紙の本
人体の不思議
2019/01/11 11:29
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:めめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読みやすいですし、大変面白いです!
学術本やドキュメンタリーは、翻訳ものだと質が良い作品が多くて良いですね。
ある程度実績を出したもののみなので篩にかけられる&
翻訳なので無駄が省かれやすい からでしょうか?
概要レベルの細胞学知識は前提として必要かもしれませんが、
全く知識がない場合でも平均以上に頭が良ければ理解できると思います。
(私には無理でしたが笑)
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90年代以降の免疫学の成果
免疫機能にまつわる謎解きドキュメンタリーとして面白いはずだが、詳細過ぎ、情報量が多過ぎて門外漢の私には消化し切れなかった。読破は諦め。
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牛痘、トル様受容体、樹状細胞、免疫チェックポイント…。免疫学の興りから最新の話題までを、基礎研究から医学応用に至るまで幅広く紹介した良書だ。
免疫でよく登場する、自己と体外から侵入してきた非自己を区別し、非自己を攻撃することで自己を守るという概念。分かりやすい考え方ではあるが、自己免疫疾患のように、細かい点を見ていくと例外も多くある。筆者は、免疫は多くのシステムが寄り集まったものであり、その全体像を一つの概念・原理で言い表すことは不可能とまで言い切る。本書は、その不思議な免疫学の、不思議さそのものを味わうことのできる本だ。
自分は一通り免疫学を大学で勉強した身だが、それでも、本書で初めて知ることもあり、勉強になったし読んでいて面白かった。筆者も冒頭で書いている通り膨大な免疫学の知見を本書で全て網羅できているわけではないが、そのかわり研究者へのインタビューを通して発見に至る経緯を紐解いたり、研究者どうしの人間関係に切り込んだりしているところは、教科書では知ることのできない内容であり興味深かった。要は、教科書で紹介している免疫学が知識を得るためのものであるとするならば、本書で語られているのは、免疫学という学問の、今に至るまでの物語なのだ。また、本書を読むと、教科書にさも常識のように載っているような内容も確立されたのはごく最近だということが分かる。免疫学という分野がいかに最近の発展が目覚ましく、また現在も新たな知見が次々と生まれている分野だということを教えてくれる。
本の構成について少し。巻末に注がたくさんあるが、注釈・補足的内容と、出典を表した内容が混在していてちょっとわかりにくかった。注釈は読みたいけど出典はそんなに興味ない、という読者もいると思うので、分けて書いてくれた方がわかりやすかったかなと。
あと、タイミング的なこともあり宣伝としては本庶先生のPD-1が分かる本という紹介をされていたが、免疫チェックポイントは最後の章に出てくるだけだし、医学的応用についても多く書かれているわけではない。単純にPD-1について知りたいということならそれを専門に特集した本がたくさんあるのでそちらを読むべきで、本書はもっと広く免疫学全体を俯瞰し、その複雑さと素晴らしさを味わうための本だと思う。
と、周辺の所には少し思うところがあったが、本筋の所の素晴らしさは上述の通り。医学応用の話も語られているが、個人的には、基礎研究の面白さを味わえる本としてぜひおすすめしたい。
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胚発生、神経系の生成、循環系の構築と維持、脳の環境に合わせた成熟 - 受精卵から成体に至り、その有機体を維持する仕組みがDNAによって構築と伝承が行われているのは奇跡のように不思議なことだ。
明らかになりつつある生体の免疫システムもそういった生物の奇跡のようなシステムの中のひとつだ。本書は、免疫システムに注目し、その解明の歴史とこれまでに分かっていることについて一般読者に向けて解説をしたものだ。
免疫システムの解明がここまで急ピッチで進んだのは、それが人の健康と寿命の維持に役に立ち、産業として利益を生む可能性があるからでもある。本書でも紹介されるコルチゾールなどはその事例の一つだろう。本書の中でも経済的に成功した人々が出てくるし、多くの研究者が新しく、そして役に立つ発見を目指して研究を進めていることがわかる。免疫システム解明の物語には、一般にはあまり知られていないが、この世界ではおそらくスターである研究者が何人か登場する。その中には坂口氏やノーベル賞を受賞した本庶氏など日本人も多く含まれるのである。
免疫システムは、がんと老化の克服という長寿化を達成した暁に人類が、次にアタックすべき山を攻略するための鍵になるものである。もしかしたら、もっと着目されてもよいのかもしれない。
本書の内容をきちんと理解するのであれば、T細胞、B細胞、マクロファージ、パターン認識受容体、樹状細胞、といったものが何ものであるのかを具体的なイメージを持って理解する必要があるのかもしれない。しかしぼんやりとしか理解していないながらも、本当にここに書かれたものが自分の体内で起きているのかと思うと全く不思議なことである。本書の原題は、”The Beautiful Cure”である。免疫システムの度を越えた精妙さは、まさに「美しい」という形容詞で表現するより他ないものなのかもしれない。
免疫システムがこれから我々が自分のことを理解するにあたって必須のものであるとするならば――おそらくは必須ものとなっていくだろう――ぜひ手に取ってもらいたい本である。
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免疫システムに魅せられて今まで教科書類で調べてきて、どうしても理解できない、読み取れない部分がいくつもあったが、この本に出会ったおかげで、いくつか解決した。
免疫システムは想像しているよりも複雑で、「こうすればこうなる」とシンプルな一行では正しく伝えられない。
とてつもなく、深い。参考文献である論文をすべて読みたいが、自分の知識その他が及ばず惜しい。できる範囲で追い続けたいと思う。
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ラルフ スタインマン教授の樹状細胞発見と治療応用の話を始め、稲葉カヨ、坂口志文、本庶佑など日本人研究者の貢献にも心を動かされる。
免疫研究の歴史を俯瞰できる良書である。
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最近コロナウイルスが大流行しているが、一般的に人体に入ってきたこのような人体に害を及ぼすウイルスは人の免疫細胞によって駆逐される。
翻って、なぜ人の免疫細胞はこのコロナウイルスを「害を及ぼす」とわかるのだろうか?
また、麻疹や風疹は一度かかると免疫がつきそれ以降は発病しない性質を持つ。なぜか?
このような質問は免疫学のかなり基本的な問いのように聞こえるが、実のその詳細はあまりよくわかっていないらしい。
本書の論点はそこであり、ここらへんの歴史的な経緯と現在我々がわかっているところの説明をしてくれる。
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スタインマンが生前に人類に与えてくれたものは、新しい家ではなく、人体に関する新しい考え方だった。私たちは、体内を循環する血液が酸素と栄養素を運んでくることを何世紀も前から知っていたが、スタインマンと、彼のあとに続いて共に樹状細胞について研究するようになった世界の大勢の科学者は、人体の体内にあるもう一つの偉大なダイナミズムの詳細を解き明かした。私たちの体内では、さまざまな種類の免疫細胞が器官や組織とリンパ節のあいだを行き来し、私たちの命を絶えず守ってくれていたのだ。(p.94)
顕微鏡や望遠鏡のレンズを通して、私たちは宇宙や人体のなかにある新しい世界を目の当たりにしてきた。新しい世界の見え方、なかでもとくに人体内部の見え方を改善してくれる新たなテクノロジーは、これからもずっと医学研究に貢献し続け、その重要性を増していくだろう。(p.172)
ある著名な免疫学者は次のように書いている。「これほどの大変革の場合、貢献者としてだれか一人の名前をあげることなど到底できるものではないが、チェックポイント療法に関しては、ジェームズ・アリソンの功績がなければ誕生していなかったと言えよう」。私には、どちらの意見も正しいように思える。新薬の誕生には、大勢の努力とたった一人のひらめきの両方が必要なのだ。(p.276)
私たちは、自分たちが何を解決しようとしているのかを深く考え、今、立っている場所から一歩ずつ慎重に進んでいかなければならない。たとえば聴覚を失った人全員が、音の聞こえる世界に参加したいと願っているとは限らない。恐ろしいことに、1950~60年代の英国では、同性愛は女性ホルモンのエストロゲンや電気ショック療法による治療を必要とする病気だと考えられていた。まったくひどい話である。化学はさまざまな顔をもつが、科学に求めてはならないものもある。人体に何らかの完璧さを期待し、それを理想として追い求めるような姿勢は、科学のあり方としてふさわしくない。(p.306)
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難解だけどmindblowing.
個々の免疫細胞の働きはほんとに小宇宙でただ驚きの連続。それらを理解し役立てようとする何十年もの研究の積み重ねの一方で、なぜ老化するのか?など答えがまだない問いも残っている。
「何を知っているかではなくその知識を使って何をしたか」が重要。
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「美しき免疫の力」 https://nhk-book.co.jp/detail/000000817572018.html おもしろかった。天然痘とか周知の話から最新の研究まで。時差や夜勤が免疫系に及ぼす影響やアレルギーと衛生の関係など現代生活に絡めた内容が興味深い。COVID下で個々の人体上で急激に衛生が強化された影響が次世代以降どう出るのか興味あるなー(おわり
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免疫を利用した治療の歴史が描かれる。
なかなか興味深かった。
日本人科学者も結構登場していて面白い。
日本も免疫研究では結構功績をあげているのだなぁ。知らなかった。
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血液検査の結果を見た時の感想が増える本。
私たちの体は、とんでもないバランスで成り立ち、わからないことばかりで、たくさんの生き物が存在している。作者の言う通り宇宙です。
難しいなと思うこともありますが、ストーリー仕立てで読み進めることができました。
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バッタを扱った研究者らがバッタアレルギーになって、ハエに研究対象変えた件で爆笑!バッタアレルギー!あるんだそんなのw
第一部では以下過程が書かれていた
樹状細胞の発見、動態の解明、ワクチンの開発
インターフェロンの発見と応用
サイトカインの発見
第二部では、・・・難しかった
免疫システムの複雑さ、さまざまな条件下での面気質手もの変化、見たいの薬について書かれていた。
盛り上がったのは、樹状細胞を利用したワクチンの利用
研究者スタイマンガ肝臓がんになり自分の体で臨床実験するところが熱くなった。寿命数週間から数カ月と言われていたが、4年以上も持ちこたえたのはやはり何かしら効いていたことを指名しているのではないだろうか?
また新しいワクチンをFDAに緊急申請し、それに数日でOKを出したくだりも胸が熱くなった。さすがアメリカ。
ここでは日本人女性研究家の存在も書かれており、おぉって思った。今は京大にいらっしゃるらしい。
正直内容を理解するのは難しかった。
もう一回読み直してが概略が浮かんでくるだろうなと感じた。細切れに読んでいったのが問題だったのかもしれない。最終章に、富豪が出資し、6つのがんセンターをくっつけ、情報共有をし研究する施設が紹介されていた。やはりアメリカ、規模が違うなと感じた。この施設、やはり日本の施設は入ってないんだろうなとも。
オーダーメイド免疫治療にも触れており、今後も経済的格差により医療格差が増大するんだろうなと感じた
以下ライブ感想文
ワクチン ラテン語の牝牛が語源となる。初めの試みは、1721年天然痘の患者の皮膚や膿を被験者(囚人)6名に塗り込むなどして生き残るか実験した。被験者は回復し、死刑判決と天然痘から解放された。これをもとに英皇室が摂取をしたことで巷で有名になった。1796年エドワード・ジェンナーが「牛の乳しぼりに従事する女性は天然痘に罹らない」を証明した。ブロッサムという牝牛から天然痘を移された女性、サラ・ネルメスから膿を採取、8歳の少年ジェームス・フィリップスに接種し。後に天然痘患者の膿を摂取したが発症しなかった。この後大規模な実験を続け、75ページに及ぶ長編論文を自費出版で発行し大成功を収める。数年後ジェンナーの友人がラテン語の牝牛を語源にワクチンと命名した。28
アジュバンド ワクチンの働きを助ける効果のある添加物。免疫賦活剤。補助するというラテン語が語源。
ジフテリア毒素に対してアルミニウム塩。水酸化アルミニウム。
104
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免疫学とその研究の発展、研究の実際的な描写とその大変さ、研究の医学への応用の試みと失敗、研究者たちの個性豊かなエピソード、そしてなにより人間の体の圧倒的な不思議と神秘
全てがバランス良く描かれていて、読みやすく、面白い。
著者自身が免疫学の教授で豊富な知識を有しながらも、膨大な未知を有する人体への謙虚な姿勢も持ち、さらにそこにワクワクする心も持っている。本書で紹介される研究者の多く(紹介されない多くの研究者もおそらく)もそうである。こういう方がのびのびと研究をすすめられる環境が世界中にあってほしいと願う。
また本書は多くの研究者へインタビューを行い作り上げているとのことで、著者のその行動力、コミュニケーション力、文才にも驚く。
免疫という人間の体の中と研究という人間の活動、その両方にワクワクすることができる優れた本