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第二次世界大戦中、ナチス包囲下のレニングラードを舞台にした、少年の忘れられない数日間。
戦争という状況下で【卵1ダースを探せ】という冒険をする展開がおもしろいです。
動物も雑草も消え、人肉を食べる者がでてくるほど誰もが餓えている中で、卵1ダースというのはもはや幻の食材。
期間内に見つけられなければ死しかなく、戦いや飢餓が溢れている惨状の中、たった2人の平凡な少年達の道中は危険で残酷。
しかしこの重苦しい状況を、対照的な二人の少年が漫才のような掛け合いで和らげてくれています。
若さゆえに自分の力を試したい、誇示したいとやる気に満ち溢れていると同時に、臆病でコンプレックスを持った17才の等身大の少年であるレフ。
お調子者で自由人、常にしゃべっており内容の大半が下ネタの謎の美青年コーリャ。
コーリャの予測不可能の言動に振り回され、レフがぶつぶつと文句を言っている道中が戦争という状況でありながらおもしろおかしいです。
残酷な状況をユーモアたっぷりに描いているのが、読みやすくもあり深くもあります。
展開は分かりやすく、こういう話になるだろうという王道を行った感じはしますが、決して退屈せずに一気に読めました。
お下品なばかばかしさと、戦時下の緊迫した過酷な状況のギャップが良いです。
ロシアの冷たい空気をすぐそこに感じるような描写も迫力でした。
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タイトルに惹かれた。
対独戦争中のソ連を描いた作品。国民は飢餓に苦しみ、売春・殺人は横行。くわえてカニバリズムまで描かれる。
しかし、作者はこの酸鼻を極めた戦争描写を、軽妙な会話とジョークでくるりと包み込み、ただの戦争小説には終わらせない。この筆力はさすが。
特にコーリャの存在は物語にいい味を出している。女好きで自信過剰でおしゃべりだけど、どこか憎めない愛すべきキャラクターだ。また、そんなコーリャと対照的な17歳の主人公「わし」の心理描写も細やかで感情移入してしまう。
ハラハラドキドキさせるストーリーと愛すべきキャラクターに出会える青春小説。いささか下品な会話に目をつむれば、ぜひ周りの人にお勧めしたい秀作であった。
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だいぶ面白かった。第二次世界大戦中のレニングラードを舞台に繰り広げられるハチャメチャだけど静かで、残酷だけどなんか優しい、本当に不思議な小説。
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「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」作家のデイヴィッドは、祖父レフの戦時中の体験を取材していた。ナチス包囲下のレニングラードに暮らしていた十七歳のレフは、軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令された。饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索を始めることになるが、飢餓のさなか、一体どこに卵が?逆境に抗って逞しく生きる若者達の友情と冒険を描く、傑作長篇(「BOOK」データベースより)
うーん、なんというか、下ネタ大好き小学生が大きくなったような男と、それに振り回されるタイプの男の珍道中、みたくなっている気が・・・。
そーいうタイプの男子を冷たく見ていたクラスメイトの女子的視線で見ると、イマイチ感動もできず。
ラストも読めちゃうしな~。
レニングラード包囲戦を、一風変わった使い方をしている点は面白かったです。
戦争って馬鹿馬鹿しさの極致だよね、というメッセージは伝わりました。
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二人の青年が包囲戦下のレニングラードで一ダースの卵を求める話。といってもすぐに街を出てそこからが本番。戦中の酸鼻する話がこれでもかとでてくる。
コーリャの便秘が何か伏線になってるのかと思ってたけど、そうでもなかったかな。
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饒舌なだけではなく、
大した勇気も持ち合わせてるとしか思えないコーリャのおかげで、
歴史的な事実だけではない世界を感じられました。
戦争の正義や道徳はその立ち位置で変わってしまい、
生と死殺す事と殺される事、
それを一時でも忘れさせてくれるものは
想像力や空想やユーモアなのかもしれないなあ。
戦争の重たい事実を突きつけられてしまうのに、
強引に笑いの世界に連れ戻される、
史実と小さなファンタジーで紡がれた「若者達の友情と冒険」
の素敵な物語でした。
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最初、タイトルを見たときは「なんじゃこりゃ」と思い買いました。結果、買ってよかったと思いました。
厳しい状況の中で飛び交うユーモアな会話が物語を重いだけのものにならず、最後まで苦にならず読めました。
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「卵をめぐる祖父の戦争」
図書館から「リクエストした本が貸し出し可能になりました」と連絡があって借りてきた。だが、小説のタイトルにはうっすら憶えがあるのだが、何でこの小説のことを知ったのか、なんで読みたいと思ったのか、自分がリクエストしたことさえ、さっぱり思い出せない。
最近は殆どノンフィクションしか読んでなくて、小説を読むのは久しぶり。なんせ読もうと思ったきっかけすら思い出せないのだからどうかな、と思ったのだけど、すんなり小説の世界に入っていけた。
小説は「作者」が、「祖父」の17歳だった戦争時の体験を取材し、彼の「特別な1週間」が本人の口から語られる、という形で話は進み、メキシコ湾の眺められる気持ちの良い黄昏のフロリダから一気にの飢餓と極寒が押し寄せる1942年の、ドイツ軍に包囲されたレニングラードへといきなり突き飛ばされる。
正直に言って、次の展開がどうなるのか恐くて、ページを閉じたことが何度かあった。これは、私が(恐がりだというのもあるが)それくらいこの小説の世界にどっぷりだったことを物語っている。恐ろしい場面は腰が引けてしまうれくらいリアル感がある。。
このリアル感は、自意識と身体と歴史、この三つが支えていると思う。客観プロットとキャラクターだけ抽出すれば、あざとい、というか荒唐無稽なところがあると思う。しかしそれを先ほどの三要素のディティールを充満させることによって、その荒唐無稽さを感じさせないで、むしろ一種のリアルさを作り出している、と私は思った。
『が、恐怖心は長いこと姿を消していてはくれなかった。怯えていないときなぞ思い出せないくらいだが、あの夜の恐怖はそれまでになく強かった。あらゆる可能性がわしを怯えさせた。その中には恥の可能性もあった。- 』
反戦の思いが根底にあるという書評も見たが、私は、どちらかというと、戦争という極限状態の中で光り輝く人間のすばらしさだと思う
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マイアミに住む“著者”の祖父の回想録という形で進行する小説。舞台は、ドイツ軍に包囲されたレニングラード。空から落ちてきたドイツ兵士の遺体からナイフを盗むところから物語は始まる。窃盗罪で捕えられたレフは、塀の中で脱走兵コーリャと知り合う。命を奪わない代わりに大佐から出されたミッションは娘の結婚式でふるまうケーキのために、卵を1ダースを持ってくること。そこから2人の奇妙な体験が始まる。次から次へと巻き起こる、不思議で悲惨な事件。2人の下ネタ満載のトークのおかげでその残酷さは軽減される。中盤からの展開も圧巻。ラストは意外な展開で、泣けてしまう。ロシアを舞台にした戦争ものということで「チャイルド44」の世界観にもつながるが、語り口がユーモアに満ちていて、洒脱な印象の小説でした。
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近頃本屋さんが減っているという
それはネット販売隆盛のせいらしい
僕はネットもよく利用するけれど、本屋さんも好きだ
目的もなく散歩していて、ふと健気に咲いている花を発見するような
そんな出会いがあるから
この本も書店で何となく目に入ってきて、タイトルが気になった
解説などを読んでもモヒトツどんな傾向の本なのか分からなかった
主人公の祖父の戦争体験らしい
でも卵を探すってどうゆうこと?
ハヤカワ文庫だから、ミステリなのかな
でも文庫で900円だし、つまらなかったら・・・
など考えて結局購入には至らなかった
その後も、次に読む本を物色するたびに、下位ノミネートとして手にとってはまた棚に戻したりした
しかし、どうしても気になって、ある日思い切って買ってみた
失敗してもいいや、と覚悟を決めて
作家の祖父レフが少年の頃、ナチス包囲下のレニングラードで秘密警察の大佐から、脱走兵コーリャと共に卵の調達を命じられるという話
大佐の娘の結婚式の料理に使うためだ
期日までに持って行かないと銃殺される
封鎖されたレニングラードには当然卵などはなく、二人はやむなくナチスの封鎖線を越えて郊外の敵陣深く分け入っていく
何という奇想天外な設定だ
一種のドキュメントとして、戦時下のレニングラードの酷い生活がリアルに描かれている
ナチスとロシア軍の知られざる実態も明晰に描写されている
戦争の悲惨さと馬鹿らしさがこれでもかと浮き彫りにされている
そして、序章で少年の街に落下傘兵の屍体が舞い降りたところから、次々とエピソード(殆ど独立した短編小説)が積み重ねられて行く
人肉目当ての夫婦に襲われたり、祖父の生家が爆撃で消失したり、鶏を守る子供の死、雄鶏のスープ、ナチに拉致されている少女たちの寓話、パルチザンとの共闘、手に汗を握る攻防
どれ一つとっても目を離せない
このような構成は古い名作の文学形式を想起させる
さらに、コーリャという人物の魅力
饒舌で卑猥で高尚で勇敢で繊細
レフも高名な詩人の子であり、二人は次第に無二の親友となり兄弟のようになっていく
この友情も一本の線だ
レフの恋愛も大きなテーマとなっている
最後に、文章の素晴らしさ
比喩の巧みさ、詩的な叙情性、ばからしいユーモア、この作者の天性のものだろう
ラストに大きな感動が待っている
思わず冒頭部分を読み返してしまった
多分、今年のベストワンに出会ってしまったのかも知れない
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すごく評判がよかったので読んでみたけれど、やっぱり悲惨で壮絶な場面が恐ろしすぎて読むのがつらかった。主人公たちのやりとりにはユーモアがあって、文章自体は重くなくて、青春小説の感じもあるんだけど、それでもつらかった。
わたしが当時のロシアやドイツの政治社会情勢に疎いせいで、よくわかってない皮肉やユーモアもたくさんあったような気が。それでいまひとつノレない気もした。後半、捕虜にまぎれこんだあたりから、チェスの勝負のあたりからやっと冒険モノっぽいスリルを感じたような。
ラスト、悲しいことと、ハッピーなことがあったので、結局プラスマイナスゼロかな。(大雑把すぎる)。でも、北上氏の解説のおかげで、あわてて冒頭部分を読み返したらうれしい気持ちになれたのでややプラスかな。
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この小説、なかなかユニークな邦題だが、
時は1942年、舞台はナチス包囲下のレニングラード、そこでの僅か一週間足らずの出来事が描かれている。
歴史に明るい方なら、レニングラード包囲戦といえば、ああ、第二次世界大戦における独ソ戦か!とピンとくるだろう。
1941年から1944年にかけて、ドイツ軍は900日もの間、ソビエト連邦第二の都市・レニングラード(現・サンクトペテルブルク)を包囲した。
だが、私は歴史にも疎い。(苦笑)
そして、それは歴史に疎い私でさえひき込まれてしまう、見事で素晴らしい作品だった。
一人称で語られるその歴史は、あの戦争から70年以上経っていても、それは歴史ではなく現実として読者に迫ってくる。
時にうざいとさえ思うほどの描写が、脳裏に小説をリアル化させる。
また、主役級の登場人物の一人、脱走兵のコーリャ(本人は脱走兵とは認めていない)のあっけらかんな態度といい、物言いといい、これが実に爽快である。
ちょっと根暗で悶々とした主人公レフとの掛け合いも非常に愉快だった。
ユーモアのあるリズミカルな文章に、らしさもきちんと描いている。
ロシアらしさ、ロシア人らしさ、ユダヤ人らしさ、それらをきちんと描き切ってる上に、
他愛無い、ちょぴり下品でさえあるユーモアで、あまりに残忍な内容さえも重くならず、それが逆に戦争の悲惨さや浅はかさ、愚かさをストレートに伝える辺り、作者の力量に脱帽した。
これは戦争物である上に、二人の青年の青春物語でもあったりする。
だから、飽きない。
あ、面白さのあまり、どんな内容かも書かないうちに、とりとめもなく記してしまったが、、、
17歳である主人公のレフは、作者ディビッドの祖父として描かれている。
夜間外出禁止令を破って捕まったレフと脱走兵のコーリャは、軍の大佐から大佐の娘の結婚式のために卵を一ダース手に入れるよう命じられる。
今日は土曜日、期限は木曜の夜明けまで、一週間もない。
だが、レニングラードには卵などどこにもない。
こんな飢餓の中、どこに卵があるというのか?
卵を求める二人の前には、信じられない残酷な場面が展開する。
が、そこはコーリャだ。
この愛すべきキャラクターのおかげで救われたのはレフだけでなく、一読者である私もだった。
それにしても、命令を下す大佐のこの言葉。
「娘は本物の結婚式を望んでる。 きちんとした結婚式をだ。
それはいいことだ。 人生は続くのだからな。
今、われわれは野蛮人と戦ってはいるが、だからといって、人間らしさを失っていいことにはならん。
ロシア人でありつづけなきゃならん。
だから、音楽もダンスもある結婚式になるだろう・・・・・それにケーキもある結婚式にな」
ナチスもナチスなら、こいつもこいつだな。(苦笑)
だが、戦争というものはそんなものなのかもしれない。
大義名分なんて、は��っから存在しないのだ。
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戦時中の話。
頼れる悪友?のワルさが原因で、生かしてもらうために娘のケーキを作るためのタマゴを集めてくる、という話。
戦時中に栄養価の高いタマゴなんて、ほとんどないと知っているのにそんな命令を出す。不可能と思われることをさせようとする、いびりである。
走れメロスみたいな意味合い。
途中で出会うやたら強い少女も、いい味出してる。
雑誌ダヴィンチのオススメ本から、借りようと思った。
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ナチスに包囲されたレニングラード攻防戦を生き延びた祖父。17歳だった祖父はロシアの大佐の命令で12個の卵を手に入れるために、お喋りな脱走兵コーリャと二人で、雪の中を探索の旅に出る。
時間がかかったけど、読み終わると面白かったと思わされる。
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部屋に人肉を吊るしてるとか、犬に対戦車の地雷を背負わせてるとか、侵攻してきたドイツ兵の慰み者になってしまったロシアの女の子たちとか、これが戦場となった現実なんだろうなあ・・・と。とにかく当時のレニングラードに食べ物がなくて寒さと飢えで大変だったというのはよく読んだけれど、そんな中娘の結婚式のために卵を探してこいという大佐がなんとも・・・ホントにこんな人いたのかしらん。でもいても不思議なさそう。なんとなく、だけど。コーリャがいいな。訳文が滑らかでとても読みやすい。