投稿元:
レビューを見る
じっと手を見る。
窪美澄さん。
富士山のふもとに住む。
介護士の仕事をしている主人公。
両親が早くに亡くなり、
お爺さんが大切に育ててくれた。
そのお爺さんも亡くなり。
よるべない身の上。
よるべないとは、
身を寄せるあてがない。頼りにできる縁類の物がいない。
孤独であり不安である。という事。
初めは、ただの恋愛小説かと思ったが、
毎日を淡々と生きる。普通の人々。
生き続ける生への気持ち。
がんばって。と伝えたくなった。
章毎に、それぞれの登場人物の語りになっていて、
おもしろかった。
介護士さんの仕事の大変さ。重要性が描かれていた。
大切なお仕事。
読み終わって、
少し切なくなる本でした。
良かった。
投稿元:
レビューを見る
生きていくって難しい。
改めて考えてしまう。
介護の仕事もリアルに感じられて
興味深かった。
投稿元:
レビューを見る
第159回直木賞候補作。
(受賞した『ファーストラヴ』に次ぐ次点だった)
選考委員である宮部みゆきの言葉を借りれば「この作品は、介護士ではなく、介護士の日奈と海斗をとりまく五人の男女の『ふぞろいの林檎たち』」である。
介護に対する絶望があるわけではなく、かといって希望があるわけでもない。介護を書きたくてとことん介護を掘り下げた構成でもない。
どこかの田舎町にもよくありそうな設定であり、だからなのかスッと心に入ってくる。
それゆえ、とても絶妙なバランスで成り立っている作品だと感じた。
投稿元:
レビューを見る
直木賞候補。富士山の見える地方都市で介護士をしている日奈と海斗。官能的なシーンありの恋愛小説ですが、激しくはなく、じんわりとジワジワとくるものがあります。
生まれたときから、生活の場所は決まっているのではないだろうか。どんなに違う道を歩いても戻るところがあるのではないだろうか。登場人物の愛情は淡々と描かれている感じで、激しく人を思う気持ちよりも、冷めた場所で「こうなるしかない」「こうなるとわかっていた」という気持ちを感じられる。
単なる恋愛、官能小説ではなく、生きる強さ、自然、介護士、といった要素がつまった作品で私は好き。
投稿元:
レビューを見る
この作品に出てくる人は皆一人で生きていこうとしながら、結局一人では生きられず誰かが寄り添う形になる、人の心の弱さをじっくり静かに描いた小説だった。人間はそんなに強くない、強がってもやはり弱い。そんな心の奥を見せてくれた。部分的には恋愛小説と言うよりも介護も含めて現代の社会問題も含んだ小説だったと思う。
投稿元:
レビューを見る
恋愛小説というジャンルで括るのが憚られる作品。
甘い、とか、切ない、とかじゃなくて、もっと切羽詰まった感情が伝わって来る。
このカンジは窪美澄さんらしいと思う。
改めて、誰かと一緒に生きて行くことの大変さ、そして大切さや尊さを感じた。
投稿元:
レビューを見る
介護の仕事に就く二人の男女と彼らの人生に一時関わる男と女の物語。介護職の過酷な労働とそん報酬の低さ、東京と地方の地域間格差なども感じられ、持つものと持たざる者の不公平さもある。結局社会の底辺で慎ましく暮らすふたりが互いによるべとなって暮らしていくのだろうなあと思われるラストであった。しかし東京でいくら裕福に暮らしていても老後は介護の厄介にならざるをえない未来が見え、人を見下すのも人生のほんのひと時にしか過ぎないのだ、日本の格差社会の歪みを描いたような小説に感じた。
投稿元:
レビューを見る
心にぽっかり空いた穴、孤独による寄る辺ない寂しさ。
穴埋めするかのように身近な他人にしがみつく。
そして他人と寄り添う温かさを一度知ってしまったら、なかなか離れることが出来ない。
孤独に耐えきれずもがく男女を描いた連作短編は全体的にグレートーン。
主人公が従事する介護士の仕事の辛さが物語を一層暗くする。
老いて死に向かう人々の世話をすることで自分の生を確保していくジレンマは、想像するだけで胸苦しい。
私の父も週に数回デイサービスを受けているけれど、本作品を読んで介護士の方々には本当に頭が下がる。
幾つかの経験を経て出来た手の皺は苦労を重ねてきた証。
そんな手と手を重ね愛しさを思い出した彼女達のこれからに少しでも光が射すといい。
二人の未来を静かに温かく見守りたくなった。
投稿元:
レビューを見る
心がきゅっとした。
恋愛要素はあるものの楽しいシーンはあまりなく、死や別れの匂いのある話なんだけど、どこか温かくて前向きでというお話。
投稿元:
レビューを見る
2018年上半期直木賞候補作品。連作短編集。
富士山山麓の地方都市で介護士として働く日奈と海斗。日奈は東京から来たデザイナーの宮澤に惹かれ、二人の関係は終わる。一方の海斗は日奈のことを忘れられない中、同僚の畑中と付き合うことに。日奈と海斗を中心に繰り広げる、不器用な人たちの切なくやるせない恋愛物語。
なんともいえない重たさというか、虚しさが残る。最後もハッピーエンドではなく、終わりの始まりのように感じてしまうのは私だけだろうか。
投稿元:
レビューを見る
富士山が見える小さな町を舞台に、介護の仕事を営む日奈と海斗を中心とした何人かの登場人物で視点が切り替わる形式の連作集になっています。
最初の「そのなかにある、みずうみ」を読み始めたときは官能的な描写の連続で(タイトルからしてエロい)、この先の展開に変な期待を抱きそうになったのですが、二話目以降はそれほどでもありませんでした。
ちょっと残念。
まあそれはいいとして、日奈と海斗の視点の章は、派手な事件や盛り上がる展開はそれほどなく、個々の心のゆらぎ、心理描写に重点が置かれている印象です。
愛美璃や裕紀とのふれ合い等、細かなエピソードでは面白く読めたところもあったのですが、2人の個性や魅力といった点で、やや物足りなく感じました。
どちらかといえば負のエネルギーに満ちた畑中の章、甲斐性なし男感全開の宮澤の章のほうが読んでいて楽しかったです。
また、心に欠損を抱えた人物がこれでもかというほど登場するのには違和感があり、果たして全員がそうでなければならない必然性があったのか疑問が残りました。
今の時代の空気を作中にうまく取り込んでおり、悪くない作品だとは思います。
ただ、主体性があまりないというか、流されるままの生き方が現代らしさであるのならば、せめて小説にはそれに抗うくらいの強い意志と迫力を求めたいというのが個人的な意見です。
もうそういう感覚は古いのかもしれないですけど。
投稿元:
レビューを見る
それぞれが抱える喪失感と日々の苦しい生活。
これだけの言葉を紡ぎだす著者は心が不安定にならないのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
初出 2011〜16年の「GINGER L.」、2016〜17年の「小説幻冬」
帯には恋愛小説とあるけれど、在宅介護先で中学生愛美璃が訊く「人はいつか死ぬのになんで生まれてくるの?」という問い、裏返すとみんなどうしてうまく生きられずに苦しむのか、がこの小説のベースなんだと思う。初読みの作家さんだったけど、結構好きだ。
25才の介護士日奈は、仕事で来た東京のデザイナイー宮澤に惹かれ、同級生の海斗とは違う深く感じるセックスを経験するが、宮澤は仕事に行き詰まり来なくなる。
人がいい海斗は日奈が好きで、祖父が死んで一人になった日奈の面倒を見て同居するが、日奈の心は自分に向かず、職場の同僚と同棲する。男と職場を渡り歩く同棲相手はやがて海斗をおいて東京へ去る。
宮澤は妻や東京から逃れて被災地の町で営業マンになり、日奈は追いかけて同居し訪問介護の仕事をするのだが、宮澤の妻が宮澤を連れ戻し、日奈は故郷へ帰る。
どうしようもない宮澤だが、自分が誰とも心を通い合わせて生きていける人間ではないという自意識は良く分かる。
祖父の残した家が道路の拡幅で取り壊されることになり、日奈はマンションに移り、再会した海斗と取り壊しを見守る。
誰もが幸福ではなく、かといって不幸でもなく、孤独なのだ。
(追記 2022.7『夜に星を放つ』で直木賞受賞)
投稿元:
レビューを見る
他人から見たらそれはいけない恋だと分かっていても、いざ当事者になると分からなくなるもの。
分からなくなるというより分かっていても信じたくないしやめられない。
みんな何気ない日常の中にどこかしら閉塞感を感じながらもどうしていけばいいかなんて分からずただなんとなく毎日は過ぎていく。
このどうしようもなさと閉塞感の漂い方は本当に窪さんが書くとリアルでいい。
投稿元:
レビューを見る
今年の直木賞候補作品。同じ介護の仕事をしている男女の恋愛模様を描いている。性と生を描いているのが感じられるが、お互いに付き合っている同士なのに、別の男女に惹かれて、浮気してしまったり、浮気相手はシングルマザーであったことが判明したり、別れた妻がいる男性、訪問先の家で孫が鬱病で苦しんでいたりなど、重いテーマであるが、決してどん底ではなく、それぞれが前に向いて歩んでいるのが伝わってくる。介護問題と合わせてリアリティーがある。登場人物皆、幸せになって欲しいと感じるラストだった。