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紙の本
井上ひさし全著作レヴュー44
2011/02/24 20:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:稲葉 芳明 - この投稿者のレビュー一覧を見る
初出は、「小説現代」1977年1月号~5月号および1980年2・3月号。
喜劇作家として井上ひさしの最初かつ最大の修養場となった浅草興行界を舞台にした、6篇から成る連作短編集。短編集『イサムよりよろしく』や多くのエッセイで描いてきた如く、「浅草」への恩と感謝と思慕と回顧と一抹の苦い思いが、本短編集からも十分伝わってくる。
『イサムよりよろしく』は完全なフィクション、諸エッセイは相当部分事実に基づいた作品、本作はその二つの中間をいく「物語」である。一見ノンフィクションのように見せかけてはいるが、恐らく実際に作者が出遭った/見聞きした人物・出来事を複数まとめあげで創作したものと思われる。ただ、収録作品『トンカチの親方』で自ら言及しているように、総じてこの短編集は「陰気に仕上がってい」て、「からっとしたところがない」。「言語遊戯を貫き通した末、あるいはそのために、自滅してしまった無名の喜劇役者の行き方を冷静に書きとめる」のを主眼としていると作者は述べているが、作品執筆時(1970年代後半)、言語遊戯に徹して作品を作ることへの迷いや怖れや逡巡が、この短編群にも影を落としているかのようだ。つまり、「からっとしたところがない」のは、浅草がかつての賑やかさと輝きを失ったことだけが理由ではなく、井上ひさしの創作姿勢にブレが出てきたこともあるようだ。
とは言え、作品自体はいつものようにウェルメイド。「読み物」としての質は決して落ちていないし、虚虚実実のエピソードが読者をたっぷり楽しませてくれる。
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