊敬していたのか気になり読み進め、やっぱり思う事は沢山あったのだと思う。
でも、こういう人なんだと割り切った気持ちをもって接して最期まで妻として生きる。
我慢の人なんだなぁと思った。
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「正妻」を読もうとした大きな理由の一つは、慶喜は美賀子の写真を撮ったのかどうか? 知りたいことだったのだが、ここでは撮ったことになっている。静岡時代、次々に住居内の人々をとり、そして静岡の町へ出て行ったことになっている。ならば「将軍が撮った明治―徳川慶喜公撮影写真集」(徳川慶朝氏編集)に美賀子の写真が載ってないのは何故なのかなあ。あまりいい映りのがなかったのかなあ。PC検索すると確かにあまり映りのよくない写真が出てくる。
また明治天皇の后が一条家の息女で一条家の養女となって慶喜に嫁いだ美賀子とは后は義理の妹となる。「子」がつくのは公家の娘を現し、美賀子と后が義姉妹だということを周囲にしらしめることになった。
また下巻には渋沢栄一も出てきた。平岡円四郎のとりなしで一ツ橋家に仕えることになっても、主人の慶喜が京に発った後だったので、1人であわてて追いかけてきた、という書き方。喜作も一緒だったはずだが、林氏はいろいろ資料も読んでるはずだが、1人でということにしたようだ。
また京へはお芳という火消し組の娘を妾として同行させている。そしてその父である火消しの親分は慶喜にいたく惚れこんでしまうのだ。それで、慶喜の他の本を読んだ時、慶喜の葬儀に火消し衆がずらりと並んで見送った、という記述があった理由が分かった。
女中・・美賀子が子を生むおととしの夏、「お喜」となずけた子を生んだが、その日のうちに亡くなる。
美賀子・・「お喜」を生むが4日で亡くなる。
おくに・・慶喜の側室。中﨟として勤めている時「おゆう」を生み、その半年くらいあと結核で亡くなる。「おゆう」はお芳の実家で預かる
お芳・・火消し、新門辰五郎の娘。辰五郎は病気で一ツ橋家を出たおくにの面倒を一ツ橋家から頼まれみていた。おくにの臨終に訪ねた慶喜に見染められ、京都に行くことになった慶喜に請われ妾としてついていく。慶喜が大阪城から逃げる時、辰五郎とともに開陽丸にのって江戸にもどる(辰五郎も慶喜に火消しとして京都に呼ばれた)。戻ってからは静岡まで行ったが、美賀子が静岡に来る頃、慶喜の元を去る。能の囃子方をしている男とともに男の実家金沢に行く。
2013.8.2第1刷 図書館
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ボンヤリとしか理解していなかった「尊王攘夷」、この本を通してやっと理解できたような気がする。聡明であるが一筋縄ではいかない慶喜は、優れた開国論を心に秘め、攘夷など非現実的だと思いながらも、幕府と朝廷の板挟みに苦しむ。その一方で、女好き、多趣味で好奇心旺盛な一面も併せ持ち、天才なんだか、嫌な奴なんだか分からないが、冷徹な判断力があり、名君であったと思う。隠居後、慶喜は美賀と一緒に暮らしたが、お妾さんと同居なんて、いまの時代じゃ考えられない。
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正妻というタイトルなので慶喜の正妻の一生を描く作品かと思ったら(確かにそうなんだけど)妾から描く章もあったりします。慶喜という捉えどころない男は名君だったのか卑怯者だったのか、主に二人の女性から語られる感じです。ちょうど、今、真剣に見ていないけど「青天を衝け」と同じ時代を楽しく読むことができました。
上巻は江戸に嫁に行くまでで、京の街や大奥のことが珍しくも面白く描かれており、妾の章になってから一気に政治色が色濃く出てきます。時代的にもそうあったのでしょうけど、うまく色分けされていている感じでした。
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妾の芳から見た慶喜と幕末の動乱が興味深かった。明治以降は正妻、美賀子の視点に移り、前将軍の隠居後の暮らしを知ることができた。慶喜は自分大好きで女好きで理想の夫ではないが、妻たちはしたたかに生をまっとうしたように思えた。
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上巻に比べて政治関係の話が多かったです。そのため、歴史の教科書で「尊皇攘夷」と出てきて、江戸城を明け渡したという簡易的な記載ではなく、これがどういうものであって幕府と調停の板ばさみで苦しむ慶喜の姿もあり、慶喜の賢さ、強さ、そして弱さの部分も見れ、本当に最後の将軍だったんだということを感じました。
慶喜の性格や仕事に対して美賀子は思うことは色々あったが、それでも最後まで慶喜の側で支えたと思うと、この女性は自分の立場、時代の流れをよく分かっている、我慢強さと冷静さを備え持った方だったのかと思いました。慶喜の影に非常に面白い人物がいたことが知れました。