紙の本
その正体はインスタグラム的エッセイ
2020/09/09 16:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:AKHT - この投稿者のレビュー一覧を見る
結論は「知的好奇心の旺盛な人の期待には応えられない」書であり、「おしゃれインテリアや雑貨などの雰囲気を期待する人」には良書。
「翻訳できない〜」というタイトルを見て、知らない言語とその文化について知的興味から本書を手に取ったものの、ページをめくると「期待したのはこれじゃない」感でもやもやする読み応えの無い書でした。
装丁を見れば分かるように、専門的な硬い内容を期待はしませんでしたが、それにしても中身が軽薄に過ぎました。
右ページに「翻訳できない言葉」とイラスト、左ページにその言葉に関する文章があり、期待通りであれば左ページの文は「その言葉が生まれた文化的背景への入り口」となる内容が平易な言葉で書かれているはずですが、実際の文は「著者の個人的な印象や感想」です。これが致命的に本書を軽薄にしています。
必要なものは「個人的印象」ではなく「文化的掘り起こし」です。それが浅過ぎます。本書はせっかくことばとその文化を扱っているのに、文化の中身が薄っぺらい。
このせいで、読んでいる時の印象は「おしゃれインテリアショップでオシャレ小物を見て感じるほっこり感」であり、言葉と文化を体験する感覚ではありません。
これは、北欧雑貨店に行くと北欧デザインの物に囲まれて「なんとなく北欧の文化に触れた気がする」のと同じ効果。でも、雑貨ではなく書物の場合「気がする」だけで終わるとものたりないのです。
本書の場合、他文化理解の端緒にもならない編集であることが非常に残念です。(ちなみに、私はおしゃれインテリアショップや雑貨店が好きですが、書物に対して雑貨と同じ性質を求めませんので、期待はずれなのです。)
この原因は「著者がそれぞれの文化圏に関する知見を持っていない」ことにありそうです。著者はいくつかの国と地域に実際に住んでいたようですが、個人体験に留まり、それぞれの言葉が内包する文化・歴史・言語に関する一定水準の知見を持っているわけではなさそうです。その知見の無さが本書を「単なる個人の印象」に留めており、雑貨の質にしているのでしょう。(最終ページに「※本書で取り上げられている単語の説明は、著者独自の感性により解釈されたものです。」とあるのがその証拠です。)
これがもし「知見を持つ人が専門用語を使わずに平易な言葉で文化的背景を上手に紹介する」文になっていれば、雰囲気を楽しみたい人から文化を掘り下げたい人まで楽しめる優れた絵本になったはずです。ここは著者よりも編集者の責任ですね。
この感触、どこかで体験したという既視感があり・・・「インスタグラム」に酷似しています。
絵や写真が大きくあり、そこに投稿者の言葉が添えられる。そのほとんどが専門知の無い個人的な印象や感想。それがインスタグラムであり、まさにそれと同じ構造があるのです。そう、本書を「インスタグラムに綴った個人エッセイを書籍にまとめたもの」だと解釈すると筋が通るのです。本書の正体は「インスタグラムの印刷版」なのです。
最後に良い点を書きます。
著者は知に欠けるものの、言葉と文化に対する好奇心は純粋で、なにより文化に対して誠意があります。どの文化も尊重し偏見無く扱おうとする姿勢が見られるところは好感が持てます。本書の人気の原因はこの「文化に対する誠実さ」にあるのでしょう。
比較や批判に陥らず、ひたすらに言葉それ自体の文化的面白さと豊かさを皆と共有しようとする姿勢は美しいです。
ことばと文化の関係性に興味のない人たちにその面白さを気づかせる役割を担っていることを評価して星を2つにしました。
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以前FBで一部が紹介されていて、面白いなと思っていた『翻訳できない世界のことば』。
きれいな絵本みたいな楽しい本です。
他の言語にすると長い説明が必要な概念が、ある言語を話す人たちの間ではたった一語で表せてしまうぐらい普遍的でインスタントにイメージできるものである…ことばと文化の結びつきの強さを感じます。
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素晴らしいテーマ。他の言語ではとても一言では言い表せないような意味を、一語で持つ言葉を絵とともに紹介している。絵もイマジネーションに満ちていて素敵。
バナナを食べるのに要する時間「ピサンザプラ」
トナカイが休憩なしに動ける距離「ポロンクセマ」
そんな、地域に根ざした言葉はなるほどなーと思う。
誰か来ていないかと、何度も外に出てみること「イクトゥアルポク」
笑うしかないほどひどいジョーク「ジャユス」
なぜそれをそのままでなく違う一言で表そうとしたのか、不思議な言葉もたくさん。
日本語はこもれび、ぼけっと、わびさび、積ん読。
英語圏の著者からみれば、これも意外な言葉なんだなぁ。わびさびはまぁ分かるけど、こもれびとかもないのか・・・。
愛する人の髪に指を通すしぐさ「カフネ」
心が快い感覚「ヘゼリヒ」
そんな、愛情にまつわる言葉もある。
何度も読みたい本。
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いったいいつ使う言葉なんだろうっていうのがあったり、それをひとつの言葉にするなんて素敵だなって思ったり。日本の「木漏れ日」「わびさび」も素敵よね。
世界はひろい。文化はたくさん。言葉もたくさん。
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最初は翻訳できないという意味がわからなかったが、日本語もいくつか載っていてその言葉を外国語に直すと何て言うんだろうと考えたら翻訳できない外国の言葉もとても素晴らしいものに思えた。どうしてそのような気持ちを名詞にしたんだろうとか、色んな文化の感受性を味わうことができた。
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レビューの高さに惹かれて買って読んではみた。
絵本としては、ありで、悪くはない。
もう少し何か欲しい気がしたが、求めすぎだろうか?
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タイトルと装丁に惹かれて購入
たまにパラパラとみて「へぇ」といいたい本
TSUNDOKU は翻訳できないらしい(笑)
狭い日本だからできたことばなのかな
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Struisvogelpolitiek(ストラスフォーヘルポリティーク)
Dutch(オランダ・名詞)直訳すると「ダチョウの政治」
意味は「悪いことが起きているのにいつもの調子で全く気づいてないふりをすること」なんですって。おもしろいなぁ。
世界にはいろいろな文化があって、その土地の言葉でなければとても一言では言い表せないコトバがある。
覚えても使う機会は一生ないかもしれない。でも、どの言葉もそれぞれのお国柄が感じられて、フリガナ通り音読してみたり、絵を見ているだけで楽しい。
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読む前は子どもに見せてあげたいと思っていましたが、恋愛をはじめとしてとても繊細で微妙な心の機微を切り取った言葉も紹介されていて、ちょっと難しいかなと思いました。
あとドイツ語で「ぬるいシャワーを浴びる」って紹介されてましたけど!
これって日本語でいう「ぬるま湯につかる」に近いですよね!
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ブクログで見つけて手にしたんだけど、これは買って正解だった!
もう友達だけじゃなくて世界中の人に教えてあげたいくらい!!
自分が言語を大学で専攻してたってのも大きいかもしれないけど、すごく面白かった
著者のコメント・解釈から、そんな言葉があるのか!とか、こういうのを大切にしてる文化なんだなーとか思いながら、その言葉を使う情景を思い浮かべる
この繰り返しなんだけど、いろんな言語のいろんな想い・物を表す単語がランダムに出てくるし、それぞれの意味に驚いたり同感したり、ニヤニヤしたり、素敵だ!って思ったりと印象もバラバラだから、全く飽きることなく読めた
薄いけどボリューミーで、だけど読み終えると物足りなくて、part2とかないの!?って思っちゃった
名前さえも聞いたことがない言語から学んだことがある言語といろいろあったんだけど、各言語からほんの数個の単語だけなのに、言語ってその文化をよく表してるなーって思った
繰り返し読んでも面白いし、著者が言うように誰かにその単語を当てはめてみるのも面白そうだし、自分で単語を調べて自分なりの解釈をするのも面白そう!
まぁ、最後のは母語でない限りどうしても翻訳者の解釈が間に入るけど...ここが難しいところだよね! 説明と解釈が完全一致なんて基本しないの 母語が同じの人との会話でも誤解が生じるんだから母語が違う人との会話なんてもっと相互理解が難しいよね
でもだからこそ、想いを伝えることを、理解しようとすることを怠っちゃダメだよね
こんなに人に薦めたくなる本は初めてかも!ってくらい、いい本だった
(いつもは周りの人には教えずに、読んだことある人と、これ面白いよね!って話したい派)
プレゼントにも適してるかも! てか誰かにあげたい笑
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素敵なイラストと素敵な言葉。
絵本のような本でした。(絵本かも?)
日本語も幾つかあって嬉しくなった。全部素敵な言葉だけど、使いそうな?ものをメモ。でも選びきれずに大量。
COMMUOVERE(Italian)
SAMAR(Arabic)
GEZELLIG(Dutch)
MERAKI(Greek)
KILIG(Tagalog)
KUMMERSPECK(German)
VACILANDO(Spanish)
UBUNTU(Zulu)
RESFEBER(Swedish)
TIÀM(Persian)
GOYA(Urdu)
SZIMPATIKUS(Hungarian)
FORELSKET(Norwegian)
WALDEINSAMKEIT(German)
KALPA(Sanskrit)
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言葉は文化や習慣や生活に根付いていて、一見翻訳されてる言葉でもニュアンスが伝わっているかどうか、謎だなぁ。
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日本語もいくつか紹介されていたが、なぜこの言葉を選んだのだろうと思ってしまうほど、ありふれた気にも留めない言葉ばかりだと感じた。
私たちにとっては取るに足らない言葉かもしれないが、他の文化から見れば国民性や文化に触れるきっかけになる言葉なのかもしれない。
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先に読み終えた家人が「題名は「翻訳し難い世界の言葉」がもっと実態に即している」と言っていた。
家にある辞書で確認しつつ読んでいる。
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絵本のような装丁で情報量は決して多くないですが、ぱらぱらとページをめくる度に柔らかな色彩のイラストとともに新しい発見があります。
少数精鋭で選ばれた言葉のなか、日本語は最多出場タイの4つが登場しています。作者の琴線に引っ掛かるものがあったのでしょう、中には本好きには耳が痛い単語も…。
他の言語では訳せない言葉だからこそ、その国や地域特有の光景や文化が言葉から伝わってきます。景色を表現する言葉はつい想像を膨らませ、いつか足を運びたいと思うほど羨ましく感じるものもありました。また、日本固有の言葉に込められた文化や所作も大切にしていきたいと思います。
ユニークな切り口でまとめられた本。他の言葉ももっと知りたい。