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伊東潤氏の作品としては近代歴史ということで随分と毛色が違うのかな?と思いましたが、史実を的確にわかりやすく伝えようとされている点は他の作品と全く変わらず読みやすい作品でした。
よど号ハイジャック事件というのは私が生まれる前の事ですので、あまり良くわかっていませんでした。よくTV番組で特集を組まれているのを見た記憶程度を持ち合わせていたレベル。
TV番組では起こった事象を表面的に解説したり、被害者の視点に立って解説されたりというレベルですので、語られない(語れない)事実もあるのだろうと思います。
伊東潤氏は他の作品においても、その場にいるかのような表現をされ、どちらか一方の視点だけではなく、何が事実なのかという点に力を入れて書かれていると思います。
ハイジャックという事実は知っていましたが、犯人グループが北朝鮮に亡命し、その後どのような生活を送って今に至っているのか?事実はわからない。
北朝鮮の拉致監禁事件ともつながりがあるのかもしれない。
今まさに起こっているアメリカ・中国・韓国・北朝鮮とのやり取り、南北朝鮮統一に
向けた様々な交渉にも繋がっているのかもしれない。
様々な憶測を呼ぶものと思われますが、そういった事を考えるきっかけを与えてくれる。
犯人が悪くないということは決して無いが、そこに至る背景や、裏で糸を引く人物の存在など本当にこの事件を起こした原因はなにか、二度とこのようなことを起こさないようにできないのか。
平成も終わろうとするこの時期に読めたことは貴重な機会を頂いたと理解します。
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現代の放火事件の捜査と、過去の学生運動過激派グループによるハイジャック事件の実行犯となった公安の潜入捜査官の物語が点から線に結びついていき。。。って、これ以上は言わないほうがいいでしょう。このヒリヒリするような潜入捜査の緊張感や、当時の学生運動の青臭いが故の狂気がビシビシ伝わってきて、息苦しくなるほど。仕掛けられた物語上の謎は、あ、こうだろうな、ってすぐわかっちゃうんだけど、それはあまりの生々しい世界観に対して、物語の進行上の仕掛けが「お話」っぽい肌感があるからかもしれない。当時を知らなくてもそこにいるような気分を味わえる、VR超えの活字作品、強くおススメしたい。
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「よど号」ハイジャック実行犯に公安がいた!
1970年のハイジャックと簡易宿泊所放火事件。
警察官・寺島が入手したノートの「1970」「H・J」の意味――
45年の歳月を経て、過去と現在の2つの事件が結びつく時、
男たちの「正義」を懸けた最後の戦いが始まる。
現代史の〈闇〉に迫る、怒濤の公安エンターテインメント!
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伊東潤が現代史を書いた、ということに驚き。歴史小説の印象が強いので。というか、その印象しかないやね。
川崎で起きた簡易宿泊施設の火災を捜査する警察官・寺島の現在と、「よど号」ハイジャック事件へと続く学生運動の公安潜入捜査員・中野の過去が交互に描かれる形で物語は進みます。
中野の心情のブレが公安警察の持つ冷徹さと乖離していて、イマイチ入り込めませんでした。ただ、そのブレが生じる原因があったからこそ、最終幕の決着を見ることができたのだとは思います。
登場人物それぞれが、個人個人のしがらみとこだわりに縛られつつ、そこから抜け出そうとしての感情・熱狂・盲信の炎熱に動かされてしまった人々の物語。
最終幕で描かれる彼らの終着と出発は、感情・熱狂・盲信の熱さに炙り焦がされた結末を迎えた存在と違って、きれいすぎやしないかと思うけども、再生の炎となったというのでもいいんじゃないかなぁ。あんまり救いのないラストもいやかなぁ、と思います。
簡易宿泊施設の火災事件は、実際の事件を題材にしています。あのニュース報道の視聴者映像を見た人も多くいるかと思います。
燃え盛る建物から聞こえてくる、救助を待つ叫び声。
あの映像が忘れられない。
犠牲になった方の冥福を、改めてお祈りします。
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著者の現代ものということで興味深々で読んだ。よど号ハイジャック事件の裏面史的内容の小説。序盤から中盤のグイグイ迫ってくる描写に流石と思ったが、終盤はかなり急ぎ足でバタバタしてしまった印象、なので評価4で。ただ、プロットは相当なものですごく読み応えあり。寺島刑事の伏線が見事だ。やはり上手い作家さんの作品は、時代ものでも現代ものでも面白いということですな。
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川崎簡易宿泊所放火事件でみつかった身元不明の遺体を調べるうち、若き警察官・寺島は、1冊の古いノートを入手する。そのノートには「1970」「HJ」の文字と、意味不明の数字の羅列が記されていた。
やがて寺島は、放火事件とかつて日本を震撼させた大事件との関連に気づき、その真相を握る男を追う――。過去と現在が結びつくとき、巨大な陰謀が明らかになる。
このところ、手に取った本を最後まで読了できなくて困っていた。暑さのせいで集中力低下と思っていたが、単に面白い作品に当たっていなかっただけかも。
よど号ハイジャック実行犯の中に公安がいた設定は絵空事に思えない。もしかすると事実はそうだったのかもと推測したくなる。背景に政治的な謀略が働いていたのかも・・・。
地方で大学生になった時学生運動は下火になり、それでも立て看やアジテーションは見られた。小説中に登場するフォークソングなども懐かしくよみがえる。
先日のN大アメフト事件報道で、大学アメフト部に保護者会なるものがあると知り、耳を疑った。自分の頃と随分様変わりしたものだと嘆きたくなる。
唯一の女性で登場する桜井の描き方には不満が残った。
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あまり「よど号事件」は知らなかったけれど、「琢磨」に感情移入しながらドキドキハラハラしながら一気に読んだ。
最後の疾走感は、伊東潤史上最高の疾走感ではなかろうか。読む手が止まらなかった!
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実際の事件を扱っているので、興味深く読めた。主人公の心の揺れも、きっとこんな人もいただろうなという気持ちにさせられる。この時代には生きてないけど、焦燥感とか喪失感とか若者にはあったんだろうなーということをつねづね思う。読後感も大変良いなと思います。
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伊東さんの歴史小説ばかりを追っていましたが、この現代史のミステリーも超おもしろい。
よど号ハイジャックと簡易宿泊所の放火事件を見事に繋げたこの点と線の描写は秀逸です。
一気読みは間違いなし、おもしろ過ぎです。ドラマ化、いや映画化を激しく希望する。
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友人に勧められて読んでみました。簡宿の火災と学生運動という時代の異なる事件がどう結びつくのかわからず、でも引き込まれるように読んでいくと、ラストでそういうことか、と思います。おすすめ
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著者は歴史物作家だが、今回は現在と50年程前の過去の2つの物語りが並行して進む。
当然最後は交わるのだが、終盤にかけてややバタバタする。
歴史的事件や最近有った実際の事件を踏まえてのストーリーで背景は興味深いのだが登場人物のイメージが曖昧というか、今一つ彼等の動きが納得いかない。中野は帰国してから40数年も消されずにどんな暮らしをしていたの?とかね。
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簡易宿泊所が放火される。警察官・寺島は捜査を進めるが、難航する。少しの手がかりでもと調べてゆくうちに、一冊のノートを見つける。「1970」「H・J」暗号。1970年前後、学生運動が盛んな頃、警察官・琢磨は統学連に潜入することになる。琢磨はトップの白崎の信頼を得て、ハイジャックのメンバーとなり北朝鮮に向かう。現在の放火の捜査と過去の琢磨の活動を互い違いに入れて物語は進んでゆく。放火事件の真相と琢磨がとった行動は…。ハイジャック犯の中に警察がいるという設定、ハイジャック犯の行く先、琢磨の運命、興味深く読めました、緊張感を維持しつつ最後まで。洗脳やら熱エネルギーが強い時代なんだなあと思いつつ、学生運動を経験しなくてもその時代を大人として生きてきた人にはより深く読めるんでしょうね。
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ページをめくる手が止まらない、史実を参考にした、上質なサスペンス。歴史小説が大好きで、著者の本はかなり読んでいるのだが、近現代モノは初めて。こちらもかなり面白い!ただ、終わりが少しあっさりしすぎている感じも。
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99時代劇の印象があったけど、時代考証もさすが!赤軍派の内幕を描いた他の作家の作品よりずっとストーリーも文体も上手だと思う。一気に読みました。面白かった!
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「ライト マイ ファイア」(伊東潤)を読んだ。
これ面白い!もうイッキ読みでした。
伊東潤、新たなステージに到達!
1958年生まれの私はあの時代の高揚感も倫理の欠如も無分別さも本当には知らない世代だ。自分のことなので想像はつくが、あと5年早く生まれていたらやばかっただろうな。