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本書は、行動経済学の観点から競争社会を論じるもの。といっても、競争社会そのものを論じるのではなく、競争社会における種々のトピックを網羅的に紹介した形式です。競争制限的な教育を受けた人は、利他性が低く、非協力的な価値観を持つ傾向があるとの行動経済学の研究成果には驚いた。競争のメリットは伝統的経済学で論じられているものと思ったが、行動経済学の観点からも論じられているのですね。
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パッと見、心理学とか自己啓発の本かとおもいきやバリバリの経済学の本。
内容のメインは行動経済学に基づいて記述されている。
気軽な読み物としては難しいけれど、学術書としては易いというちょうどいい感じの本です。
何かのテーマについて掘り下げているというよりは随筆のように身近なことや、書きたいことをページごとにバラバラに書いているので、正直知識としては残りにくいが、雑学としてはいいかなという感じ。
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「競争社会」と聞くと、現在の格差社会を生み出している諸悪の根源のように
言われますが、この本を読むと考え方を改めることになります。
例えば運動会で徒競走の順位づけがされなかった教育を受けて育つと「利他性」
が低くなり、他人を思いやる心がなく、やられたらやり返すという価値観を持つ
傾向が高くなるそうです。
競争の中でもしっかりとした「ルール」があり、そのルールの中で競えば健全な
社会になるということを学べる本です。
中でも印象的なのは、マイケルジョーダンはメジャーリーグの「競争」で敗れた
がゆえに改めてバスケットボールという自分の居場所を見つけることができた
というくだりです。
これをを聞くと、競争が自分の長所を知る手段とも言えると理解できます。
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高齢者の年金定期便に、若者からの所得移転額(若者よりいくら多く貰えるのか)を記載することで、高齢者の意識が変わり世代間対立が和らぐかも(?)という提言をしているが、逆に炎上する気がする…。
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NHKオイコノミアでおなじみの経済学者・大竹先生による中公新書第三弾。経済学が教える、競争社会で自分の強みを活かす考え方とは
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チケット転売問題=一部をオークション方式にする。
他店価格対抗の広告は、価格を下げるなというメッセージ。
くまもんは使用料はただ=二部料金制と同じ
現状維持バイアス。
ご当地グルメは親近感バイアスから、馴染みのある食べ物になりやすい。
勝者の呪い=オークションの落札者は、それ以上で転売できない。
シャッター街は負の外部性の結果。
競争は独占の弊害を防ぐだけではなく、進歩のために必要。
多数決のパラドックス=2番目に好むものが多いものが勝つ。
幸福感が高まると生産性が高くなる。
怒りはリスクを取りやすくする。
怒らせると協力しなくなる。
医者が謝罪しても不利にならないようにすると、医療訴訟が減った。
確率が低いものは高く、高いものは低く、認識される=宝くじを買う理由。
ストレスがあると挑戦しなくなる。
損を嫌う=参照点にしがみつきたい行動原理。
バーディーパットよりパーパットのほうが慎重になる理由。
代表制バイアス、想起性バイアス、係留性バイアス。
信用できると思っている国のほうが成長率が高い=余計な神経を使わなくて済む。
平等な待遇を心がけて教育するほうが他人に対する思いやりをもたなくなる。人間に多様性があることを認識させたほうが思いやりのある人に育つ。
放蕩息子の定理=息子に対する利他的な心を父が持っていると知っていると、そもそも放蕩しない=家族全体の利得を考えたほうが放蕩息子も自分の取り分が大きくなる。早めに遺産分割をすると「サマリア人のジレンマ」が出てくる。
三多摩地区はもともと神奈川県だった。東京都に編入されたのはコレラの大流行から。水源地の三多摩地区の不衛生を管理したかったから。
合理的無知=選挙で情報収集の手間をかけないため。
職種によって、長時間労働のほうが時間あたり生産性が高まるものがある。男女賃金格差の原因。
コンピュータ化による格差拡大の標準的説明は、中間層の仕事がなくなって、単純労働への応募が増えるから。
ピケティーは、1%に集中するのは経営者の所得決定メカニズムや最高税率の引き下げに原因があると見る。
コンピュータ化によって、かつての高所得は低所得になり、新たな高所得職業が出てくるがそれは数が少ないから。
宝くじの当選者は保守的になり、平等主義者ではなくなる。
技術革新によって設備の陳腐化が激しくなる。空家問題も同様。
失われた20年の根本原因は投資の非効率性にあった。
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世の中を経済学者の視点から眺めてみた!的な内容だが、すでに類書を読んでいることもありそれほど新しい発見はなかった。それでも最後まで楽しく読めたのは大竹先生の卓越した文章力と論理構成のおかげなのだろう。
経済学者であるから競争の利点を説くのは理解できるが、それでも競争の負の側面を軽視しすぎているように思える。世の中は経済学者が想定するほど公正でなく、勝者ほどズルいことができる仕組みになっている。勝者が競争のルールを作るから当然だ。中でも弊害が大きいと思われるのは、勝ち負けの結果の差が大きすぎることと、一度負けると世代を超えてそれが維持されることにある。終章に描かれているように、日本が永続的に繁栄を続けていくには絶え間ないイノベーションが不可欠だが、残念ながら貧乏人の子弟は高等教育を受けることが難しくなっている。しかもその仕掛けが益々巧妙になっていて、すべてが自己責任に帰されるように仕向けられている。これも競争社会の必然的な帰結であるように思われる。競争と正義は相容れないのだ。
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・競争が少ないと、自分の本当の長所を知ることが出来ない
・怒らせると協力しなくなる
・不十分な金額なら出さない方がまし
・デフォルトの設定方法の工夫(臓器移植ドナーの同意)
・正の互恵性を持っている人の方が年収は高い
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大竹の経済エッセイ?は、とても読みやすい。短い文のシーケンスだがきちんとロジカルに伝わるように書かれている。
西加奈子『サラバ』と又吉『火花』は未読。懸案リストに登録しておく。
怒っている人、凹んでいる人のリスクの取り方にバイアスがある可能性については、覚えておこう。
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経済学者が、競争の重要性を説いた本。比較経済学を中心に現在の国内外の研究論文、データを基に、競争が経済力向上のみならず、社会性の向上、人格形成上においても重要であることを説明している。引用が多彩で、説得力ある面白い本であった。
「競争は勝者と敗者を生み、厳しく辛い面もあるが、競争が繰り返された結果、自分が真に活躍できる場を見つけられる確率が高まる。誰にでも得意不得意がある。不得意な分野で消耗戦を続けるのは、本人にとっても社会全体にとっても不利益でしかない」v
「(経済学者が批判する)非効率=無駄」p11
「(他店対抗「他店より価格が高ければ対抗します」)経済学者は、この広告を出している家電量販店は、競合店に対して価格競争をやめるよう呼びかけていると解釈している。「暗黙の共謀」とも呼ばれる」p21
「(オークションでの勝者の呪い)オークションで落札できる人は、その品物の価値を過大に評価した人だから、必ず損をする。(転売する気がなければ、勝者の呪いは発生しない)」p38
「幸福度が高まると生産性が高まる」p65
「(怒り)怒ってしまうと、私たちは、不確実なことでも確実に生じるように感じ、周囲のことを統制できるように感じるという。未知の危険や恐ろしい危険をあまり感じなくなり、その結果、リスクあるものでも受け入れるようになるのだ。また、問題の責任が他人にあるように感じる傾向があるともいう」p68
「(恐怖)対照的なのは、恐怖の感情であり、不確実性を大きく感じ、自分で統制している感覚が減少する。そのため、リスクに対して回避的な行動をとりやすくなる。直観的な意思決定よりも論理的意思決定を用いる傾向が強くなる」p68
「(悲しみ)悲しみを感じると、自分で統制できる感覚を減らすうえ、利益志向的になり短期的視野をもつようになる」p68
「清潔な暮らしをしている状態だと少しでも汚れがあるととても目立つが、不衛生な暮らしの中で少々汚れても平気でいられるというのが人間の特徴だ」p86
「寄付した人の幸福度は上がり、寄付する人は幸福度が高いということが研究で明らかにされている」p100
「(ピケティの世界)今のところ日本では、アメリカやイギリスで生じているような、トップ所得層による所得の集中は起こっていない」p107
「コロンビア大学の伊藤隆敏は、財政破綻は日本の家計貯蓄で日本国債を吸収できなくなる時と定義している」p108
「同じ提案であっても損失が目立つ提案の仕方をすると、反対されやすくなる」p122
「(経済学部は文系)経済学が数字を扱うことを考えると、不思議な現象だ」p125
「(数あてゲーム)「0~100までの好きな数字を書いてください。皆さんが書いた数字の平均値に0.7を掛けた数字を書いた人を当選者とします」この実験の当選者となるのは、どの数字を書いた人だろうか。最初に予想される答えは35だ。なぜかといえば、実験参加者全員がランダムに数字を書いたとすれば、平均が50になるはずで、そこに0.7を掛けたら35になるからだ。多くの人はここで思考をストップさせる。しかし、もう一歩先を考えてみるとどうだろう。答えを35だとあなたが予想した��すれば、他の人も同じことを考えているはずではないだろうか。あなただけが賢いわけではない。もし、他の人たちも一歩先を読むと平均が35になるはずだ。そう予想したら、あなたは35に0.7を掛けたものを選ぶべきだ。それと同じことを他の人が考えたとしたら、あなたは。」p126
「(最低賃金の引き上げ)多くの人は最低賃金が引き上げられると、自分の賃金も上がると考える。でも、よく考えてみれば、雇う側は生産性より高い賃金を払いたくはないから、最低賃金が高くなればそれに見合わない生産性の低い人たちは雇わなくなり、雇う数を減らす。運が悪ければ解雇されてしまうかもしれない。最低賃金ギリギリの人は最低賃金引き上げを喜んでいる場合ではないのだ」p127
「(反競争的教育(手をつないでゴール))反競争主義的で協力する心をもたらそうと考えた教育が、能力が同じという思想となって子供たちに伝わると、能力が同じなのだから、所得が低い人は怠けているといった発想を植え付ける。→ 努力主義、能力が同じなら助け合う必要もない、所得配分反対→ 競争激化」p143
「選挙で瀬戸際に立たされた政治家が、合理的無知につけ込む大衆迎合的な戦略をとるのは、残念ながら世界共通のようだ」p175
「(ねんきん定期便)年金給付額のうちいくらが(自分の払い込んだ額の)移転額なのかを明記したり、他の世代であればいくらの保険料を支払われないとその受給額がもらえないかを明記すれば、年金を受給する高齢者の意識も変わるかもしれない」p198
「(日本人の所得(2012年))上位10%は年収580万円以上、上位5%が年収750万円以上、上位1%が年収1270万円以上になる。日本のトップ1%はもっともらっていると思っている人が多いと思う」p202
「(医師には旧士族、旧華族の名字が多い)流動性が高く、平等社会であると思われてきた日本は、以外にも明治時代の格差をいまだに残している(子孫との所得と教育の相関:どの国でもかなり高い相関)」p208
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行動経済学の視点からいろいろな事象を説明している。人は、理論としてはわかっているがその通りの行動はとらない。それをうまく利用し、社会を変えていこうとすることは大切であると思った。
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信頼と経済成長
経済成長は相互信頼と強い相関関係があるそうです。
「情けは人の為ならず」
日本人のある年代を境に意味が変わって理解されてるようです
危険ですね
他人への信頼があるから人の為に動けるんですよね。
まあ個人的には僕が人の為にするのは回り回って社会が良くなると思ってるからです。
信頼こそが経済成長の基礎なんやと思います
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大竹先生の著書は『行動経済学の使い方(岩波新書)』に続いての読了。冒頭から大好きなマイケル・ジョーダンの逸話で競争社会の意義が腹落ちした。
家電量販店、司馬遼太郎、利他的感情、放蕩息子の定理等々、世の中に溢れている事例から行動経済学をわかりやすく学べる。
「教育投資によって私たちは将来豊かになれるということが、私たちの共通認識になれば、そのための税を負担することへの抵抗もなくなるのではないか(p219)」
大学人のひとりとして、これには強く共感する。より良い日本社会のために。
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行動経済学の小ネタと社会問題への経済学的アプローチ。
競争と協同は二律背反ではない。行為者,行為階層と時空間の違いを考慮する。競争や協同の言葉が表す内容が多岐にわたる。競争や協同は目標達成の手段。競争の仕方や協同の仕方というのはどこで学ぶのだろうか。こんな風に競争しなさいや協力しなさいなどと教えられることは少ないのでは。部活ではありうるか。協同の価値観が浸透しないのは明確なポジティブフィードバックが得られないから?公共の福祉みたいなものか。
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メモ用
怒りは不確実な事でも、より確実に生じるように感じ、周囲の事を自分で統制できるように感じる。未知の危険や恐ろしい危険を感じなくなる。その結果リスクのあるものを受け入れてるようになる。
※問題の責任が他人にあるように感じる傾向にあるように感じる。
利益傾向志向に落ち入る。
恐怖の感情
不確実性を大きく感じ、自分で統制している感覚が減少する。その為、リスクに対して、回避的な行動を取る。直感的な感情ではなく理論的意思決定を用いる傾向にある。
悲しみ
自分で統制する感覚を減らすうえ、利益志向的になり、短期的視野を持つようになる。他人を信頼しなくなり他者との協力も減ってしまう。