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おもしろかった
2019/12/04 23:08
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「第三の新人」の一人安岡章太郎による自伝的な昭和の回想。父の転勤に伴って京城、弘前、東京などを点々とする幼少期、浪人を重ね、大学に入学しても学業に実が入らない青年期、応召するも病気で部隊を離れる戦時下、進駐軍の兵隊の家の留守番をするアルバイトなど面白い話が多かった。東京オリンピックの記録映画にも関わっていたとは知らなかった。
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大正生まれの作家、安岡章太郎氏による、私的な昭和史。
教科書的な歴史では分からない、リアルな市民目線の歴史の変遷が感じられる。
あと何年で徴兵に取られると怯えながら過ごす高校、大学時代の青春を実体験できる。
徴兵されて戦地に送られたものの、発病して日本に送還された。同じ部隊の仲間は南方で玉砕、またはシベリア送還になった。戦後はカリエスを患って寝たり起きたりで作家活動し、結局90歳近くまで天寿を全うした安岡さんは強運というしかない。
呑気で鷹揚な感じの安岡タッチだが、悲運で死んだ友人は数知れず。結構ふてぶてしくなかったらこんな苛烈な時代には生きていかれないだろう。
東京オリンピック、ベトナム戦争前後のアメリカの雰囲気もリアルにわかって面白かった。
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1920年に生まれ、ソウルや青森、東京などで幼少期を過ごし、戦争と病を経験しながら「昭和」という時代を歩んできた著者の自伝的作品です。
ジャン・ルノワールの映画『大いなる幻影』が見られなくなってしまった時勢の変化に違和感をおぼえていた少年時代から、理不尽な軍隊生活から思いもかけず帰還し、さらに無気力な学生時代を送りながら、脊椎カリエスのために寝そべって小説を書きつづっていた、遅れてきた青年時代まで、著者の前半生は一見周囲の状況に流されているようにも見えながら、戦争の前後にわたる時流に対して距離をとりつづける態度がつらぬかれていることがわかります。それも、肩ひじを張って抵抗の姿勢を示すのではなく、世の中をながめながらやり過ごそうとするところが著者らしいような気もします。
戦後にかんしては、40歳になってアメリカにわたりそこでの人びとの暮らしをじっさいに目にしての所感のほか、安保反対闘争や連合赤軍事件などについての著者自身の立場が語られています。