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作品全体を通してとても無機質な印象を受けます。
特に匂いや味はほぼ感じられなかったです。
音については事細かく描かれており、古倉(主人公)は音からかなりの情報を拾っているのだけれど、「コンビニ店員」として必要な情報を拾うための音なので、これもどこか無機質な印象です。
しかし、コンビニに対する視覚的表現は「透明な水槽」「光の箱」と、とても印象的に描かれているのが他が無機質に描かれている分とても印象的です。
また、白羽の存在も印象的でした。
バイトの変な新人として入ったかと思えば、すぐに排除されてしまう。それは「ここが強制的に正常化される場所」だから。
コンビニでバイトしていた時の白羽は突拍子のない変人、危ない人物のように描かれ、コンビニ店員として真面目に働く古倉と対照的でした。
しかし、古倉と同棲(居候?)した後は古倉よりも白羽の方がずっと常識的な対応のできる人物としての側面を表し、対照関係が逆転します。
ここがとても面白かったです。
また、白羽の思考は誰もが多少持っている世間への不満の煮凝りのように感じられました。
最終的に古倉はコンビニ店員としてまた生まれる道を選び、白羽は去っていくのは果たしてハッピーエンドなのか…メリーバッドエンドなのか…。
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合理性の名の下に均一化されたコンビニという世界と、異物に対して同一化を求め続けるムラ社会的世界との往来を繰り返す主人公の冷静な視線と合理的な思考に笑ったりドキリとさせられたりした。
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ただ、コンビニで働く女性の日常を描いたものかと
思っていたけど
話はもっと重かった
おそらく
感情を持たないで生まれてきた人なのね
だから周りの人が悲しんだり怒ったりするのが
理解できず浮いてしまう
普通の人と同じになるにはどうしたらいいのか
わからない
ある日コンビニでバイトを始めたところ
マニュアルどおりにすれば大丈夫だと知った
マニュアルどおりにしゃべり
マニュアルどおりに仕事をする
普通の人になった気がする
逆にマニュアルがないと何もできない
何をしたらいいのかわからない
みんなが変だと言うので
誰かのマネをして普通を演じる悲しい人の話
誰か彼女を理解して
君は君のままでいいんだよ
と言ってあげて欲しかった
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ちょっと、軽めの本を読もうかなと思い、本屋さんでいろいろ探して、薄めの本だし、芥川賞受賞ということもあって、購入。
面白かったです。
正直、ちょっと難しかったですが。
生き方に正解はなく、いろんな人がいて、世の中成り立っているのかなと思ったりして。
いろんな事がすごく便利な世の中で、そこにはいろんな人が関わっていて、その人たちの人となりなんて、普通は気にしなくて、そんな世の中なんだなと思いました。
やっぱり、ちょっと難しかったかな。。
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普通とは何か。
生まれた国、時代にもよるけど、人間としての普通は決まった風になっている。
その普通に合わない人がいるのは当たり前。
古倉は変わってる人で、白羽はやばいやつ。
コンビニ店員として生まれる。
36歳、店員として15万7800時間。
コンビニ店員は色んな人がいる。
身近な人に影響される。
「ただ、少数派だというだけで、皆が僕の人生を簡単に強姦する」
「身体の中にコンビニの声が流れてきて、止まらないんです。私はこの声を聴くために生まれてきたんです」
あの男性もそうだったのかもしれない。
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面白かった。非常に興味深い。
対人関係を築きくい主人公。名前をつけるならばまぁ、発達障害の一種と考えられる(専門家じゃないからわからないけど)。でも、すべてがマニュアル化されたコンビニの中でなら、「コンビニの一部」として輝くことができる。
読んでいる方も、この人はコンビニの中でなら何の問題もなく、幸せで、非常に有能な店員なんだろうな、人間関係も良好で…と感じるが、小説のかなり後の方で、実は自分だけ店員たちの飲み会に呼ばれていなかったとわかる部分もあってじわりと切ない。
でも主人公本人は、誰かに怒ったり、人間関係がうまくいかないからと悩んだりする気持ちさえも欠落している。もちろん飲み会に呼ばれなかったからと言ってがっかりもしない。
小説だから少し大げさに描かれているけれども、こういう人はけっこうたくさんいるんじゃないかな、と思う。かつては・・・たとえば高度経済成長期には、マニュアルに従って黙々と、企業の一部として働けば、しっかりと社会の中で認められ、自立することもできた。でも現代は、単純労働は非正規化され、社会の中で認められにくいし、小説でも「コンビニのアルバイトで30代で独身?やばすぎる」という展開になっていく。一生懸命働いても、どんなに社会の役に立っていても、それだけではダメなのかな。
主人公は周囲の圧力に負け、一歩を踏み出そうとするが、コンビニのアルバイトを辞めてしまうと何をしてよいかわからなくなる。
コンビニのアルバイトでも、どんな単純労働でも、真面目にコツコツ働けばみんな報われる世の中ならいいのに、、、と思ってしまった。
ちなみに私も大学のときコンビニでアルバイトしました。あそこは本当に居心地のよい空間なんです。清潔な小さな箱の中に、過不足なく様々なものが並べられて。
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久しぶりに芥川賞作品を面白いと感じた。正常な世界に適応出来ない異物を排除しようとする社会を、分かりやすく物語の形に紡げる才能が羨ましい。私のような凡人は生きにくいと感じるだけで、上手く他人に説明出来ない。自分を認めない他人をひたすら攻撃する白羽の理屈も、勝手過ぎて小気味よかった。ラストでもう一度コンビニ人間として生まれる主人公の有能さが眩しい。子供時代の社会不適合エピソードは少々やり過ぎに感じた。
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主人公のような無機質な人間って、実際はいないと思うけど、みんなと違う感じ方とか常識の判断基準みたいなものが、完全に異質って言い切れないなぁと感じた。
自分だって異質な面を隠してるかも。
わいわいとおしゃべりしている時とか、そう感じことある。
コンビニでしか働けない、と言う主人公。
でも仕事ぶりや仕事に対する姿勢は、一流だ。
ラストシーンは、ホッとした。
コンビニ人間に、生まれ直して良かったね、と。
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2020/6/6読了
コンビニのために生まれコンビニで働くことに生きがいを感じる主人公とそれを取り巻く人たち。
変わり者とされている主人公が社会の中で唯一必要とされているコンビニという場所で働く。
でも世間はコンビニなんて、バイトなんてっていう目で見てきて、変わり者として見られちゃう。
変わり者と見られないためにあれこれ工夫はしてるけど、やっぱりみんなからは変わり者として見られてたんだなぁ。
感情が少ない主人公だから我慢できることとかあると思うけど、それが原因でみんなから腫れ物を触るように扱われてるのかもしれない。
自分も普通側の人間として、見てしまうだろうけど、果たして自分は普通なのか。自分の普通は他人の普通ではないのではないか。そういうことまで考えさせられる本でした。
展開から想像してたより良い終わり方で、我慢しなくていいんだ。自分は自分でいいんだと思えた。
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180924.芥川賞に惹かれて。読んだことのない作家だったこともあり。
終始読みやすかった。導入部分もテンポ良く、バイトあるあるから、なるほど部分もあって吸い込まれた。
幼少期の主人公の合理性?は正しさもありつつ、それをうまく正せる大人がいない悲しさもあった感じ。
主人公の理解者は妹だけと思われたが、最終的にはそれも虚だった。
普通というのは、一般化されたマジョリティによって変わっていくものでありつつ、結局のところ人間というのは昔から何も変わらない。マイノリティである同居人を通して多少感化された主人公。
終着としては、職人技と化した、血肉と化したコンビニ業に再度心が震わされ戻っていってしまう。悪くも良くもないが、ストーリーして進捗はあったのだろうか?
こんな停滞している主人公を変える、進めるようなキッカケこそ終着と思ったが。
登場人物があまりに一般的な彼等しかいないのもとても狭い世界に感じた。もちろん主人公の境遇、生き方がそうなのだから仕方がないが、18年という時間や、不特定多数の人物が訪れ関わるコンビニだからこそ期待があっても。
こんな期待は同居人の婚活願望レベルなのかな。
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前から少し気になっていて読んでみたのだが、個人的には面白い作品だと思えた
※この感想を読む前に この感想は自分の思ったことをただ書き連ねているだけなので、普通の感想とは異なったものになっていることを了承して読んでほしい
この本を読んでまず自分が思ったのは、本質的に人間として集団として馴染むことが出来ない主人公の異常性に不思議と思いながらも、共感してしまうものも多かった。
自分が何故他の人と違うのか、そんなのは自分ではわからない。
ただわかっているのは、自分が他の人からしたら異常な人間で、少数派な人間だということで、そんな自分はただ日々が苦しくならないように、周りに合わせている。
そんな主人公が私は自分と似ていると思った。
そしてこの物語の中で主人公とは違う、でも主人公と同じような集団が苦手な男性が出てきた。 多分、その男性を見て主人公に似ていると思った人は少なからずその男性と共通しているものがあると思う。
その男性は世間一般的に見て、異常ではあるが主人公と違い本質的には周りの人間と変わらない人物であり、ただ集団に馴染むことも、自分が苦労することも拒んでただ現実を見ずに夢だけを追い求めている、ニート・引きこもりの考え(こういった考えの人間が多いという意味で)と似ているものがると思う
そんな男性や様々な普通の人と出会い、主人公がどれだけ周りと異なっているのか、周りの人間にとってどれだけ主人公は周りと異なっているのか。
そんな主人公の異質さとその異質が受け入れられずに進んでいくこの社会を教えてくれる作品だと自分は思った。
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これは、面白い!
主人公には序盤からとても共感ができた。どこまでも合理的な台詞はとても痛快。その生き様が羨ましくすらある。よくある「普通の人」の「普通」の会話のシーンがあんなに怖いものだとは。気づかされた、という衝撃があった。
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世間から見た『普通』から逸脱していること。周りを安心させるための偽装カップル。扱われることのあるテーマだけど、ここまで極端なキャラを出してくるのはさすがクレイジー沙耶香。
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本屋で読み切れそうだったのでいつか読もうと思ってましたが、時が過ぎ・・・文庫化されてたので購入。
なるほど!こういう作品だったのか。という感想です。
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初沙耶香。芥川賞受賞作。まさに現代に生まれるべくして生まれた作品であり、時代が描かせた傑作である!この社会の闇が描かれ、皮肉も皮肉、読む人に因っては希望も絶望も与えるだろう——。私は絶望と、そしてある種の感動を味わった。コンビニ人間はこの世界に沢山いるに違いない——私もその一人だ。文句なしの星五つ。