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本当は感想を公開する場ではこう書くのを憚られるのだが、この作品はいい。なぜ「いい」と書くのを憚られるのかというと、この種の小説に接したことのない読者が安易に手を出すと非常に危険だと思える作品だからだ。日本だったら馳星周や花村萬月の作品を思い出すが、本書はそれらよりはるかに心ねじれた悪意と残虐さを秘めている。そんな作品を「いい」と言ったら人間性を疑われるかもしれないと思うほどだ。物語は、壮絶なノワール小説。娘が、「ドラッグと血と精液と愛液の世界」を作り出している狂気の集団に連れ去られた。刑事である父親は娘を取り戻すため、かつてその悪の集団に属していた女を相棒に、戦いの旅に出る。読み始めてすぐに疲労困憊してしまった。これ以上ないと思えるくらいの邪悪にあたってしまったからだ。しかし、もしそんな邪悪を秘めたストーリーに耐えられる読者ならば、相手を切り刻もうとするかのような辛辣な罵詈雑言の応酬の中に、一瞬であれ心を捉えられる言葉を見出すかもしれない。汚濁した言葉の中に、真理をつくものが紛れ込んでいるように感じられたからだ。それを証明するかのような一節があった。「ことばは信念の赴くところを定義するわけじゃない」あたかも日蝕のように、真昼間を闇にかえる邪悪。その暗黒世界から抜け出し、ようやく冷静に考えを巡らせることができたとき、この作品の凄みを思い知ることとなった。本書は、新人作家の衝撃的デビュー作であり、CWA新人賞受賞作。恐怖に隠された詩情の豊かさに、味わったことのない驚きを感じた。
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日本語訳が下手。物凄く読みにくい。悪戦苦闘中。読み終わった、が10日もかかった!「音もなく少女は」はこんなに読みにくくなかったのにこれだけか?誉めてる人もいるけどホンマに?筋はいいと思うんだが・・・。
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解説のあらすじ「残酷無比なカルト教の教主に拉致された娘を求めて、父親の警官が元教徒の麻薬中毒女を案内役にして追跡する話」とあるが、悪者はカルト教でもないし教主でもなく、ただの麻薬取引をやる暴力殺人集団のリーダーというだけである。
大人の欲と、暴力集団の自己満足の犠牲となった10代の女の子が悲劇である。捜索に協力した元麻薬中毒の女主人公の活躍がすごい。しかし、単純なストーリーの割に長すぎるかも。
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久々のバイオレンス小説。そうと知らなくて読み始めたから最初は本当に胸糞悪かったけど、アメリカの悪や矛盾を、成功や豊かさの下敷きになっている、必ずひずみに生まれてしまう犠牲者のそれぞれの姿を描き出している。単純なハードボイルド的な楽しみよりもそちらに目を奪われる作品。
ストーリーは至極単純。
とある中流階級家庭がカルト集団によって両親と飼い犬は殺害、少女は誘拐され、薬を打たれてレイプて連れまわされる。その少女の父親(あまりデキのよくない警官)が元ジャンキーでカルト集団に昔所属していたケイスという女性とともに追いかけるというストーリー。
展開がわかりきっているのに惹きつけられるのはハードボイルドならではかなと思う。
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あーもー何やってるのと言いたい感じにもたもたやって、後手後手にまわってしまって、やきもきするんだけども、でも人生こんなもんかと思わないでもない。しかし相変わらず?小難しい事ばかりのたまうアメリカ人達にはついていけん。
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家族をカルトに誘拐された男が、かつてそのカルトから逃げた元信者と協力して娘の行方を追う、ただそれだけの話。
しかし、なんと濃厚な作品だろう。どこまでも人間の善と悪の本質に切り込み切り刻んでいく。
比喩や暗喩だらけの文章は、まるで文芸作品のように噛みごたえがある一方で、残酷なまでにリアルな暴力描写がいたるところに散りばめられ、主人公とヒロインの地獄めぐりが描かれる。
どこにも善良な人間はおらず、通常は善である主人公ですら境界を踏み越えていく辺りの描写は迫力がありリアル。
ハードボイルトというよりバイオレンスに近いかもしれないが、家族や仲間に対する思いがあるゆえに共感することが出来る。
さらに強力なのがヒロインのキャラ。まるで「ミレニアム」のリズベットの原型の様だし、モラルを踏み越えていく主人公の姿はグレッグ・ルッカのキーパーシリーズを彷彿とさせる。色々な作者に影響を与えるような作品だが、この世界は唯一無二かもしれない。
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元カルト教団にいたジャンキーで、立ち直ろうと努力してるケイスと、警官のボブが、誘拐されたボブの娘をカルト教団から取り戻すために戦う話。
暴力シーンが割とえげつなく血まみれだし痛いのだけど、分かりやすいストーリーでスピーディーなので、いっそ爽快な気持ちになってくるのがおかしい。
とにかくケイスが格好いいのと、ラストシーンが本当に素敵。
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麻薬と銃と暴力の社会、そしてイエスが神では無いアメリカ。自分の中にもきっとある暗部を見ている気配を感じながら、やっと読み終えた。
ケイトとボブとギャビと、三人が角突きあったり助け合ったり自分を出し合いながら絶妙のバランスをとって暮らす姿が見えるだろうか。
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このあいだ読んだウィンズロウの『失踪』も、さらわれた女の子を探すプロットは一緒だった。主人公コンビの凸凹ぶりはドラゴンタトゥー(1巻しか読んでいないけれど)みたい
評判になったのも成程と思わせる出来だが、イマイチ乗り切れないところがある。悪役がなんとなくショボいせいだろうか
南カリフォルニアの砂漠っぷりはこの物語にぴったり。マウント・ボルディの北側は本当に殺風景なんだよね
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このミス海外編2002年版1位。暗黒小説(ノワール)であり文芸スリラーであるそうです。難解です。確かに文学的で地の文だけでなくほとんどの会話が小難しく哲学的で何言ってるのか良くわからんです。ハードボイルドのようにちょっとひねった言い方であったり、村上春樹的なメタファーの連発であったり、伊坂幸太郎のようにうまいこと言う系でもなく、自分にとっては単純に意味不明です。それでも、圧倒的な暴力性で迫力はあるし大体の流れは理解できてまあそれなりには読み進めることができました。ただ、ハードボイルドのようで主人公が女々しかったり、もっと簡単にけりつけりゃいいやんと思ったりなんだかもどかしい展開でもありました。
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娘を探すお父ちゃん、探し出すためならタトゥーだってなんのその。初ボストン・テラン。独特の乾いたテイストが印象に強く残った。
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2019年2月8日読了。かつての妻を殺され娘をさらわれた刑事ボブは、更生中のジャンキー・ケイスの助けを借りカルト教祖・サイラスとその組織に近づいていく…。セブ島のホテルにあった本を自分の本と交換して読了。血と銃弾、セックスに彩られた本…。設定が全てと言うか、冒頭から「彼女には時間がない」という息詰まるシチュエーション・緊迫感が半端ない。会話は哲学的と言うかよく理解できない点も多いが、独特の雰囲気を作り出している。自分だったら、ギャビの安否は最後まで伏せると思うが…それでは読者が緊張に耐えきれない、と判断したのだろうか?いずれにしても、普通に自宅に暮らしていてこんな目にあう国には住みたくないもんだ…。
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長らく積ん読になっていた、ボストン・テランのデビュー作。
ノワールの括りで紹介されているが、基本的にはロードノベル型のハードボイルドだと感じた。
娘を誘拐された父親が、元ジャンキーと協力してカルト教祖とその一味を追跡していく。
この事件の背景は少し強引であるが、エピソードやシーン描写が非常に映像的な部分が多く、筆力は高いと思う。
余談だが、本書を読書前にニコラス・ケイジ主演の「マンディ」を視聴しており、内容が似ていたのでその印象に引っ張られているのかもしれないが…
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昨年この作家と出会い狂喜した。最近の作品を3冊読んだが、そのクォリティの高さに驚嘆し、デビュー作を入手したもののなかなか読む時間が取れずようやく読了。……なんというか、期待が大きすぎたかも。冒頭から展開される凄惨な場面にのけぞり、その後も執拗に続く血と暴力の描写に辟易する。まあそれをマイナスしても、拉致された少女を追う親父と元ジャンキーの姿にはぐっときたが。出版された当時(2001年)に読んでいれば、絶賛しただろうなと思った。
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ケイスの宗教観?が彼女の知性を感じさせ、その経験と相まって神は銃弾のタイトルが響いた。私的には若干読みづらかったが面白かった。読んで良かった。