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昨今、問題意識が広がっている日本の社会情勢について、ひとつの切り口をまとめたもの。焦点が当てられているのは、30代までの非大卒のグループ。特に、その中の男性について、問題視されていない現状を懸念している。これまで社会の隅々を支えてきたこのグループの弱体化は、相対的な弱体化から絶対的な弱体化へと進み、日本の社会が危機に陥る決定的な要因のひとつだと主張している。この本ではパネルデータの解析によってその背景が示されている。
世の中、大卒を前提とした議論のなんと多いことか。
非大卒の人たちは、外国人労働者や人工知能、ロボットなどに置き換えられていくのだろうか。確かに、競争力が落ちたから苦境に陥り、このような問題意識となる。
本を読む目的は、評論家気取りになって眺めることではない。自分の2人の子どもが将来生きていく環境を見据えて、そのために自分が今しておくことの意味を確認する、この本はそのためのひとつの材料となった。
おもしろい分析だったが、惜しむらくは、将来確実に現実化する人口激減と構成変化を踏まえた、将来の推計を含めた議論があまり展開されてないことだろうか。
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日本で現在働いている、現役世代について、
2015年の調査を元に学歴・世代・性別で8つに分けて考察したもの。
若年の非大卒男性をLightly Educated Guysレッグスと呼んで、
今後の世代の主要な担い手として支援・協力していくことを重要視する視点は、とても新鮮だった。
学歴社会はもう終わったとか、ほとんどが大卒だというような話をよく聞くが、実際は(意外と)そうでもなかった。そのくせ、じぶんの周りには同程度の学歴の人しかいない、ということを意識している人は少ないと思う。
私自身、その通りで、特に働き出すとその傾向は強いような気がする。
だから?収入面でも世代・性別・学歴でかなり明確な差があるし、夫婦構成も同世代・同学歴でくっつきがちだから世帯毎にみても若年非大卒が低くなる。
その若年非大卒女性が子どもをもち、それを支える若年非大卒男性が
社会からの保護も手薄で取り残されているような現状は、
ここまでかみ砕かないと見えてこなかった。
各世代で協力しあって、次の社会をつくっていくことが大事というが、
そういう世代間や階層のような分断を超えた交流が自然に出来る社会は楽しそうだと思う。
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かつて小泉政権だった2000年代の前半頃に「格差は拡大しているのか?」との議論が国会を賑わしていたことを思いおこす。
今となっては「格差の拡大」は誰の目にも明らかであるが、本書はそれがすでに「日本の分断」にまで至っていると論証している。
なるほど日本の格差は周辺部分の没落のみならず、「非大卒若者たちの大きなくぼみ」として顕現しているとは興味深い。
これからの時代は、大学卒でなければ人並みな暮らしは望めない社会となるのだろうか。生きづらい階級社会だなと嘆息した。
しかしながら、本書は内容は興味深いが文章は読みにくい。もう少し文章力をブラッシュアップしてほしいと言ったら失礼か。
2018年6月17日読了。
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人々の意識をセグメントして論じるのは正しいとは思うが、著者のコメントには少なからぬ違和感が。著者の視野からあぶれる人は各セグメントで少なからずいるはず。
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格差社会、階級社会をさんざん議論されてきたが
非大卒の若い男性に焦点を当てたことが
ユニーク。
たしかに、日本の施策は大卒前提に
偏っていると思った。
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レッグスにカテゴライズされる人たちの,努力によって未来を改善できるという思いが日本を支えているのかも。
レッグス&非レッグスも,互いを認め合って多様な社会を!
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日本の社会構造に関わる最近の統計調査を、きっちりした手法で分析し、そこから得られる示唆を一般読者にもわかりやすい譬えで示す。特に、大卒/非大卒の「分断」が最も大きな裂け目であり、今後の政策設計においてきめ細かな検討を要すとのこと。
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日経での吉川さんのコラムより興味を持ち、この本にたどり着きました。
まず、自己紹介の話がなるほどなと思いました。
確かに、何かしらの場で自己紹介をする時、何を話そうかと迷います。趣味といっても今と少し前では違うし、仲よくしている集団も色々で、なにか出身などの固定的なものを話すとそれはそれでありきたりで...みたいな感じで。
このアイデンティティが流動的であるということは現代を、特に若者の現状をよく表している語であると思いました。若者はアイデンティディが「無い」のではなく、誇張するとすれば「ありすぎる」のではないかなと思いました。
再帰的近代は、非○○が増えていく時代ということから、たしかに「否定+○○」の単語は単語でしかないが、そのような単語が生まれてくるのは、それ以前にあった概念では表現できないものであったということの証明でもあるんだなと。そして逆に、「否定+○○」を単なる単語として見て、特にその本流を直接は知らない人達は、その「否定」に含まれる意味を理解せずにその単語を理解することになると。この「否定+○○」という概念を生活の中で少し気にしてみたいと思いました。
また全体を通して、日本で起こっている分断を、8つに分類し主に学歴の分断という視点で見ていく考え方は面白いと思いました。社会学での「主体性」と呼ばれる視点からの「ソフト」の面からの考察を見ると、若年非大卒男性(女性も含む)が、文字通り「サイレントマジョリティー」であると感じました。このような状況は、国際的な事柄や、政治に無関心な若者が多いということであり、今世界で起こっているナショナリズムや保護主義、自国第一主義のような考え方が支持されることにも繋がっているのかなとも考え、現在のフランスやイタリアなどでこの調査を行うとどのような結果になるのかに非常に興味を持ちました。かなり興味を持ちました。
政策を考えるにしても、どのセグメントの人達をターゲットにして解決を目指していくのかという細かいところまで考えていく必要があることも理解しましたし、
学歴は、生まれなどといった固定的なものではなく、自分の力で掴み取れる地位としての意味合いが強いと自分自身は考えていたので、そうではない部分も多いということが認識でき、いい学びができたと感じています。
学歴が認識され始めたのはいつの時代からなのか(日本ではなく、アメリカやイギリスなどで)についても興味を持ち、さらにその観念を広めようとした人は、本来はどのような意図だったのか、つまり、その人(人達)は生まれや人種的に元々地位が低く、その状態を改善する一つの方法としてより学歴を強調するような社会を目指したのか、それとも、たまたまこのような社会になっていったのか、また、逆に、比較的生活に余裕があるような人達が、その社会的地位をより良いものとするための権威づけの一つとして強調していったのか、はたまた、純粋に人類の学術的な発展を求めた末にこのようになったのかなど、歴史から見えてくることもあるのかなとおもったりしました。
そして、若年非大卒の人たちにあま��目が向けられていない社会だからこそ、今後そこに目を向けたサービスなどが発展していく可能性は大いにあると思いました。
文化の再生産についての本も読みたいです。確かブルデューがそんなことを言ってた気がしますね...そしてマルクス主義についてももっと深く知りたいと思いました。よかったです
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「8人のプロフィール」というところを見ると、本書のほとんどの内容が網羅されています。そこから後ろは対策、ということになります。経済的社会的に不安定な非大卒若者というと、自ら脱落したというイメージがあります。が、そうではなく、大卒と違うコースを歩んだ人たちである。女性たちは多産で人口を支えているし、男性たちは地方を支えている。余裕ある大卒の40-50代が(私です…)が、中心となって彼らを支えるべき。
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2015年の大規模学術社会調査結果分析に基づく。団塊世代退出後に現役となる20-60歳は、40歳以下・以上、男女、大卒・非大卒の8分で、異なるプロフィールを持つ。特に若年非大卒男性は、どの指標からも勝ち星がない。地方や社会のボトムの支え手となる彼らを政策でも支えるべき。
是非政策に活かしてほしい。そのための調査や分析なのだから。
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めちゃくちゃ面白かった!!新書は久しぶりに読んだけど、わかりやすい。社会学の本でこんなにスルスル読めた本はあんまりない。最新のデータもたくさん使われててよかった。
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日本社会の実態が大学進学と居住場所でここまで説明されるとは思わなかった。
これまで私は日本における大学進学は本人の能力・意思・家庭状況によって決定されているという認識に留まっていた。しかし本書を読むと社会のあり方がかなりの程度影響しているということが分かる。
こうした大規模な社会調査データから導かれる事実に基づいた政策を期待したい。
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日頃あまり意識していないが、確かに非大卒の方と日常話す機会がないなと思いました。両親や妻も大卒だし。近所の祭りや運動会などしかありません。気づくことなく分離されているのは怖いと思いました。
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大卒・非大卒、年齢できれいに区切れるところが怖いと感じた。自身の視点は各自「偏り」があることに注意したい。
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前半、時代ごとに、その時代を構成していた若者層、壮年層がどのような時代を生きてきた人たちだったのかを並べたチャートがあったが、その切り口はあまり見たことがなく面白かった。
ジェンダーの観点も、男女かおたがい既得権益を守りながら相手の領域とされてきたところに入ろうとしている、という分析も面白かった。
その後は、学歴✖️年代✖️男女の8つの区分で比較されていくが、確かに日本社会の半分を占める非大卒人口に対して、さまざまな社会的支援は届いていないように思う。施策を考える方も大卒メンバーが多いからか?