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ただ目標へと向かう主人公の直向きさが魅力だと思う。他に目移りすることなく、主人公が考えている事はピアノと調律、仕事の先輩達やピアノを弾く双子の女の子の事のみで良くも悪くも調律師として真っ直ぐ。成長を描きながら淡々と始まり、淡々と終わった印象。
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美しい。。
初めての宮下奈都作品、とても楽しみにしていて、読み始めて10ページもしないうちにこう思った。タイトルも素敵。
ピアノ調律師の成長物語。狂ってしまった音を元の美しい音に戻すように、外村が一つ一つ音を奏でて調律師になってゆく。先輩たちに助けてもらいながら。ふたごもいいね。ピアノの音が光の粒に思えて、キラキラするのを感じながら読んだ。
小さいころ、アップライトピアノのふたを開けて中を見るのが好きだったなあ。鍵盤をたたくとハンマーも同時にたたかれて音が鳴るのを何度も確かめて。ピアノ弾きたくなった。欲を言えばグランドピアノを。
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森・・・そうだな、読んでいる間じゅう森のイメージが浮かんでいた。人の背丈に対して木々は高くそびえ、目に入るのはまっすぐ伸びる幹ばかりで、青空や葉擦れの雑音さえも遠く、その代わりに動物たちの足跡や降ってきた雪の欠片が目の届く範囲にある、そんな森。
外村青年の抱くイメージにたびたび出てくる森の描写がとても印象的、視覚的というか・・・幻想的な雰囲気なのに、なぜかすんなり想像できてしまう不思議な描写だったから、それに引っ張られたんだろうなと思う。
限られた範囲の物語で、出てくる人もごく少数。しぜん、外村以外の各々の心のうちも深いところまで垣間見る感じになる。でもあくまで外村という「外」からの目を通してなので、入り込み過ぎず、重い物語になっていないのが気持ちよかった。
和音のピアノとの出会いから「わがまま」になっていく外村青年の様子もいいなぁと思う。成長する、階段を一つ登るって、そっか、わがままを言えるようになることでもあるんだな、と。つまり自分がどうしたいか分かるってことだ。右も左もわからず手探りな時期に「わがまま」は出せない。
心に残る言葉はいろいろあったけど、この一連のシーンが一番響いた。
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若き調律師の物語。
音の魅力を文字で伝えるという素敵な試み。読者としてそこに包まれている幸せ。
それにしても、ピアノの音は森と相性がいいのだろうか。
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スルスルと読めるのに不思議な雰囲気の漂う文章だった。ピアノの音が響いて聞こえた。
個人的には調律師という仕事がそんなにもいろんな要素から行ってくれていたのだなという感謝も思った。
また、調律師が変わったあと、自分のピアノが弾きやすくなったことを思い出した。
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音楽にまつわる、といって恩田陸の「蜜蜂と遠雷」をなんとなく思いながら読み始めたら、まるきり違う雰囲気の小説だった。
ピアノの調律師として働く青年が周りの先輩調律師やお客さんと出会い、悩み迷いながら成長していく物語。私は仕事や人間関係において、もっと正解に近いやり方・居方があったのではないかと常に反省し後悔しながら生きているところがあるので、なんとなく彼のことが理解できる気がした。
"山で暮らし森に育てられた"青年が主人公ということで、全編を通して、自然の音が満ちているのに静謐な雰囲気の森を想起させる本だった。地味だけど、しみじみ、良い余韻の残る作品だと思った。
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本屋大賞を始め、各賞に輝く作品。すらすら読めて通勤電車1日目の帰り道で読了。たんたんと話が進み、主人公がやさしい人々に囲まれながら成長していきます。が、私はピンとこず、ふむふむいい話、で終わってしまいました。感性が鈍いのかと反省。
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読んでいた時に頭の中で、サティのジムノメティがずっと流れていた。
ゆっくり、ゆっくり、その音を聴きながら、読んだ物語は慌ただしい毎日を過ごしている、私には必要だったのだと、読み終えた時に感じた。
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新米調律師、外村とその同僚や双子のピアノ奏者の話。
調律師の話と聞いて、専門的な話も出てきて、物語に集中できないのではないかと思ったが、最初の数ページで引き込まれた。
才能がないのでは、この努力はやり方が間違っているのでは、など自分も思っているような葛藤が描かれていて、すごく親近感がわいたし、どこかもどかしい感じもした。
登場人物のセリフも心に刺さるようなものが多く、癒されるわけではなく、現実と向き合い、その上でやっていくしかないんだなと思わせてくれた。
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目に見えないものが鮮明に感じられる作品。
主人公の周りの人たちと共に、青年の成長を見守ってきた感じがする。
素敵な作品!
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今の自分と重なる
自信が持てなかったり、何を努力すればいいのか分からなくなるときがある
でも少しずつ、根気よく、一歩一歩歩いていくこと。歩き続けること
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【本屋大賞受賞作、待望の文庫化!】ピアノの調律に魅せられた一人の青年が調律師として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った長編小説。伝説の三冠を達成した感動作。
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冒頭の2話、調律師になるきっかけの板鳥さんとの出会い、調律師になって初めて訪れた双子の話で、もう次のページが気になってしかたない。
調律ってギターのチューニングなんかと同じイメージを持ってたけど、深い森に引きずり込まれた。
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物語の底で、ずっとピアノが鳴っているような作品でありながら、静かであたたか。不思議なほどに深く感じ入った。
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友人が調律師でした。
さらに彼は大きな夢を見て
パイプオルガンビルダーを目指しました。
彼はそのどちらも目指すところに届かず
今はアンティークオルゴールの
販売とメンテナンスの職に就いています。
演奏者であることと そうでないことは
表現者として生きたい人間にとっては
天と地ほども差のあることで
ピアノを弾けなくなった由仁が
演奏者として生きようとしている和音の
ピアノを調律師として支えるというのは
設定に無理を感じます。
表現者を目指していた由仁にとっては
その選択の先にある未来は 地獄です。
表現したいのにできない。
ステージでライトを浴びることは
この先一度もない。
なのにステージのそばで
和音のピアノが喝采をうけるのを
常に見続ける。
容赦ない地獄です。
表現者として生きたかった者の
表現したいという想いを
この物語は描けていないと思います。
由仁が どのような経緯をたどり
苦悩と曲折の中で そんな選択に
たどり着いたのか…それを
描いてくれない限り やはり納得できません。
外村くんは 違います。
彼は 表現者ではないからです。
彼の人生は幸せです。
素晴らしい音楽の世界を
何のこだわりも 嫉妬も 苦悩もなく
心から味わうことができるから。
調律師になることが 彼の宿命だったとしか
思えません。彼は調律師として生まれたのです。
外村くんのくっきりとした輪郭の描かれ方に比べ
他の方の生き方とその背景は 薄ぼんやりしていて
共感できませんでした。
前述の友人は もともと表現者でした。
表現したいという想いを 一度でも胸に抱いた者は
どんな手段を選んだとしても
表現者として生きることでしか
人生を全うできないのではないか。。
そう感じて 私も苦しみつつ生きています。
まだまだ描きこめる余地のある物語ではないかと
僭越ながら感じました。