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変わったタイトルの小説だな、人を食ったような内容なのかな、と思いながらページをめくると、まさかタイトル通りの話でした。
舞台は1942年のレニングラード。まさにナチスの猛攻を受け長い長い包囲戦の最中。
女子供の多くは疎開し、市民が自衛組織として駆り出され、物資は乏しく闇市が幅を利かせるようなそんな時期。
主人公の少年はたまたま見かけたドイツ兵の死骸から酒とナイフを盗んでいたところを憲兵につかまり、略奪罪で刑務所にぶち込まれる。
そのまま銃殺、かと思いきやなぜか解放され、秘密警察の大佐から一つの密命を受ける。
・・・来週の金曜日までに、卵を1ダース調達すること。
そしてともに刑務所にぶち込まれていた、陽気でちょっとズレた脱走兵とコンビを組んで、絶望的物資不足の中、戦場を横断して卵を探す旅に出るのである。
リアルな戦争描写と、奇妙なミッション。
むっつりと少しひねくれたユダヤ人少年と、戦時中にもかかわらず調子っぱずれに陽気なロシア人脱走兵との、ユーモラスで時にペーソスのきいた掛け合い。
このギャップがうまくかみ合い、明らかに奇妙でドラマティックすぎる筋書きの中にしっかり地に足ついたリアリティをもたせて、最後まで読み手を引き込んで離さない。
話としては冒険譚の類で、飛びぬけた目新しさもないし激しい感動もない。
それでも小説世界にどっぷり没入できる、良質なエンターテインメント。
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ちょうど便秘に悩んでてコーリャの言うことがいちいちもっともだと思った。グロい描写もコーリャの軽快さに救われて、ありがとうコーリャ。
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前半冗長に感じ、頁がなかなか進まず読むのに何日もかかったが、後半街を出たあたりからはいっきにラストまで読んでしまった。残酷なファンタジーではあるが、読後感は悪くなかった。ハッピーエンド好きとしては、冒頭に続いている2人の幸せな生活はお約束どおりで満足だが、見た目のかっこ良さとやっている事やその結果のかっこ悪さが魅力でもあり悲しいコーリャとの別れが少しだけ辛かった。一見何のこともないようなプロローグがラストになってがぜん輝いてくる。これが無かったら物語の面白さは半減してしまっただろう。重要な場面のモデルとしてインスピレーションをもらった 実在の祖父母(?)アマンダ(ヴィカ)とフランキー(レフ)に贈るということかな。
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第二次大戦、ドイツによるレニングラード包囲戦中のロシアの話。ノンフィクションの中に織り込まれたフィクション。次々凄惨な状況が描かれる中、主人公二人がまったく少年らしい下ネタの冗談を展開しつつ、過酷な飢えと寒さと恐怖の「卵探し」任務…泣いたら良いのか笑えば良いのかちっともわからないが、こんな状況もあんな恐怖も存在していいものじゃないことははっきりわかった。主人公たちの行く手に多少のご都合主義展開が与えられていてさえ理不尽に感じるんだから、つらい…。読んで良かった。
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コーリャにアル中の友達の幻影を見た。幻影は年月と共に美しくハッキリと違う形で、俺の中の本物になるのだ。
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邦題は暗喩なのだろうと漠然と思っていた。だが冒頭を読み進めた段階で、捻りも無く物語をそのままに表したものだと判る。日常から卵が消えた街。つまりは人間社会が存続するために不可欠な家畜などの生き物が失われた世界である。1942年、ナチス・ドイツによって包囲されたレニングラード(ピーテル)では、空襲と飢餓によって市民100万人近くが死亡したとされている。本作には、その地獄の中でこそ一瞬の輝きを放つ絶望へのアンチテーゼが描かれている。
補給を絶たれ配給も削減された極限的状況下で、下層階級の人々は餓死寸前まで追い詰められ、非人間的所業が横行する。17歳の少年レフは、死亡したドイツ兵士からナイフを盗んだところを捕まるが、軍の大佐から放免の条件として「卵1ダース」を調達することを命じられる。その使い道とは、娘の結婚式でケーキの材料にしたいという理不尽極まりないなものだった。卵探しの相棒となるのは、時同じくして脱走兵として捕らえられた青年コーリャ。如何にもユダヤ人的な容貌のレフは、金髪碧眼の陽気な美男子であるコーリャに対して劣等感を抱くが、何事にも屈せず道を切り拓いていくその姿勢に触れるうち精神的な成長を遂げ、二人は固い友情で結ばれていく。
戦争がもたらす生々しい狂気を、敢えてシニカルな展開に潜り込ませることで、その愚劣と残虐性が冷徹に抉り出されていく。この世の地獄巡りの果てに手にした「卵」が、最終的にどんな意味を持つかのかは、読者一人一人の思いに委ねられている。
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物語が持つ力を感じさせてくれる小説だ。
ナチスドイツに包囲され、極端に食料が無くなったレニングラードでは、屍はもちろん、生きている者まで殺して食肉として喰らうような状況にある。
秘密警察の大佐から、娘の結婚式に出すケーキのための卵1ダースを調達する命令を受け、探しに出かける2人組。少々荒唐無稽な設定だが、物語の中にぐいぐい引き込まれる。一人はタイトルにもある、主人公である現在の”祖父”。もう一人は”祖父”と同房に収監されていた陽気な脱走兵。”祖父”の戦争記であり、青春記でもある。
ナチスドイツが支配的な戦線を、卵を求め2人は様々な戦場を歩き、パルチザンの一人の少女と出会い、恋心を抱き、さらに卵探しは続く。
21章の、収容所での少女との時間はちょっと切なく、大好きなシーン。
無事卵を調達し、終戦を迎えた主人公のもとに現れた少女。最後の一行を読み終えると、すぐに小説の冒頭を読み返えさずにはいられない。
第2次世界大戦のロシア戦線で、それぞれの置かれた悲惨な状況で懸命に生きる人々を描きながら、最後は映画のワンシーンのような台詞を残し、人生の醍醐味や暖かいものを感じさせてくれ、生き長らえなければならないというメッセージも感じさせられました。
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とても良かったです。
第二次大戦下のドイツとロシアが舞台なので、暗く悲しい話ではあるのですが、物語としてとても良かった。
訳者あとがきで改めて思ったのですが、このお話は1週間の出来事だったんですね。
戦争は、結局、弱者が悲惨な思いをするということを改めて認識するためにも、多くの方に読んで欲しいと思いました。
冒頭の祖母の説明から推し量ると、あの女性とは違う人なのかな…。
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どういうわけか、タイトルだけ見て遺伝子操作に絡むSFだと勝手に思い込んでいて、数ページ読んでビックリ!全く違うお話みたい。
ただお話し自体はストレートで分かりやすく、類型的ではあるが楽しめます。
もっともらしく書けば戦争の悲惨さやら、人間の業の深さやらとシリアスなことも書けると思うが、レフとコーリャとヴィカの個性満載3人組の青春ロードノベルとして正に一気読みの楽しさでした。
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ちびででか鼻、少しも見栄えはしないがチェスの腕は抜群のユダヤ人の少年レフと、党の宣伝ポスターから抜け出してきたような美青年にして口八丁のロシア人コーリャ。対象的な2人をつなぐものは、ドイツ軍に包囲され餓死者が続出しているなかで軍のお偉いさんのために卵を持ち帰るという不条理な任務と、文学への愛だ。
著者の生き生きした語り口によって、読む者は、まるで対独戦争のさなかのロシアに放りこまれたような気分を味わうことになる。戦争のすさまじい悲惨さと不条理に翻弄されながら、そのなかでも人生への愛を捨てず活路を見出そうとするレフと冒険をともにし、コーリャやヴィカを心から愛さずにはいられなくなるだろう。涙したあとににやりとさせるラストも見事。
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2015年9月20日に開催された第1回ビブリオバトル全国大会inいこまで発表された本です。予選A会場チャンプ本!
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いや、面白かった。
ナチ包囲下の飢餓の街で1ダースの卵の調達を命じられるという夢想的な設定。しかし、その探索途中で出会う戦争の断片は極めてリアルで残酷。その中での主人公レフと相方コーリャの掛け合いは妙にユーモラス。そうした相反する要素が見事に混じり合わせた作品です。
そしてラスト。
戦争の無意味さと、生きる事の希望を見事に描き出し、非常に気持ちの良い読後感です。
著者のベニオフさんは、むしろ映画の脚本を中心に活動しているようですが、そのせいか場面場面が非常に視覚的で、そのまま映画になりそうです(もっとも残酷過ぎて映せないシーンもありますが)。
『25時』も良い作品でしたし、もう少し小説の方にも力を入れて頂きたいものです。
ちなみに原題は“City of thieves”。直訳すれば「盗人の街」でしょうか。それを『卵をめぐる祖父の戦争』としたのも上手いと思います。
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第二次大戦中の1942年、ナチスドイツに包囲され、空襲と飢餓に苦しむレニングラード(ピーテル)が舞台。
ロシアが舞台で、そこにドイツ軍が絡んでくるとなると
簡単に人が殺されるすさまじく凄惨な状景が容易に想像でき、最後まで読み切れるか不安になる。
実際、途中で、人食い夫婦に襲われたり、爆弾の囮に犬が利用されていたり、ドイツ兵のもとから脱走した少女が鋸で足首を切られたりなど、生々しい狂気にぞっとする壮絶極まる場面が多かったが、
「秘密警察の大佐から密命を受け、た卵を12個探す旅に出る」という冒険物語であるという設定と
主人公のユダヤ少年レフの相棒、「金髪で碧眼の美男子、ロシア人脱走兵コーリャ」がひたすら陽気で下ネタまじりの冗談ばかり言っていたのにレフ同様引っ張ってもらい読破。
昔見た映画「ライフ イズ ビューティフル」を思い出した。
何不自由なく食べられ、快適な家で安心して体を休められる当たり前の日常が、ありがたいことなんだ、何のために生きているのだろうと思い悩むなんて贅沢だと思え、生かされていることに感謝できる。
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卵探しの設定は面白く
期待が膨らんだけれど
好みでなかったかな。
ミステリーとして紹介されてたけど
これミステリーなのかな?
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二人の少年が卵を探す話
タイトルだけで古い本かと勘違いしてました。
卵を探す道中で起こる出来事一つ一つが
印象的なのと、下ネタと悲惨な環境の組み合わせ
奇妙な感覚で読み進めたけど、
キャラクター達も面白くて
読ませる。