電子書籍
スタジオジブリ第一作の思い出
2019/09/21 12:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KazT - この投稿者のレビュー一覧を見る
スタジオジブリの社員として天空の城ラピュタの制作に関わった著者が、スタジオジブリ第一作を制作する宮崎駿の姿と著者自身の思い出を語ります。
著者が「地蔵のような人」と称する宮崎駿は本作に対して「失敗できないんですよ」と口にし、毎日、朝10時から椅子に座り、ほとんど席をたつことなく深夜1時、2時まで絵コンテを描き、動画をチェックしていた。
順調に絵コンテを書き上げていたが、唯一手が止まったのは、シータとバズーをどうやってふたりきりにして、自然にシータが「バルス」の存在をバズーに教える場面を作るか。
2時間4分に映画を納めるため多くの内容をカット、変更しつつも、映画の内容が不自然とならないギリギリの線を死守し、レーザーディスク1枚(2時間)に入れること断ったなど、制作秘話が語られます。
投稿元:
レビューを見る
「天空の城ラピュタ」で制作進行を務めた著者の、ジブリ入社前からラピュタ完成までの回顧録。
当時は現在のようにデジタル化されていなかったため、宮崎監督が作成した絵コンテを元に、レイアウト、原画、動画を人の手で作っていた。それゆえに膨大な工数がかかり、開始直後から常に納期との闘い。
特に各部門の橋渡し的な役割である制作担当は、制作の遅れを取り戻すために自分の時間を削ってスケジュール調整を行うため、最も過酷と言われているらしい。著者も昼夜関係なくスタジオにこもり、命を削って仕事をしたとのこと。
今の感覚では、体育会系でブラック企業だと言われてしまいそうだけど、当時の創設されたばかりのスタジオジブリは宮崎監督を慕って集まった若者が多く血気盛んで、ジブリの語源のごとく熱く自由な雰囲気だったらしい。
そんなエネルギーに満ち溢れたチームの中だからこそ生まれた名作だと思うし、それくらいの厳しさの中でないと生まれないものなのかなと思った。
著者も述べているように、宮崎駿監督は、「天才」の一言で片付けては行けないほど苦労されていることが分かる。完成から公開まで10日というギリギリの時間の中で、最後の最後まで物語の完成度を高めていったことが記録されていた。
タイトルにもある「もう一つのバルス」のエピソードはその凄さがよく分かる。何気ない手の向きの変更によって物語のイメージが全く変わってしまう。
会社の存続がかかったプレッシャーの中で、最後までこだわって完成させた精神力は、巨匠と呼ばれたる所以なのかなと思った。
「アニメーションは、スタジオという筒の中にスタッフを詰め込み、監督という棒をそこに突っ込んで、押したらポンっと出来上がる、ところてんのようなものではない。
プロデューサー、監督をはじめ、多くのスタッフや関係者の汗と力を結集し、常に物語や作画・美術の質、スケジュールや予算と闘い、もがき、苦しみ、紆余曲折の末に生まれるものだと、僕は今も思っている。」
そうした奇跡のジブリ作品の名作の数々を楽しめる環境にいることをうれしく思う。
投稿元:
レビューを見る
読みやすかったし、ラピュタの全編を通してやスタジオの裏側を知れて面白かった。木原さん目線ではあるけど宮﨑駿監督のユーモア溢れる人となりもまたひとつ知れてイメージが膨らんだ。色彩設定の保田道代さんのことは知っていたけれど、制作進行というお仕事や、ジブリの世界観を支えてきたスペシャリスト達の人物像が見えてクレジットを見る楽しみが増えた。
すっごく便利な時代になったけど、以前勤めてた会社で仲良しのおっちゃんが、「あの頃は今よりずっと忙しいし大変だったけど、産業社会がこれから新しく出来るものばかりで楽しかった。みーんな前向いてた」みたいな事言ってたけどそういうことなのかな。
次はトトロの時代の話も読んでみようと思う。