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世界の終わりに対する怖れ、破壊へのひそかな憧れ……。傑作を生み出したルネッサンスの輝かしい光の裏にうごめく不穏な精神を描き出す。刷新した図版多数収録。
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いやぁ勉強になった。
オウィディウスの詩を典拠としたクロリスからフローラへの変貌を、ボッティチェルリの『春』がいかに美しく反映させたかという著者の解釈は是非とも読んで頂きたい。
あとがきにもあるように、確かにタイトルの『ルネッサンスの光と闇』の″闇″についてはあまり触れられていない。
けれども、ユマニズムの異教的価値観とキリスト教的価値観の中で揺らぐルネッサンスの本質を示すにあたって、前者の″光″に焦点が当たるのは自然だと思う。
図と文章が対応して見やすい構成なのもグッド。
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美術分野の素人の書評になりますのでその点はご留意ください。下巻では主に「光」の部分に焦点が当てられます。具体的には美もしくは愛についての解釈です。その際の題材になるのがボッティチェルリの「春」と「ヴィーナスの誕生」ですが、それぞれの絵のなかの登場人物や背景、またこれらの絵が描かれた経緯などが詳しく語られています。詳細についてはぜひ本書を読んでいただけたらと思いますが、本書を通底しているのは「二面性」あるいは「二であり一でもある」というキーワードでしょう。例えば愛情についても現生的な愛と天上界的(理想的)愛情がある。どちらがより優れているとかではなく、これらは愛情の二面性であって、言い換えれば古代ギリシャ思想(あるいはネオ・プラトニズム)とキリスト教との融合でもあるというわけです。そのほかにもベルリーニ、ティツィアーノなどの絵画作品をとりあげつつ、バロック時代の絵画とも比較することでルネッサンス時代の精神分析をしているという意味で、断片的ではありますが、本のタイトルに対する理解が深まったと感じました。