紙の本
ほろ苦い現実を映す
2020/03/13 11:41
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
現実から目を背けている若者たちに痛烈な批判を込めた、表題作が印象的です。見たくもないものをありありと見せてしまう、著者の手腕に1本取られました。
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中村文則さんの解説でゴランノスポンの由来を始めて知り、妙に納得し、町田康氏の思慮深い設定に只々感心させられて思わず感嘆の溜息が読了後でてしまった。 現実と夢の狭間で誤魔化しなが毎日を過ごしている。そうでないとやっていられないストレスがある。趣味に没頭したり、旅に出たりして現実逃避する。そして人は自分のやっている事は間違いなく、自分の中でありえない真実は受け入れ難いという傾向があり、ある瞬間それがひっくり返る時に感じる恐怖と滑稽さや人間の傲慢さや信心深さが招く憐れな姿が描かれている。所々、いや随所に笑のツボがあるが、笑ながらゾッとするのは町田康氏ならではだと思う。
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短編集。
全くわけのわからない話もいくてかあったが、人間の本性をありありと表現した作品だと感じた。
登場人物の思考を独り言のようなタッチで描いているところが特に面白く感じて、共感する箇所も多かった。
結局私も上辺だけ繕ったお腹の中は真っ黒な人間なのだ、みな誰しもがそうなのだ、と言われているような気がした。
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『目を覚ましたらブラインドから縞の光が差しこんでいた。
素晴らしいことだと思う。
太陽が僕たちに降り注いで生命が育つ。大地が潤う。そんななかで自然の一部として僕らは生きているんだ。そのこと自体がとてもありがたい。感謝。誰へ? すべてにだよ。すべてに感謝して生きていく。空に、海に、きみに、自分に。』
『それぞれがそれぞれとしてそこにある。それこそが素晴らしい。空が美しい。感謝。』
『それぞれがそれぞれであること。
それが一番大事だと思う。
それぞれが大事なのさ。』
『けど同じことなんだよ。だってこんなに心がひとつになってるじゃないか。同じ、同じなんだよ。それぞれがそれぞれにみな同じひとつの音楽を聴いてる。あれ? ということはそれぞれの魂じゃないってこと?』
『すべてとすべてとすべてに感謝。自分のすごさを常に忘れないこと。そして感謝すること。』
『僕らはポジティヴな話しかしない。ネガティヴなことをいう奴はひとりもおらないのだ。世界中が僕らみたいな奴だったら戦争なんか一瞬でなくなる。感謝。』
『最高ってなんて最高なんだろう。僕らはいつも最高だ。』
『だから僕なんかは彼らを見て悲しくなる必要は毛頭なく、むしろ生きる勇気みたいなものを貰っているはずなんだ。ホームレス、最高。そして。感謝。』
『本日がデッドということで、そのデッドを超えてデザインが来ないということはどういうことかというと、もしできなかった場合、関係者全員(勿来山先生と事務所の人を除く)が切腹して死ななければならないということである。優秀な介錯人がいればそうでもないが、そうでない場合、切腹というものは苦しいもので、そしていまは介錯ができる人なんてそういないから、切腹は間違いなく苦しいもので、首つりじゃ駄目ですか? といいたいところである』
『ふっふーん、この繋がりはまったく意味が分からないが、よほど深い意味があるのだろう、と勝手に深読みしてくれる可能性がゼロとは言いきれない雰囲気が醸成されない可能性がないこともないこともない。』
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初めて町田康を読んだ。すごい文章。こういう文章力も文章力なんだと認識。ただ伝わるものと伝わらないものの差が激しく、そこはついて来いと言わんばかり。三つめの「一般の魔力」が一番わかりやすくもあり、面白かった。
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町田康は、たしか「夫婦茶碗」と猫のエッセーを読んだことがあるのだけれど、どうもついていけなくて挫折した覚えが。にもかかわらず、今回手に取ったのは、ひとえにタイトルに惹かれたから。
しかし、やっぱり肌に合わなかった。最初の二編くらいまでは、ニンマリさせられたりしながら、まあ楽しく読んだのだけれど、後半はもう辛くなってきた。
溢れ出てくる言葉のセンスは分かるのだが、根本を貫いている、“ひたすらいい加減”な感じが、ダメなのかな…。
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長い電車旅のお供にぱらぱらめくっていた本
満員電車の中で読むと、うっとする車内がさらにうっとする気がした。
それが作者の思惑通りである気もするけど、「ハッピー!もう一度、読み直そう!」という気は起こらない本であった。
世の中の軽薄なところ、ややもするとお下品なところが詰め込まれている。
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町田康 短編集 世にも奇妙な物語もあり 主人公にむかついたり 笑ったり。 源氏物語の末摘花知ってたらもっとおもしろいんだろうなぁ。
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痛快!現代をひたすら皮肉る。最新から最後までにやにやして、たまに声出して笑ってしまう短編集。
「末摘花」は源氏物語のアンソロジーにも収録されていて、多分3回目ぐらいなんだけど、毎回同じ場所で笑う。一番気に入ったのは「尻の泉」。町田康特有のリズムで綴られるいかれた意識の流れ。くだらなさ。尻から泉が出る体質のせいでシャブ中にまで落ち込むどうしようもない主人公の悲しさ。各作品オチが秀逸でした。
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どれもこれも思い当たる節のあるストーリーで心が痛い。「表層的なハッピー感に拘泥する」ゴランノスポンは就活でよく聞く「仲間に感謝」の行にインスパイアされてる?しかし表層ハッピーは続けられない。一点の綻びから本性があらわになる。
一般の魔力も思い当たる節があってつらい。自分を棚に上げて他人を批判、自分に非があることはすぐ忘れる。自分の嫌な気分を相手に察っしさせたい。この感情は普通なこと?
先生との旅は相手の能力を過大に評価して身動きが取れなくなってしまう物語。自分の中の普通と相手の普通が違うと思い込んでいることが元凶である。そこに至るまでのなんだかんだ理由をつけて断りのメールという嫌なことを先延ばしにする姿勢も私にそっくり。
というか全体的に見に覚えがありすぎてつらい。見られてたのかと思うほどにしっくりきてつらい。
ゴランノスポン(ご覧のスポンサーでお送りしました)というタイトルで幻想から醒める瞬間を表現した物語群らしい。醒める前はあるあると思うことも多いが、醒めた後は完全に町田康の想像。綺麗にまとまりすぎているという感想もあったが、やっぱり結論があったほうがすっきりする。
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「楠木正成」はよくわかりませんでした。ごめんなさい。
「一般の魔力」が印象的。自分のものさしが絶対だと信じてやまない人、恐ろしいな。
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町田康の小説は、その他大勢の群衆に埋もれて生きるひとの決して尊くない哀しみが、ぱっと見、明らかに哀しいのに読めば読むほど哀しみに思えず、哀しみであることを忘れさせる。
ページを閉じたあと、もやもやとした形で「哀し…」と脳内を哀しみのもやもやで薄く埋め尽くす、その清々しい脱力というか諦念が堪らない。
そして、でも結局はフィクションなんだよなと、心置きなく離れられる軽さ。
丁度よい悲壮。
短編小説だからこその軽さであって、長編小説では、拭っても拭いきれない後味が残る。
それはそれで、またいいんだけれど。
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源氏物語や楠木正成といった歴史物・古典をの町田調に軽快に訳してあったりといった短篇が幾つか。
先生との旅、ゴランノスポン、尻の泉…いちいち笑わされる。最期がすう、と消えるように終わるのも良い。
町田節を真似て文章を書いてみても、特に古典の町田訳を読んで切に感じるが、古語・口語体・カタカナの多い若者ことば・擬音の入り乱れたそれこそDJスタイル、次々に繰り出されることばのミクスチャーにこりゃ敵わん、とただただ感服する。
中村文則の解説に「ゴランノスポン」は「ご覧のスポンサーの…」の途中だと書いてあって、成る程納得した。どうやら単行本では帯にそのようなことが書いてあったそうだが。
何故表紙が奈良美智なのかも最早笑えてくる。
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著者の小説、初読み。猫エッセイの文体そのままに、不条理な世界の短編小説が7編収録されていた。表題作「ゴランノスポン」が「ご覧のスポンサーの……」からという解説にショックを受けた。カバーの奈良美智の絵から「ゴランノスノポン」という変な単語が頭の中に何度も出てきてしまった。難しい単語が、ルビもなしにポンポンでてきて、これまた大変だったな。昔読んだ筒井康隆を思い出す。
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短篇集。面白いのとパッとしないのとあるんだけどその辺は好き嫌い次第かな。独特の文体が活きてる作品は普通の文体の作品にはない面白さがある。「一般の魔力」とその前後の作品が面白かった。一番最初のは個人的にはぱっとせず。読み進むと面白い作品に遭遇。文体の珍妙さに依るところが大きいのでそのへんを楽しめるかどうかが鍵かな。