紙の本
これからのSF
2018/12/30 16:54
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投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
古臭い固定観念のため、中国文学とSFが結び付きませんでした。ラジオ番組の書評などで盛んに取り上げられているので、試しに本書を手にしました。
独特の世界観など、非常に洗練された作品群ですが、如何せん登場人物の名前が憶えづらい!読みこなすのに少し修業が必要そうです。
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これは傑作揃い! 中国らしい怪奇譚や幻想寄りなもの、悠久の歴史の自在な翻案、殺伐とした都会とワイルドな田舎。イメージ通りでありながら、それを超えた中国のイマジネーションの豊穣が展開していく。特に表題作『折りたたみ北京』と、『百鬼夜行街』は読み返したい。どちらも女性作家よ。ケン・リュウったら慧眼じゃのう!
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いま中国SFが熱い!っていうアンソロジーです。
短編それぞれに力と熱と円熟を感じて、好き。
どれもよかったけど、表題作の暗い感じというかノスタルジーというか雰囲気が良い。
体制批判的な文面を感じ取ってしまいがちだけど切り離して読むべき、とのこと。
英語訳からの邦訳です。
今まではそもそも英語訳されなかったので知られざる世界だった中国SFを、紹介してくれるケン・リュウに感謝。
あれ、日本SFの英訳状況ってどんななのかな?
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中国のSF短編をまとめたもの。現代中国文学を読む機会がなかったので想像以上のレベルの高さに驚いた。「沈黙都市」や「折りたたみ北京」は外からみた中国っぽさにも合っているので特に面白かった。
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話題になっていた中国SFアンソロジー。
全体的に哀愁が漂っている、静謐で哀しい話で纏まっている印象。そういえば編者のケン・リュウも短編はそういう傾向が強かった。誰か1人だけでも、単著の邦訳が出ないものだろうか。
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【収録作品】
序文 中国の夢/ケン・リュウ
鼠年/陳楸帆
麗江の魚/陳楸帆
沙嘴の花/陳楸帆
百鬼夜行街/夏笳
童童の夏/夏笳
龍馬夜行/夏笳
沈黙都市/馬伯庸
見えない惑星/郝景芳
折りたたみ北京/郝景芳
コールガール/糖匪
蛍火の墓/程婧波
円/劉慈欣
神様の介護係/劉慈欣
エッセイ/劉慈欣、陳楸帆、夏笳
夏笳の百鬼夜行街が中でもお気に入りなのだが、夏笳の他の作品はどうやって読めるものなのだろう。
中国SFがもっと流行って作品がたくさん読めるようにならんものだろうか。
中国SFおもしろいぞ!
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中国というバイアスをとっぱらって、素直にSFを楽しもうと思ったのだけれど、やはりなかなかそうもいかない。どうしたって人間が書いているのだから、現実の社会や環境、価値観が影響しないわけはないのだし、それでいいのだと思う。日本のSFもこのくらい盛り上がって欲しいものだが、それには日本の「三体」が必要だ。個人的には技術の進歩が人間の要請にそって希望がきらめいている「童童の夏」が可愛くて好きだった。
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漢字表記の人名や地名に読み難さを感じたけど、フツーに名品揃いのSFアンソロジーだった。中国でこれらの小説が発表出来ているというので( ゚Д゚)
で『三体』ってのの邦訳が激しく読みたいんだけど~
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個別の感想とは別に、全体的な印象としては、親子や血縁に関する情が表面に現れている作品が多かった気がする。
中国の儒教的な文化が背景にあると言ってしまえばそうかも知れないが、むしろ日本や西洋のSFの側が、その国の現在の平均的な社会の有り様よりも個人主義的姿勢を作品内で強調して描きがちな傾向があるのかもしれないと思った。
中国の神や民話や歴史のムードはとても好みだし、SF的な換骨奪胎にも向いている気がする。
深センを舞台にした「沙嘴の花」がとても良かったので、香港や北京や上海などフィクション全般に使われがちな土地以外の現代中国を舞台にした作品も読んでみたくなった。
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ギブスン調、オーウェル調、カルヴィーノ調、クラーク調といった影響元が明らかなものから、中国調としか言いようのない不思議な幻想小説まで。
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全般的に非常に品質が高く、多様性に富んでいて、とてもよかった。共通して美しい世界観があるのもよい。
作者に女性が多いところがちょっと意外で、日本とは違うところだなと思った。
圧巻だったのはやはり「三体」の劉慈欣。「神様の介護係」がよかった。
あとは馬伯庸と郝景芳の作品をもっと読んでみたい。
## 劉慈欣
### 円
古代中国を舞台にして、兵隊を演算素子としてコンピューターのようなものを作った歴史改変もの。
あれだけの大国の大量の兵をもってすればできなくもなかったかもと思えて面白い。
### 神様の介護係
最高に面白い。
神様は確かに存在したが、それは何億年も前に栄えた文明に生きた人々のこと。その文明は高度に発達していたが、ピークを超えて停滞し、文明自体が老年に差し掛かったため、自分たちの世話をさせるために地球に生命を誕生させたという話。地球人から見れば神の位置付けとしては間違っていないし、それにSF的な設定をうまく融合させている。
## 陳楸帆
### 鼠年
遺伝子操作で製品化された鼠が逃げ出したので、学生までが鼠胎児に駆り出される。
鼠はただの鼠ではなくいろいろな能力を持っているみたいで、最後はよくわからなくなる。
なんとなく椎名誠のSF作品を連想した。
### 麗江の魚
### 沙嘴の花
舞台や装置がサイバーパンク的になっているが、テーマとしてはSFではない。
こっち系の話は苦手というかあまり興味がない。ただ、ノスタルジックな雰囲気はなかなかよかった。
## 夏笳
### 百鬼夜行街
幽霊や妖怪が出てくる話。SFとの境界が曖昧だし、そもそも境界なんて気にしなくてよいという思いがありそう。
### 童童の夏
自らも要介護者の老人がロボットを遠隔で操って、別の老人を介護する。中国も高齢化が深刻なのが分かる。よい。
### 龍馬夜行
龍馬が蜘蛛と一緒にパレードして、ラ・マシンぽいなと思ったらまさにそうだった。人類滅亡後に残された機械の話で、想像が膨らむ。
## 馬伯庸
### 沈黙都市
オーウェルの一九八四をオマージュしたような、検閲が強烈なディストピアの話。もちろん、現在の中国の状況とも重ねているはず。最高。長編でも読みたい。
## 郝景芳
### 見えない惑星
男が女に、今までに訪れた数々の不思議な惑星の話を聞かせる。惑星ごとに文化の発展の仕方に独特のエピソードがあり、文化人類学的に面白い。男が女に話している状況にも何かありそうな不思議な雰囲気がある。よく分からないが、いい感じ。
### 折りたたみ北京
3つのエリアに分けられ、それぞれの割り当て時間が決められて、街が折りたたまれながら入れ替わる。格差と分断を可視化したようなディストピア。この短編ではそこでの1シーンを切り取った感じだったが、是非とも長編で読みたい。
## 糖匪
### コールガール
性的なサービスではなく、夢を見せる娼婦の話。夢の内容が乾というのがよく分からなかった。
## 程婧波
### 蛍火の墓
時間と空間を超越したような不思議な世界の話。創世神話のようでもあるし、超未来のようでもあるし、完全な別世界のようでもある。イメージが飛びすぎていてちょっとついていけなかった。
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現代中国SFアンソロジーという副題にたがわぬ、面白いSFが詰まっていた。ケンリュウの英訳をさらに日本語に訳してあるので、言葉使いは原典からどのくらい違うのかわからないが、発想やストーリーは十分堪能できる。
劉慈欣(リュウツーシン)の三体はぜひ読んでみたい(オバマも読んでる)
鼠年/陳楸帆:まだ鼠の毛一本見つけていない
麗江の魚/陳楸帆:再訪した。今回は病人として
沙嘴の花/陳楸帆:深圳湾の夏は10か月続く
百鬼夜行街/夏笳:百鬼夜行街は藍色の帯のように細く長い通りです。
童童の夏/夏笳:おじいちゃんがうちに引っ越してくるわよ
龍馬夜行/夏笳:りゅうまは月夜に目覚めた。
沈黙都市/馬伯庸:時は2046年。中国政府への風刺?
見えない惑星/郝景芳:魅力的だった惑星の話をきかせて
折りたたみ北京/郝景芳:ごみ処理施設での勤務が終わったあと老刀は・・・
コールガール/糖匪:小一のほっそりした裸体だけが、細い朝陽に照らされている。
蛍火の墓/程婧波:雪止鳥が空にあらわれ、世界の混乱は深まりました。
円/劉慈欣:秦の首都咸陽紀元前二二七年
神様の介護係/劉慈欣:神のせいで秋生一家はまたしても大騒ぎだった。
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色々身構えて読み始めたけどそんな心配はいらなかった。
中国とSFの結び付きとは、とか最近SF読んでいなかったな、とかポケットブック版は情報量多そうだな、とかそんな事を色々考えていたけど。
子供の頃読んだジュブナイルSFを思い出すような、とにかくわくわくして読めた。
カタログ的にどれか気に入った作品があればという感じでも読もうとしていて、作品の中では「蛍火の墓」が美しく哀しく印象に残ったけど、どの作品も異なった世界観が魅力的で、次に読んだらまた新しい良さが発見できると思う。
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現代中国の本には全く馴染みがなかったが、この本はとても良かった。アジア的ディストピアの描写はなんとなく肌馴染みが良いし、翻訳もとても自然で読みやすい。また著者紹介のページを見ると、プロ作家専業というよりもいろいろな分野との兼業作家が多いのも興味深い。ここら辺、中国の検閲文化と関係しているんだろうか…
名作『紙の動物園』のケン・リュウ氏の作品は残念ながら入っていないけれども、アンソロジーとしてのレベルは高くまとまっている。
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「お話は液体じゃないわ」
「お話は犬に似ているの」
- Call Girl/糖匪
未来を描くには大まかに分けてふたつの方法がある。帰納と演繹だ。
前者の一番わかりやすい例はスチームパンクだろうか。理想としての未来像が目の前にあり、それに沿う形で世界をの輪郭を引いていく。例えば、もし今より一世紀まえに蒸気機関によるコンピューターが普及していたら、都市はいったいどのような景観をしているのだろうか、と。
対して後者の場合は、まず現実を出来るだけ高解像度で量子化する。そのデータセットを分析し、どうにか方程式を組み立てて、納得できる「世界」という関数を作り出したら、ひとつまたひとつと作者が考える時間単位を加味していく。そうして「世界」が十分現実から離れ、「不思議さ」を提供できるほどの未来になったら、その世界の普通を描くのだ。
もちろん、おおよそほとんどの作品はこの二つの方法の両方が使われている。しかし、未来を描くのがその時代に生きる人間である以上、どんな望遠鏡あれ地球に置かれている限り光速に縛られるのに似て、「いま」という時代性からは例え星新一であろうとも自由になれない。
だから、「未来」は偶に、作者も意図していなかったほど鮮明にその時代の精神を写しとる。
例えばヴィーナス・シティという作品は、あまりにも当然のようにバブルが永続した世界を描いているから、そのまぶしさは今を生きる我々からすると直視することすら困難だ。
先の方程式の例をだすと、「世界」関数の傾きは「その時代/その瞬間の定数」として描かれる。だからこそ、当時の人たちはいったいどのような変化の割合を体感していたのかが、文章の節々から漂ってくる。
そんな訳で私はてっきり「現代中国SF精選」なんて本に描かれている未来は、目くるめく千年帝国の見本市のようなものかと思っていた。
だがこの本を読むに、それはどうやら違うらしい。ここで描かれているのはその構成員すら無視するようになった大企業に磨り潰される勤め人であったり、資本主義の尻拭いをするために兵士になった大学生だったり、神を介護する人々の憂鬱だったりする。
なんとなくだが、威勢のいい数字を喧伝する経済紙や公式レポートを読み漁るより、こっちの方が実態に近いように思う。
きっと向こうも向こうで私たちみたいなゆとり/さとり世代がいて、おじさんたちの吐く気炎に辟易しているのだと思うと、ちょっと安心できるじゃないか。