投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
前半は読むのがとても苦しく、もう途中でやめてしまおうかと何度も思った。
それでも読み進め、少年の手記の箇所に辿り着き、そのとき、この本を手にとって本当に良かったと思った。ただ暗い気持ちになって終わりではなく、読後悲しみややりきれなさのなかにも、なにか澄んだものが自分の中に残っているのがはっきりと分かった。
憎しみや悲しみを投げやりにぶちまけることなく、(本当はそうしてほしいとも思う)、分解し、再構築できる透徹さ。その上で自分自身の悲しみもきちんと尊重し、譲らない部分は決して譲らないという矜持。
言葉に言葉を重ねる慎重さ、滲み出る優しさ。
振り返れば彼を救えたタイミングというのはいくつもあったであろうことがやりきれない。
15年という月日はあまりにも長い。
判決には納得できない。
それでもこの聡明さがあればきっと大丈夫だと思うから、手に入れられなかったものや失われた年月を心に抱えながらもどうか生きていってほしいと勝手ながらも願ってしまう。
そしてこの少年が何かを記しているのであれば、私はいつかそれを読んでみたいと思う。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
読んでいて苦しさしかなかった。
「『こんな社会になってくれ』と望むだけで、誰もそうしようと行動しなければ意味がありません」
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
実際にはこういう子供を見たことはないけど、
いつか見かけた時に動ける人でありたい。
ところでなぜ新聞系の本は
活字が大きくて中身がなんとなく薄いのか。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
祖父母殺しなんてひどい事件もあるもんだ。
事件の解明が進むに連れて
そんな単純な感想に終わらなくなりました。
犯人の少年が虐待の日々で
自ら思考することもできなくなっている中で
実の母親に教唆されたのでした。
そこに至るまでと、その後の取材で
複雑な過去や社会システムの問題を
詳らかにしていく本です。
★
一般的な家庭に生まれながらにして
こんなに程度の低い母親もいるということに
衝撃を受けました。
彼女は抗いがたい虐待の連鎖の中にあったとか
努力しているのに厳しい環境で挫折したとか
そういったバックグラウンドを期待しました。
しかし母親の両親は、彼女をかわいがっており
一般の家庭でしてやるようなことはしていた
という取材の結果が出ています。
どうしようもなく怠惰だっただけとわかり
怒りがわきました。
母親に対しては同情の余地はないと思いますが
これを彼女個人の問題にしては
いけないのですよね。
こんな負の特殊性を持った親であっても
まっとうな子どもを育てられる
世の中にしなくてはいけない
とまでは思えません。
けれども様々な家庭がありますし
人は失敗をするものだから
セーフティネットが刑務所になるような
世の中ではいけないですね。
ラブホテルの従業員、福祉行政の職員…、
いろいろな善良な人たちがいる中でも
まったく解決に
近づくことができていなかったのは
非常にもどかしいです。
少年のことが視界に入り
気にかけている人がいるのに
こんなことになるなんて残念だ
そんな感情を通り越して
この社会を何とかしなくては
いけないのではないか
という気持ちになりました。
ラブホテルの従業員が宿泊代を
支払える客かどうかを見定めるために
家庭状況を調べて、
出入りの警察官に情報提供をしても
従業員の立場で許される範囲での
優しい対応をしていても
個人的に気にかけてやる範囲を
超えることはなかったこと
出入りの警察官が居所不明児童のいる
情報を得ても薬物捜査にしか
関心を抱かなかったとか顕著ですね。
彼らはただ自らの職務に忠実であったが
無関心に毛が生えたくらいの
対応しかできなかった。
彼らは特に悪い人でもなく
どちらかというと善良な人たち
であるにもかかわらず、です。
取り立てて悪い人がいなくても
悪いことは起きてしまいます。
自然と社会の仕組みを考えることになりましたが
一方で倫理観、自尊感情など
人間の心の動きに関しても
大いに考えさせられました。
幸子のような怠惰、亮のような暴力性
ホテル従業員や福祉行政の職員のような
善良だけど行動も勇気も物足りない小市民ぶり
それらの要素を私も少なからず
持っているはずです。
そのことを意識して人や社会とつながっていくと
「自身の理想の社会」に少���でも
近づくことになりますね。
強い関心を持って一歩踏み出さないと
何かを変えるのは難しいということでしょう。
第七章「事件が映し出したもの」
における筆者の言葉
たとえば224ページは講演でも
コアとなる部分です。
少し引用します。
筆者自身も「善意」はあるが行動には移さない、移せない側にいることへの言い訳なのだと、取材をすすめるうちに想うようになった。
(省略)
筆者が取材で話を聞いた人たちは、ホテルや宿泊所の運営など自分に当たられた職務の遂行に勤勉で、その傍らで優希のことを気にかけていた。非難されるような行動は決してとっていないが、自戒の意味も込めてあえて厳しい書き方をすると、もう一歩踏み込んだ対応をすれば何かが変わったのかもしれない。
(省略)
私たち一人一人が子どもたちを守るという社会での自分の責任を自覚し、行動に移す努力をしなければ、また同じような事件を防ぐことはできない。
社会的存在であることとはどういうものなのか
考えさせられます。
★
この本を読了していることが
前提という講演会がありました。
私は不勉強なので読まずに参加したのですが…。
山寺氏のていねいで真摯や話しぶりと
質疑応答のおかげで
読まずして大枠の内容がわかりました。
そこからの読書でした。
筆者の粘り強かったであろう取材に
感じ入りました。
単に事実を解明していく
ドキュメンタリーではなく
自分ならどう考えるかなど
自己を通した上で
社会問題として一般化しています。
筆者の取材はていねいですから
強い意見や主張を述べることもできたはずです。
しかしそこはいい塩梅に抑えており
事件の背景について思いをはせやすかったです。
章を変えて、立場を変えて、観点を変えて、
積み上げていきます。
大事だから繰り返すのでしょう。
真理らしきものの周りを、事実を追いながら、
その心理なぞるからこそ、
浮かび上がるものがある。
非常に丁寧な仕事だと思いました。
本書の内容には影響ないことですが
立場を変えたり引用したりがあるせいなのか
「子ども」「子供」
「~達」「~たち」
「さらに」「更に」
のような表記の不統一が多いですね。
もう少し校閲をしてもよかったかもしれません。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
前回読んだ西鉄バスジャック犯も17歳、こちらも17歳。どう捉えてたらいいのか…西鉄の方は親はしっかりしていて当人の問題と言えるがこちらは…小5から不明児童となり母親からの依存で食べる為に盗みや借金の無心なんでもこなすが見入りした金は母親が散々する。母親の恋人とラブホテルで暮らすが金がなくばれば敷地内に⛺️!妹も生まれて祖父母に借金を!出さなければ殺してでも!結局少年は殺害した。母親は殺してでもの部分は否定。苦しく気の毒でならない。彼の人生をこの短い字数では表せない。絶対に人生やり直せる!どうか読んで下さい
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
事件の内容をいろんな角度から掘り下げたノンフィクションのような本が好きでよく読んでいる。この本もそんな内容でした。
自分が事件ものと呼ばれる本が好きなことに対して「なんだか野次馬根性みたいでいやだなあ」と考えることもあるが、突き詰めてみれば「報道とは違う角度から事件を見つめなおすのが興味深い」からだと思いいたった。
この本も、祖父母を殺めてしまったことは許しがたい事件だが、その背景にネグレクトなど少年の環境が大きく関係していると知って、なるほどと思った。
まわりのひとりひとりが、小さなことでもいいから何か支援できていればと思った。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
この子はこの世に生を受けたことを恨みはしなかったのだろうか。
まるで地獄のような恐ろしい日々。
恐怖感、絶望感、殺人を犯してしまうほど追い詰められた精神的極限状態は私なんかには計り知れない。
子を持つ母として、私はこの両親が全く理解不能である。二人の行動を読んでいると怒りで吐き気がした程だ。
我が子にこんなトラウマを植え付けた両親が許せない。何処か違う次元の生き物なんだろう。
この子は誰かを愛する喜び、愛される幸せを知らずに一生を終えるのか。
たくさんいる支援者に支えられ、残りの長い人生をどうか少しでも穏やかに暮らして欲しいと願う。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
映画「mother」でこの事件を知り、事件のことを書いた本があることを知った。新聞記者である筆者が取材で得た事実や証言を淡々と綴っている。彼が体験した地獄のような日々、今も抱える苦しみは想像することが難しい。罪を償った後の残りの人生を自分らしく生きていけることを祈るしかない。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
2014年、埼玉県で起きた殺人事件。少年が祖父母を殺害した事件だということはニュースか何かを見てなんとなく覚えていた。
「お金が必要だったのかな」「感情的になってしまったのかな」「家庭環境に問題があったのかな」
この事件について考えたとしてもこの程度だったと思う。
この本を読んで、そんな単純なものではない事を初めて知った。事件の背景には更に背景があって、個人の生きづらさや社会の問題の積み重ねが事件を起こさせてしまったのではないか。
最後に「自立とは多様な依存先があること」という話が出てくる。余裕がないと偏った判断をしてしまう。自立の為には周りからのアプローチが重要となる。
自分の生き方を振り返る意味でも、たくさんの人に読んでもらいたいと感じました。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
同じ時をこんなに過酷に生きている子どもがいたなんて、ショックでした。信じること、未来に希望を見出すこと、愛されることも叶わず、それでも妹を守ろうと必死に生きる彼は、本来は愛を持っている人なのだと思いました。
祖父母を殺したことの意味を感じ取れる人に戻り、罪を背負いながらも、普通の大人たちと穏やかに生きていってほしいです。
自分の子供時代とはかけ離れた生活の彼ですが、どこか共感する部分があり、昔を思い出し苦しくなることもありました。誰かに助けてほしかった子供時代。大人になったわたしは、誰かに手を差し伸べられるのか、大人としての責任を突きつけられる本でもありました。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
SNSで見かけて図書館で予約した本。
ブクログに登録してから知ったんですが、映画になっていたんですね。
川口市で実際に起きた祖父母殺人事件の加害者である当時17歳の少年に焦点を当てたノンフィクション。
前半は少年の生い立ちから事件発生までが時系列に描かれており、母親の酷さに眉を顰めながら読みすすめ。
後半は裁判記録とその判決をベースにして専門家の意見をまとめたもの。
後半部分を読んでいて思い出したのが、以前読んだ本にあった「服役者を納税者に」という一文(違ったらごめんなさい」
なぜ国はこういうところに予算を使えないんだろう?と不思議になる。児相のやりとりがFAXと読んで思わずため息がもれた。
筆者は公的機関を批判してないが、どう考えてもこんな状態では子供も親も救えないのではないのだろうか。
とにかく読んでいて辛い本だった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
事件の検証をする事は大切なこと。ただし、そこから何かを学んで不幸を繰り返さないシステムを作らなきゃって思う。
提言されているネットワークには手がつけられているの?居所不明児童の捜索は継続しているの?昼間に公園にいる子に声をかけて、学校だけじゃなく地域からも居場所を奪う事になってしまったらどうしたらいいの?母親の方はそろそろ刑期が終わりそうだけど、妹さんの無事は担保されるの?
読後のモヤモヤが止まらない。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
2014年3月、埼玉県川口市で発生した強盗殺人事件。
70代の老夫婦が当時17歳の少年(孫)に殺された。
殺害の動機は、金目当てだったと報じられた。
日々目にする新聞には、切り取られた一部分しか掲載されてない。
それ以前の少年の生い立ちやそのときの様子も詳しくは知らなかった。
今回改めて少年犯罪の本質に迫るノンフィクションを読み、当時の毎日新聞には「居所不明児 無援の年月」という見出しで掲載されていたことを知った。
ここ数年、居所不明児となる児童を聞くが、それは親が子どもを捨てたり、もともと戸籍がなかったり…だとばかり思っていたが、この件は母親と一緒に行動を共にしながら学校へも行かずに野宿したりホテルを転々としていたことだ。
過酷な境遇で育った少年は、本来事件前に福祉行政が保護すべき「被害者」だった。
誰もが気づかずに見過ごしていたが故に、じわじわと追い詰められ事件を起こし「加害者」となった。
なぜ母親から離れなかったのだろうか。
母親にコントロールされている部分が大きかったように感じるが、信頼できる大人と接する機会が極端に少ない気がした。
社会的に孤立している状態である。
どこにも居場所がない…そんな子どもが少しでも減ればと思う。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
17歳の少年は、その日のお金を工面するためだけに祖父母を殺害。
彼の生活は両親、妹と共に、学校に行けない、ホテルや野宿暮らしの生活を4年も続けていた。
両親からの身体的、性的、心理的虐待の中、それでも母親に従うしかなかった彼への長期にわたる洗脳。
殺害したのは彼かもしれないが、その環境から助けられなかった社会にも問題がある。
自分の子どもには、何ができるか。
子供のためにどんな社会を作りたいか、できることを始めたい。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
祖父母を殺した少年事件の話。記憶にあるような気がしていたけど、たぶん、ネット上で記事を見たのかもしれない。
小学5年生から学校には通わず、ホームレースになり母と妹のために働いていた少年。
お金を得るために祖父母を殺せと母親に言われて殺した。
読めば読むほど、欝々としかしない。
色んな虐待ものを読んだけど、最終的に『子供が死ぬ』パターン読んだことがあっても、『人を殺す』パターンは初めてだなと思った。
でも、親子関係というのはある種の『強力なマインドコントロール』が出来てしまう関係だと思うので、なんでもできるんだなと思った。
怖いのは、書いてある事がある程度事実だとすると、少年はかなり賢くて勤勉な人間だなと思える。
この親の元に育たなければ、もっと有望な将来があっただろうにと思えるほどには、賢い。逆に書いてある事が全て少年の嘘だとしても、少年は賢い。
相手がどう思うのかが分かっていないと、他人をだますことは出来ないのだから。
事実か嘘かは、一旦脇に置く。
少年は母親にこれでもかというほど、振り回されている。保護の手が差し伸べられても、唐突に引っ越しを決めふらりと家を出る母親について行く。暴言や暴力は当たり前で、性的虐待まである。
そして、妹に対する『暴力の強要』までされている。
これでもかというほどの、虐待のフルセットにお腹がいっぱいです。
同時に、『どうやったら、そんな母親になるのか』の方が気になった。
本に書いてあるのは、『母親には会えなかったので、どんな人物か分からない』という事だけ。
周囲の話から、母親の親(祖父母)は「普通の人で、子供(母親の事)を可愛がっていた」という話だったということだけ。
だったら、なにがどうしてこんな人間になれるのだろうか。
子どもを働かせて、子供に対して『お前のせいで生活が苦しい』と責めたて、お金を用意させる。
虐待としては、ありきたり……なのかもしれないが、親のその思考をどうにかしなければ、子供は救われない。
少年はまだ若くやり直しの機会がいくらでもあるが、母親はまだ『妹』に接触する可能性があり、妹を風俗で働かせて少年の代わりをさせる可能性がある。
少年の事件は人を殺して終わりになったけど、妹にはまだ終わらない悪夢が残っている可能性がある。
次に死ぬのは、『妹』の可能性もあるわけで……そしてそれはきっと、『事件』にはならないかもしれない。
少年の事件の話なので、『少年にたくさんの支援者がいる』という話で終わりになったが、私はそれより『妹』と『母親』が再び接触する可能性があると書いてある方が、ホラーだと思った。性風俗に沈められる娘は注目を浴びない。
救われない。
親の権利が強すぎて、子供は踏みつぶされるだけ。