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★3つは、読み物としての面白さでの評価。
様々な切り口での西郷隆盛の評価を一冊にまとめた本という意味でなら、★は5つでもいいと思う。
西郷隆盛という人は、結局わからない。というより、普通の人では絶対わからないんだと思う。
低い山の山頂から高い山を見上げても、高いということはわかっても、その山頂は窺い知れない。そういうことなんだろう。
そもそも、普通の人であっても、人というのはなかなかわからないものだ。
ましてや、あんな時代をまとめあげた西郷隆盛だもん。平和で豊かな暮らしに浸りきった今の日本人に、その腹の内を理解しろという方が無理だ。
何を思ったのか、今頃、西郷隆盛関連の本が読みたくなったのは、佐藤賢一の『ラ・ミッション』を読み始めて。
最初は面白く読んでいたのだけれど、あまりに男気に溢れる理想的な仲間同士として描かれる主人公と旧幕府の人たちに、だんだんシラケてきちゃって(^^ゞ
とはいえ、頭の中が幕末・維新モードになっていたので、なんか面白そうな本ないかなーと探していたら。
何年か前にドラマでやってた西郷隆盛関連本の古本が安く売っていた、というわけ。
そういえば、アマゾンを見ていて思ったんだけど、その『ラ・ミッション』もそうだけど、最近は、明治政府側より、旧幕府側寄りの本が多く出ているような気がする。
ま、男としては、反乱や反旗という言葉に、無性にロマンを感じるわけで、旧幕府側や奥羽列藩同盟の人を主人公にした物語が多く出るのはうなずける。
ただ、明治維新批判の本とかが数冊あったりで、まぁそれはそれとしてわからなくはないんだけど、でも、明治維新があればこそ、今の豊かな日本があるわけだ。
そりゃ、明治維新が全部正しかったなんてことあるわけないし、それこそ間違いや失敗がいっぱいあったのは確かだろう。
でも、江戸時代、江戸に住む庶民の多くは長屋に住んでいたのだ。
詳しくは知らないが、確か、4畳半よりちょっと大きいくらいの畳敷きの部屋に土間がついていて、トイレ(厠ねw)は共同。
そんな住まいが、江戸時代の庶民の標準だったわけだ。
まー、明治になったからって、そんな庶民の暮らしが大きく変わったわけではないんだろうが。
それでも、大正になる頃には、大正モダンだのモボ・モガなんて言葉が流行るわけだから、少しずつでも生活は向上していったんだと思う。
あの時、明治新政府でなく、そのまま江戸幕府が近代国家を担っていたら、大正になる頃に庶民の暮らしはそんな風になっていただろうか?
たぶん、江戸時代のように、武家という特権階級があって、庶民は相変わらず長屋暮らしだったんじゃないだろうか?
もちろん、そんな国だったら、国としては栄えないから。自ら国を滅ぼしてしまうような、あんな愚かなことは出来なかっただろう。
でも、その代わり、おそらく21世紀の今頃にやっと中産階級が育ってきたみたいな、今の新興国みたいな暮らしでしかなかっただろう。
というかー、明治維新というのは、そもそも欧米列強の植民地支配の恐怖から起きたことなわけで。
明治維新が���されず、富国強兵策がなかったら、ロシアに侵略されていた可能性があるわけだ。
それがなかったとしても、その後の自由主義と共産主義の戦争の最前線になって、その結果、国土が分断されて。一方の国は今も北朝鮮のような人たちのような暮らしをしていたかもしれないわけだ。
明治維新というと、大久保利通が何か批判される傾向があるが、批判をものとせず大久保利通(やその後継者たち)がガーっと舗装道路をひくように時代を変えていったことが、今の私たちの豊かな暮らしにつながっているわけだ。
確かに、そこに多くの間違いや失敗、犠牲があったのは間違いない。
だからって、現代において明治維新を批判する人たちが、今の日本のまがりなりにも平和で豊かな暮らしを踏まえた上でそれを批判しているとは到底思えない。