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分類すれば本書は、いわゆるタイムスリップものの時代小説、ということになるのだろう。
しかし、読了してみての印象は、自己啓発本とかビジネス書といった類がしっくりくる。
現代でいうところの名プロデューサーだった蔦屋重三郎。書店を開き、洒落本などの販売や出版を手掛けた。浮世絵にいち早く目をつけ、歌麿を売り出した人物として知られている。
実は謎の多い東洲斎写楽の仕掛け人でもあった、という話が最近取り沙汰され、本書内でもそれをにおわせる展開が綴られているが、これは決着がついたのか?などと、島田荘司の『写楽 閉じた国の幻』も思い出しつつ読んだ。(こっちも早く続編が読みたい!いつなんだ、島田さん!)
時代物といっても語り口は軽妙で読みやすく、そこそこ厚い本だが一気に読める。そもそもタイムスリップものだし、眉唾っぽいエピソードも随所にあり、荒唐無稽と言ってしまえばそれまでだが、単にエンタテイメントとしての楽しさだけでなく、重三郎の敏腕ぶり働きぶりは、社会人の心得としても十分に通用する。ちょっと考えれば当たり前のことかもしれないが、つい忘れがちな心構えを改めて気づかされた。
ご丁寧に、巻末に「蔦重の教え」が掲載ページつきでリストアップされてもいるじゃないか!
最後のひと仕掛けもすごくいい。とても楽しい読書体験であった。
ぜひ、新社会人のみなさんに読んでほしい本書である。
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江戸時代の名プロデューサー蔦屋重三郎の商売の秘訣が詰まっています。
これから、社会人になる方は、読むといいかもよ。
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気の合わない人間ほど丁寧に接する
すぐに断る
己の天分を知った上で仕事に生かせ
人は得意なことで大失敗する
”でも”とか”しかし”なんて言っている奴は、金言を逃すし、人様に可愛がってもらえなねえぞ。知っている話や納得できねえ話でも、ひとまず、”なるほど”って聞いてから判断したって遅くはねえだろうが
恩送り かけってもらった恩は下に送らなければならない 人にかけた情けは、いずれてめえに返ってくる
それが徳を積むってこった
やりもしねえで、知ったようなことをぬかすんじゃねえ
何かを捨てなければ、新しい風は入ってこない
物事を逆から考える
人生は知恵比べ。考えぬいた方が勝つ
付加価値を高める
一流の人間(ブランド力)を使う
生まれ地に貢献する
情報収集を怠らない
相手に期待をかけて頑張らせる
気の合わない人間ほど丁寧に接する
断る可能性が高い誘いはすぐに断る
進言は素直に聞く
世の中すべてのひとを悪人だと思え
三方良しの関係を作る
わざと厳しく叱る
人脈を生かし、口コミを使う
己の天分を知った上で仕事に活かす
人は得意なことで失敗する
悪い予感は天からの忠告と心得、なおざりにしない
三方向から見る目を持つ
半歩先をゆくために保険をかけ、節約して資金を作る
人の言葉を否定しない
好きな仕事で人の役にたつ
「あがり」を定めて人生を逆算し、梯子をかける
相手にとって何が幸せかを考えれば騙されない
根回しをする
目標をもつ
恩送りをする
時代の流れに気を配る
物や場所にも挨拶をする
万物と未来に感謝する
知識ではなく経験で語る
約束を守り、相手の信用に報い続けていれば信頼される
何かを捨てなければ新しい風は入ってこない
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蔦重の伝記というより、タイムスリップしたタケこと左遷されたメタボ親父が若造になって、江戸で蔦重に助けられて生きていく日々を描いたもの。蔦重の蘊蓄がメイン。
埋めたはずの浮世絵の壷が、蔦重の手紙になっていたのにはほろりとした。そして写楽の謎にも一つの解答を出しいていた。
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書評
『蔦重の教え』
車浮代・著
飛鳥新社・1600円+税
「人生の勘どころ」は足下にあり--蔦屋重三郎に学ぶ「人間学」
困難にぶつかり、全てが堂々巡りするとき、少しだけものの見方を変えてみるだけで、案外うまくいくことは多い。それは、ドアを押すのか引くのかといった些細(ささい)な違いかも知れないが、ものの見方を変えることこそ一番難しい。「道は近きにあり、然(しか)るにこれを遠きに求む」とはこのことであろう。
そうした時、小気味よく気づきの刺激を与えてくれるのがSFや時代小説といった創作である。文芸の醍醐味とは、その筋書きの妙技もさることながら、自分とは異なる視座で物事を見つめ直すきっかけを与えてくれることに存在する。本書はその最良の導きとなる一冊だ。
筆者は、噺家(はなしか)・三遊亭圓窓(えんそう)に学び、江戸文化に造形の深い女流文筆家。その筆は創造的な啓発に満ちている。主人公・武村竹男(タケ)はリストラ直前の55歳のモーレツ・サラリーマン。お稲荷(いなり)さんの罰で江戸時代へタイムスリップするが、そこは、稀代(きたい)の浮世絵師・歌麿(うたまろ)を育てた版元・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう 蔦重)の懐という筋書きだ。実在の蔦重は才覚豊かで面倒見のよい人だったというが、タケは蔦重のもとで、人生の極意を学んでいく。例えばその一つは、三方向から見る目を持つこと。蔦重は次のように言う。
「実際にてめえが見ている目と、相手からてめえがどう映っているかってえ目、最後に、天から全部を見通す鳥の目だ。この三方から物事を見りゃあ、失敗しないし、騙(だま)されねえし、新しい考えも湧くってもんだ」。
筆者のテンポのよい文体と魅力的な人物描写、そしてそれを裏打ちする知見がふんだんに盛り込まれ、「人生の勘どころ」がぎっしり詰まった本書は読み手をとらえて離さない。「仕事が忙しくて、とても小説など読む時間などありませんよ」などと「言い訳」する社会人に手にとって欲しい。
(東洋哲学研究所委嘱研究員・氏家法雄)
--拙文「車浮代著『蔦重の教え』(飛鳥新社)」、『第三文明』2014年5月、95頁。
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http://d.hatena.ne.jp/ujikenorio/20140401/p1
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江戸時代にタイムスリップする話しだが、それだけでなく、
版元、蔦重との関わりを描いており、それなりに面白かった。蔦重の事は、知ってはいたが良くわからなかったが、これで少し理解出来た。このような設定もそれなりに面白いが、次には、正面から、蔦重をもっと調べて描いて欲しい。
期待しています。このところ、多忙で読むのに時間が掛ってしまったが、一気に読める本。
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今年15冊目。数年前、蔦屋重三郎を取り上げたサントリー美術館の展示を見に行った。歌麿や写楽のプロデューサーであり、画期的な方法で錦絵や書籍を広めた人物であることを知った。歌麿や写楽がメインではなく、こうした仕掛け人に焦点を当てていた点が気に入り、分厚い図録まで購入してしまった。
そして、たまたま書店で見つけたこの本。
上記の企画展と同じ視点で描かれつつ、ビジネスや人生訓が散りばめられていた。
歴史ライトノベルという感じ。賛否両論あろうが、仕掛け人を取り上げる点が良いし、なおかつ、江戸の習俗や、当時の出版・広告について勉強にもなり、サラッと読めるので私はなかなか面白かった。
設定がハチャメチャですが。
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20年来のTSUTAYAファンとしては読んでおきたいわよね〜というわけで、店名の由来とも言われる蔦屋重三郎が出てくる小説でございます( ^ω^ )
仕事や生き方の極意を、現代からタイムトリップした冴えない中年サラリーマンが蔦屋重三郎から教わる、というエンタメ小説でありながら自己啓発本でもある本作。
……正直、主人公が蔦屋重三郎から教わった仕事の極意云々以上に、版元として活躍した彼の足跡や、洒落や歌麿の方に興味持っちゃったよね〜(笑)。
依願退職するよう宣告された、武村竹男、55歳。ムシャクシャした彼は、お稲荷様に働いた粗相の罰として江戸時代にタイムスリップしてしまう!
そこで出会ったのは、東洲斎写楽や喜多川歌麿を見出した出版界の風雲児・蔦屋重三郎その人だった!
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小説仕立ての自己啓発本ですが、蔦屋重三郎が生きた時代を細かな描写と、現代との対比によって面白く、読みやすい内容でした。
やはり自己啓発の内容は、その一つ一つは難しいことではないのですが、それを継続して続けることが難しいのだと思いました。
何故継続させることが難しいのかと考えると、結局人は体験から得たことでしか真に学ぶことはできないのではないかとも感じました。
そう考えると、気持ちの良い環境に身を置いて、ただ日々過ごすだけになったとき、そこに充実感や楽しみを見出すことができなければ、真に得るものは何もないのだと思いました。
人のパワーの源である怒りと悔しさを上手にコントロールしていけたらよいと思いました。
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少し前に何かの書評で気になっていたこの本
内容はというと、
バブルの時代を持ち前の人好きする性格と
ノリで乗り切って来た主人公だが
不況になって、時流にあわずに影では
良く土下座をするのを皮肉って『ゲザ男』と呼ばれたり、、、。
社内でリストラか?と噂され、ショックで浴びるように
酒を飲み、気を失う。。。
と、気がつけば江戸時代。
拾ってくれた人物は時の蔦屋重三郎。
本屋であり、出版社であり、広告代理店であり
芸術家のパトロンであり、
時代の時流を産むプロデューサーであった人物。
そこで暮らすうちに、
人にはなにが重要なのか?
仕事の関係づくりとは?
などなど、時代を作った人物から多くの影響を受け
時の絵師らとも、歌人らとも交流を持ち
成長する様子を、物語にしている。
江戸に興味のある方なら
読んでいて、うんうんとうなづく場面も多く
今更ながらに長い平和の時代の
日本人が作り上げた社会の成熟度が
読み取れ、とても面白い一冊になっている。
巷では、ビジネス書として、サラリーマンにも
評判がいいと聞いている。
江戸時代にさして、興味がない方にも
楽しんでもらえる一冊になっている。
後日談にタイムカプセルのように
歌麿の下書きを掘り出すシーンで
蔦重がそれを知り、主人公に
戒めと温かい言葉とを綴った手紙が見つかる。
主人公は現代に戻って
ぎくしゃくしてた家族の関係も
新しい一歩に踏み出す。
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日本人が、日本人として生きていく為に、大切にしてきた思いや、考え方。
私は、テクニックではない、根っこの大切なことが たくさん書かれていると思うな~
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リストラ間際。55歳の親父が1780年代の江戸にタイムスリップしてしまい、そこで偶然拾われた蔦屋重三郎さんから、本の作り方、商売の仕方、ひいては生き方そのものを学んでいくお話し。
「夢をかなえるゾウ」に似ていると思った。けれど、違うところは、蔦重さんが実在の人物で、彼の経験や、信念に基づいた教訓が詰まっているところかな。
時代の半歩先に目を向け、自分にとっての「あがり」は何かを設定し、そのために必要なものが何かをかんがえて行動に移す。なるほどなあ。
「あがり」の設定は、身につまされた。
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時代を遡れば物事は古い過去ではなく、そこから学び取ることもあると思わせる作品でした。
物事には限りがあってENDする前にGOALする瞬間に立ち会えればそれは素晴らしいことでしょう。
単に教えてもらうだけではなく、教えをしっかり理解しそれを実行できればあがりに立ち会えるんだと思います。
江戸時代にタイムスリップしたいからといって吉原のソープに行くのは禁止とします。
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2014.6.16
これは、人としての 教え ですね
現代に通じる話だからTVドラマとか良さそうです!
毎週やることでじっくり 教え が伝わる
話自体には コレといった盛り上がりは、ないような?タイムスリップした主人公が何か解決する事も無く唯々見て聞いて体験して考えを改て社会勉強していく感じ
調子に乗って失敗する事のが多くて 読んでて耳が痛いというか心も痛むというか、我が事かと辛かった…
調子に乗ってスンマセン‼
って謝りたくなった…
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65歳でリストラを申し渡された男が江戸時代にタイムスリップ。蔦谷重三郎の下で人生の教訓を学ぶ、という荒唐無稽ながらもユニークで面白い作品。江戸時代の文化、料理、風俗なども詳しく興味深い。著者は江戸研究家。