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祖父、父と続く官僚の三代目として産まれた三島由紀夫は本人も父の命により官僚となるが、半年で退職し作家になる。この本の面白いところは三島由紀夫を官僚家系としての視点で見ている点にある。それから、圧倒的な取材による事実の蓄積により実際の三島由紀夫像が浮かび上がる面白さもある。
絶対にヒットさせたかった長編デビュー作の「仮面の告白」から読み取る三島由紀夫という人間像。三島由紀夫の同性愛に関する考察はとても納得のいく内容だった。
絶頂期に書き上げた名作「金閣寺」三島由紀夫が作家として乗っているだけではなく、人間として、男としてある意味生まれ変わった時期でもあったという新発見は驚きがあった。
そして、壮絶な死へと繋がるきっかけと推測される「鏡子の家」。有名過ぎる三島由紀夫の最後へとどう繋がり、三島由紀夫が憂いた日本とは何かが描かれている。
やはり、三島由紀夫という作家は面白い。こんな面白い人間が書いた小説は面白いに決まっている。まだ、未読の小説もたくさんあるので、これから少しづつ読み進めて行きたいと改めて感じた。
また彼の予見した国になってしまった現代の日本を見て彼ならどう考え、どう感じるだろうかと空想にふけてみるのも面白い。