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目次(内容)は以下のようになっている。
1. 近代日本は徳川幕府がつくった
2. 薩長土のテロが時代を動かした
3. 幕府が開明派で、薩長こそが守旧派だった
4. 明治新政府を支えたのは旧幕臣たちだった
5. 江戸時代の遺産が、日本社会を形づくっている
著者は、幕末の開国に関しては、基本的には幕府の開国の方針が正しく、薩長の攘夷思想は間違った方針であり、(本の帯にも書いてあるが)明治政府というのは、テロとポピュリズムによるクーデターで、中身は何もない行き当たりばったりの革命であるということを、執拗に至る所に書いている。
ただ、上記の目次のような内容は従来から歴史研究者の間では公知の事実であり、著者が初めて主張したわけでもないと思う。
私の狭い知見の中でも、上記のような内容を(学者ではないが)1970年の司馬遼太郎と海音寺潮五郎の対談で読んだ記憶がある。
その対談の中で明治維新の大きな成果として、取り上げているのは、
① 廃藩置県により日本が統一国家になったこと。
② 廃藩置県と併せて身分制を廃止して日本人の社会は市民社会になったこと。
そして、そのほかの事はかなりのものは試行錯誤だったと言っている。
また、著者が主張する本来正しいはずの徳川幕府が存続していたら、明治政府が行ったような、廃藩置県や武士をなくすようなことが実現し、すぐさま市民社会が出来たであろうか?
最も明治政府は「神仏分離令」のような廃仏毀釈に繋がる変なことも行っているが、あの混乱の中から、外国の植民地にもならずに、近代日本を作った功績はそれなりに評価されても良いと思う。
歴史を語る上で、後世の後付けの理屈だけで割り切れるものではなく、またその時代のあらゆる条件を考えての批判ではなく、一握りか二握りの条件で論じている場合が多いと思う。
この本の記述についても、同様な感じを持った。
財務省で財務官まで上り詰めたトップ官僚が、この程度のものであれば、何か寂しいものがある。