紙の本
植物の改良の概念が覆る
2019/03/25 22:58
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投稿者:バナナ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私が学生時代に学んだ、植物の品種改良、育種学の根本的な概念をくつがえされました。育種学等を学ばれている方には是非オススメです!
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「へぇ、どんなもんよ」と軽い気持ちでマユツバ半分に購入したら、ガチガチの遺伝工学系の話でビビった。それも在野の研究者による。
曰く、バナナの成長細胞を180日かけてマイナス60度まで下げて冷凍すると、遺伝情報を修飾しているヒストンというタンパク質が壊れて、冷凍に耐えて生存した2%の細胞からは強い耐寒性と成長力を持った、まったく形質の違った個体が生まれるという。
冷凍する際には1日0.5℃ずつ下げられないので、冷凍庫の制御に量子力学と人工知能が使われ、発現した個体には冷凍前と15万個に及ぶ遺伝情報の相違があったと。こうして、岡山県南の気候でも生き抜くバナナの生産が可能になった。
そこで普通は「なんでわざわざ日本でバナナを」という話になるところだが、熱帯性の植物が温帯で育てられるようになると、農薬がいらなくなる。つまり食害する昆虫が存在しないので、無農薬で皮まで食べることができ、また樹上完熟した糖度の圧倒的に高いバナナが生産できる、と。
はぁ〜、すごい。
なお、2018年4月から岡山大学農学部に研究室ができ、作付けした12万株のバナナの売り上げ目標は50億円だそうです。さらにその先の野望が大きすぎて……。
ハァ〜、スゴい。
ちなみに田中節三先生、小さい頃から2〜3時間しか眠らない典型的なショートスリーパーのようです。
----------(以下、引用)----------
「これから私がやりたいことは、シベリアを農地に変えることです。
シベリアは永久凍土ですが、6〜9月の4カ月は、暖かいのです。平均気温は約20度ですから、この4カ月は農業ができます。
ところが、たった4カ月で収穫できるような作物はないのです。ハツカダイコンならつくれますが、それだけでは生計が立ちません。
そこで、バナナをつくろうとしています。バナナやパパイヤ、パイナップル。まずは私が研究してきた南洋の果物から始めて、大豆や小麦、トウモロコシなどの穀物をシベリアで栽培しようと思っています。
シベリアの面積は、日本の平野の51.8倍です。しかも水が豊富で、永久凍土ですから、大腸菌も害虫もほぼいません。病気の心配がないから、無農薬で作物が作れるのです。
シベリアの6月から9月までの気温なら、「凍結解凍覚醒法」によって耐寒性を高めれば、どんな植物でも十分に栽培できます。バナナでも大丈夫ですし、パパイヤだったら間違いなくいけます。パパイヤは成長速度が速いのです。シベリヤにバナナとパパイヤを植えて、実際に収穫できるかどうか、試してみるつもりです。
シベリヤが農地に変わるというのは、すごいことですよ。21世紀には食糧危機の時代といわれていますが、この技術が完成すれば、それが一発で解消します。今の地球の人口が必要としている以上の作物が作れるからです。
今まで食糧が作れなかった地域でもつくっていける。シベリヤは、その最有力候補なのです。農作物の耐寒性と成長スピード、さらには収穫量を向上させることに成功すれば、わが国の近くに、食糧の一大生産地が出現することになります。もちろん、世界にとっても大きなギフトとなるでし���う。
特に大豆やトウモロコシは、食糧であるとともに油の原料でもあります。
もしもバイオディーゼルの燃料として使用できれば、化石燃料の使用量を減らすことができます。また、家畜の飼料として供給できれば、肉の価格も下がることでしょう。
これが私たちの事業目標です。
夢のような話ですが、私は実現すると確信しています」(p135-137)
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真冬の岡山で熱帯のバナナができた!
ウソー と思って手に取ったのがきっかけで、後は吸い込まれるように読了。
希望を感じ、爽快な気分になれる本です。
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バナナへの愛と執念があふれた一冊。
5-6年前に仕事で台湾に行った時、台湾といえば、ということで台湾バナナを探したが、ホテル周辺のお店では、見つけることができなかった。今思えば、それはパナマ病によって市中からバナナが消えていたのだと繋がった。
この本をきっかけに台湾バナナ(グロスミッシェル種)が食べたくなり、もんげーバナナではないが、一年台湾バナナのオーナーを体験し、食べてみた。たしかにおいしいが、値段ほどの差があるのかは???
熱帯で育つバナナも氷河期を超えてきたという事実から、日本でバナナが育つはずという仮設もすばらしい。いろいろな気づきと、生物の可能性を考えさせられる良書でした。