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鴻巣友季子の2018年のベスト。
フィリピンの島と欧州の島を舞台にした新鋭作家の作品集です。
表題作の舞台は、顔見知りばかりで、気安さと息苦しさが同居するフィリピンの村。閉塞した小世界をかけめぐる出所不明の噂、くすぶる悪意、やり場のない怒り、煽られる不安、なし崩しになる望み…
「ボラン」とは闘鶏が脚に付けるナイフのような武器のこと。
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「蹴爪」
ベニグノの絶望。
絶望は暴力につながる…
この後ベニグノはどうなるのか。
「クイーンズ・ロード・フィールド」
こちらの方が穏やか。翻訳小説を読んでいるようだった。
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2編。共通するのは、兄からの暴力(が振るわれる現実と、そういう嘘をストーリーとしてつくこと)、島の中の出来事であること、貧困。
ともに舞台は海外だ。書きたいことを書くときに日本を舞台にすると嘘くさくなる、そういう題材があるのだろう。
数十年まえは真正面から向き合えていた題材に、迂遠な手段を使ってでも直面しようとする作者。
「蹴爪(ボラン)」
読むことで、胃に重油を流し込まれたような。
中上健次「一番はじめの出来事」を思い出していたら、どうやら作者は中上健次にも影響を受けているとか。
「クイーンズ・ロード・フィールド」
こちらは読んでよかった、と素直に思った。
最高にエモい台詞「わたしのだいじちゃんだからね、ひとりじめなんだ」は一生忘れたくないし、語り手の気づき「人がひとり死ぬということは、その人が周りの人と交わしていた親密な言語がひとつ滅びることだ」も、憶えて都度反芻したいものだ。
ただ単にチンコ出すだけじゃなく、assholeに対し男3人が揃ってチンコ出す、のが、うーんなんというか意義深いというか感慨深いというか。