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父親を殺害したとして逮捕された女子大生の環奈。臨床心理士の由紀との面会のなかで少しずつ環奈の家族の形が見えてくる。理解されない、わかってほしい、伝えたい、でも言えない。自分を守るため、安心するための行動。責任はどこに、誰にあるのか。目を向ける場所、心を向ける場所。そこから目も心も逸らした罪。家族が全てではないけれど大部分を占める関係。守られている、理解してもらえてると周りは思ってもらう必要がある。そのことがどれだけ大切で大きなことか。事件の真実、環奈の真実。本当のことを語りだす環奈の姿がとても印象的。
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「苦しみも悲しみも拒絶も自分の意思も、ずっと、口にしてはいけないものだったから」
この苦痛は最初は自分でも気づかないしわからないものだけれど、静かに自分の心を蝕んでいくものだと思う。とてもとても怖いものだと思う。自分の言葉を持たなくなってしまったことに気づいた時、怒りを持った主人公に希望を抱いた。
裁判のシーンは小説よりも映画の方がとても心を打たれた。自己開示をする勇気、受け止めてくれる、聞いてくれることのありがたさ、すごく伝わってきた。
カウンセリングのこともリアルでよかったと思う。たくさんの人に読んでほしいと思う小説だった。
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まず、会話文の前に読点をつけない手法は意図的にやっているのかと聞きたいです。
文章のリズムが上手く掴めず、読み難いことこの上なかったので。
「父殺し」というテーマは数々の古典名作で扱われており、恐らくギリシア神話の『オイディプス王』の頃から
父=権力や権威にあたるものと対峙し、それを超越することで自己の変革に繋げていくという文学的意味を孕んできたものと理解しています。
本作もアナウンサー志望の環菜による「父殺し」を起点に話が進んでいきます。
当然先に挙げたようなテーマを展開していくのだろうと思っていたのですが、あろうことか途中で「父殺し」を掘り下げていくことを放棄し、
「実は両親からの虐待によるトラウマを遠因として起こった事故だったのでした」
というオチに持っていくのはいかがなものかと思いました。
これには読んでいて脱力しました。
また、裁判の描写、環菜の母親の描写についても、作者の作為ばかりが目に付いて、リアリティを感じることができませんでした。
世の中には本作で描かれているような辛い思いをされた方が実際にいらっしゃるのは承知しており、本作は被害者に対する慈愛と、加害者に対する告発をしているという点で社会的な意味はあるのでしょうが、それを差し引いても、私にとっては必要のない作品だったのでした。
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面白かった、とは言いづらい内容の話だったけど…虐待ということについて、あらためて考えさせられる話。重かったけど、あまり重さを感じさせずに読める。淡々とした書き方だったからかも。
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一つの事件を通してさまざまな人が何かに向き合っていくのに感動しました。
エンタメ性もあるにはあるのですが、ミステリみたいにたいそうな種明かしを望むような作品ではありません。
人の再生というと、大袈裟かもしれませんが、人が生まれ変わるための過程が描かれた作品でした。
父親を殺した女性との話を進める中で、ちょっとずつ違和感を拾っていって、対象の人物に話を聞きにいく、ミステリ的な要素もあってノンストップで読むことができました。
女性が男性から受ける性的な目、それがいかに女性の心を怯ませて心を傷つけていくのか。
性的虐待を取り扱ってはいるのですが、もっとエゲツない性的犯罪を取り扱う小説がごまんとあるので、この小説で言われる虐待の内容にピンと来なかったり、「その程度で?」と思ったり、「断ればいいじゃない」という感想を持つ読み手もいるのかもしれない。
性的なトラウマって、何も強姦されたとかばかりではなく、性的な対象として扱われたことも、女性の心に深い傷を負わせる。
なかなか異常な状況を扱ってはいますが、過度な性的描写はほとんどなく、オブラートに包まれています。
でも、この話に登場する人たちは、自分自身を普通だと思っているし、むしろ親切だとも思っています。
そういった人たちが与えるトラウマだと考えると、とても生々しくもありました。
微妙な線での性的なトラウマを取り上げていると思います。
父親を殺したという事件だけではなく、あくまで主人公は、心療内科の女性。
彼女と義理の弟との関係性も含みがあり見逃せません。
自分自身の言葉を取り戻すこと、自分の本当の望みに気づくこと、相手に言葉にして伝えること、不思議と希望に満ちたラストで、読み終えたときに清々しい気分になれました。
題名のファーストラヴってどういうことなんだろう、そう考えてみたんですが、ラブって、恋人だけじゃなくて、いろんな愛があるので、家族や心を許せる人への愛なのかなって思いました。
歪んだ形の愛も取り上げた作品ですが、真実を見据えて向き合おうとする女性の強さに触れることのできる作品です。
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うーん。いかにも映画化されそうな話。
悪くはないけど、わたしには少し刺激が足りない。
最後にもう一つ落ちが欲しかった。
環菜が殺意を持って父を殺していた、とか。
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めちゃめちゃ良かった〜〜〜〜環菜ちゃんの人生は、環菜ちゃんに与えられなかった愛は悲しいけど、主人公の旦那さんとその弟との関わりに癒されます。人と人とが関わりながら、時には傷つけ合いながら世界は回ってゆくんだなぁと思います
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一人の女子大生が父親を殺害した事件から導き出される
歪んだ親子関係。いわゆる毒親で、主人公のカウンセラーも毒親の見えざる虐待に会い心に傷を負っている。
虐待された人々を真摯に向き合い事件を解決していく過程
に主人公も心が救われていく。
包み込む様な優しい夫は、正に真の理解者!
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芸術家の父を殺した娘、環菜。
その半生を臨床心理士の私、由紀がまとめる。
写真家の真壁我門と弟の弁護士の庵野迦葉。
ピリピリとした推理小説。直木賞。
それぞれのFIRST LOVE。その相手は自分の親なのかもしれない。
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直木賞にノミネートされてすぐに購入。ハードカバーを買うのは躊躇するのですが、好きな作家さんであり、直木賞ノミネートということもあれば、買って後悔ないだろうと。
やっと獲った!って私まで嬉しくなってしまいました。
ストーリーでぐいぐい読ませてくれる作品でした。
父親を殺したという就活中の女子大生について、臨床心理士の立場から本を書いて欲しいとの依頼された主人公が、被告人や関係する人々とのやりとりを通して、事件の真相に迫っていく。それと同時に、主人公が抱えているもの(ざっくり言っちゃうと闇が深い)についても明らかになっていく。
ずーっと好きな作家さんだけど、相変わらず女性の危うさや脆さを書くのが本当にうまい。乱暴に言っちゃえばそれってメンヘラってやつじゃん?って一蹴する人もいるだろうけど、私が言葉にできない何かをこんなにうまく書ける作家はいない。かくいう私がメンヘラなのかと言うと、否定はできないけど、そういう簡単な言葉で済まされない思いを代わりに表現してくれてるって感じるから好きなのかな。救われてる的な。
主人公と、旦那と弟との関係が最後にきれいな形で締めくくられてこれもまた救われた感がありました。
とにかく直木賞受賞おめでとうございます。
これからも作品楽しみにしています。
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内容紹介
◆第159回直木賞受賞作◆
夏の日の夕方、多摩川沿いを血まみれで歩いていた女子大生・聖山環菜が逮捕された。
彼女は父親の勤務先である美術学校に立ち寄り、あらかじめ購入していた包丁で父親を刺殺した。
環菜は就職活動の最中で、その面接の帰りに凶行に及んだのだった。
環菜の美貌も相まって、この事件はマスコミで大きく取り上げられた。
なぜ彼女は父親を殺さなければならなかったのか?
臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々と面会を重ねることになる。
そこから浮かび上がってくる、環菜の過去とは?
「家族」という名の迷宮を描く長編小説。
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誰が本当の事を言っているのかが最後の最後まで分からなく、出てきた真実には色々と考えさせられました。
最初から重く息苦しい内容が続きますが、最後の最後で救いがあり本当に良かったです。
ミステリーというよりヒューマンドラマな作品です。
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直木賞受賞作ということで手に取りました。
環菜の過去を遡るたびに父親との奇妙な関係、母親との確執、
付き合っていた男性など様々な周辺に人々が浮かび合うたびに
普通の人ではないと思わされると同時に壮絶とは一言では
言い尽くせない過去がありました。
こんな理不尽な過去があったと思うと性格や人格までが
自分とは違う方向に捻じ曲げられてしまうと思ってしまいました。
よくここまで一人で生きてきたなとある意味関心をしてしまいました。
由紀と我聞さんの夫婦は素敵な夫婦だと思いますが、
彼女の過去に迦葉との関係も意味深なことがあって、
それも平行して楽しめて読めました。
環菜にとってファーストラヴは両親の愛情なのか、
それとも周囲からの愛情なのか。
どちらの愛情が人生にとって重要になってくるのか、
改めて家族の絆と愛情を考えさせられました。
そして文中にあったように
傷ついた者たちがいつか幸福になれるように。
みんなそれぞれ抱えていたしがらみから
解放されるようにと思ってしまいました。
作品の前半部分を読むと恋愛小説なのかと思ってしまいますが、
途中からミステリー小説のようにスリリングになっていくのでとても読みやすく興味深い作品でした。
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直木賞、芥川賞はガッカリした作品が多かったので
あまり読んでなかったのですが、久々の感動五つ星です。
でももう少し減刑されても良かったのでは。
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前半は、被疑者の心の闇に迫りながらも、一方で同じように心の傷を持っている主人公と義理の弟である弁護人との過去をちらつかせることに、少女漫画的なあざとさを感じて入り込めなかった。公判からラストまでの流れと読後感は良かった。