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紙の本
熱血、明快! 地図職人の世界
2011/01/31 21:58
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
世の中には地図ファンというのは多いらしく、専門の雑誌もあるそうだ。地図とは、本来ならば、なんらかの個別具体的な必要にもとづいて作られたはずなのに、そうしたことを忘れて夢中に見入ってしまうことがある。本書の著者は、そんな地図を(国土地理院で)作ってきた側の人である。
古今のさまざまな地図がオールカラーで紹介され、それらを眺めるだけでも楽しいだけれど、新書サイズの小さな容れ物に、地図作製の意図や苦労がとてつもなく沢山盛り込んである。アナログ図化時代の作成の仕方から諸器具、そして作業がデジタル化された現在まで、限られた紙面に詰め込んである。地図の歴史とは、いかにより精度の高いものをつくるか、という地道な苦闘の歴史なのである。時には、「そんな知識、プロの作成者にしか必要ないのでは?」と突っ込みをいれたくなるものの、読んでいるとなんだかとても贅沢な感じがしてきて、これもまた楽しい。地図作製者の熱意と苦労と言えば、映画にもなった『剣岳 点の記』が有名だけれども、もっと地味で、もっと多くの人が地図作成にかかわってきたのである。地図を眺める楽しみ、というのはそうした作成者たちの熱意とこだわりを読み取るもの、といえるだろう。
本書を読んでいると、そんな地図作製の作業も、機器の進歩とデジタル化によって飛躍的に楽になり、その再現の精度や利用の可能性を大いに広げた一方で、過去の職人技を超えられるない部分もあることがわかることである。アナログ時代に行なわれていたような、たとえば「微量の白部」という地図作製の微妙な技(道の重なりなどを再現、95〜96ページ)が、デジタル化では失われてしまうことなど、進歩はなかなか一筋縄ではいかないことである。地図にはこうした人間臭い部分が多々あるからこそ、古地図も広く愛されるのだろう。
さて、本書が教えてくれるのは地図だけではない。たとえば、地図と現実の写真を通して、信玄堤の仕組みについて丁寧に紹介している(「聖牛」の役割を初めて知りました)。そう、地図を読むこととは、大地とそこに刻まれた人々の営みについて、より深い認識と想像力を鍛えてくれるのである。
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