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私は昔、箱根の彫刻の森美術館で
陶板で複製された、原寸大の精巧なレプリカを
見たことがあります。
採用された出版社が、その美術館を運営していた
メディアグループのひとつで、グループ全体の
新任研修の一環として訪れたのです。
研修プログラムの中の限られた時間でしたが
私はそのすべてを…ゲルニカの前で過ごしました。
動けなかったのです。
中央の馬のいななきが、絵から聞こえてきたのです。
西洋美術をそれなりに愛し、自分でも油絵を描く私が
それまでほんの少しの興味もなかったピカソの作品。
作家の思想が強く発せられる美術品への
「言葉にならない」という最大級の賛辞が
誰かの経験に根ざして生まれた本当のことなのだと
体の芯からわかった日でした。
「ゲルニカはあなたのものでも
私のものでもない。
私たちのものだ」
この言葉を想像以上のかたちで具現化した人々の
ピカソやドラの想いを受け継ぎ、戦い抜こうとする
情熱に、心から共感しました。
ストーリーはフィクションであっても
その高潔な思想には未来への期待をこめて
惜しみなく喝采を贈りたいのです。
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1930年代のパリと2000年代のNY。クルクル時代背景が変わることに序盤はついていくのが大変でしたが、展開が進むにつれてどんどん引き込まれて行きました。その時代を生きるということは、やはり意味があって生かされているのかな。
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芸術は、飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ。というピカソの言葉は力強く、この本を読んだ後はさらに重みを増す。
『暗幕のゲルニカ』に限らず、マハさんの本に登場する女性キャラクターは皆生き生きしていてかっこいい。ピカソの愛人ドラ・マールも、MoMAのキュレーターの八神瑤子も、固めた意思は決して曲げず、最後まで自分の足で立っている。
2003年に、実際に国連のゲルニカのタペストリーに暗幕がかけられたことは本書で初めて知った。そしてそれを知ると同時に、芸術が単なる飾りではない、敵に立ち向かう力をも孕んでいるのだというピカソの言葉が証明されているような気がした。ただの飾りならば、暗幕をかける必要はないはずだ。それだけのメッセージを抱えていて、脅威に感じたからこそ暗幕はかけられたのだから。
本書を読んでいて、自分は西洋美術やモダンアートについてほとんど何も知らないんだなぁと感じた。けれどマハさんの本はそんな初心者にも分かりやすく、かつ楽しく道を示してくれる。物語自体が面白くもあり、それに付随するアートや歴史の知識も吸収できるからさらに楽しい。
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1937年のスペイン内戦(ゲルニカ)と2001年の9.11.がある2人の人物によって繋がっていくのがとても面白く感じました。
私は中学校の社会科の資料集でしか、ゲルニカを見たことはありません。その時は不吉で、薄気味悪い絵だなという感想しか湧きませんでした。しかしこの本を読み、絵に込められたメッセージ・願いをもう一度考えて、実物を見に行きたいと強く思いました。
(実物は3.5m×7.8mと非常に大きな絵画だということもこの本で初めて知りました。)
1937年・2001年の女性主人公がアートを通して、戦争と戦う姿にはとても勇気をもらいました。
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けちのつけようのない五つ星で、この本に出会えたことを感謝している。
一ページ目から、21世紀のアメリカ、そして大戦前、最中のフランスを中心として描かれる八神キュレーター、ピカソ、ドラ、バルドら、アートを愛し、その力を信じた者達の戦いに引き込まれる。
この本ははまります。
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絵画に疎い僕は「ゲルニカ」の存在すら知りませんでした・・・こうして興味をもたせてもらえる作品は有難いです。
ピカソだけでなく、当時のヨーロッパの戦争の歴史も。
名作だと思います。
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ノンフィクションとフィクションの境目がわからない物語の構成が、史実をより魅力的に、フィクションにより深みをもたらしている。アートが持つ力について新たに考える機会になった。マハさんの小説を読むと、心が豊かになったように感じる。それは、きっとアートを通じて何か大切なものを受け取ることができるからだと思う。読んで感じて、熱い思いで胸がいっぱいになった。
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・芸術は飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ。パブロ・ピカソ(P6)
・けれども「誰にも文句を言われる筋合いのない人生」が、ふとつまらなく思えてしまうことがあった(P64)
・あなたが「それ」を手放していいのは、あなたが、自分の命を賭けて何かを・・・誰かを守りたいときだけ(P409)
・幾百もの眠れない夜、白い鳩はいつも傍らで瑤子を見守ってくれた。元気を出して、負けないで、などと絵の中の鳩が
語ってくれるはずもない。それでも、鳩は、ただ羽ばたいて、静かに主張していた。私は飛ぶのだ、と(P475)
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原田マハさんのアートミステリー。
読みながら、表紙の「ゲルニカ」を100回くらい見直してしまう(苦笑)
ゲルニカのことは知っていたけど、こういう経緯で描かれていたとは…
精力的なピカソの存在に圧倒されます。
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「ゲルニカ」を巡って1937年のパリから始まる物語と、2011年の9・11事件後のニューヨークから始まる物語が交互に描かれる。
こういう小説をアートミステリと呼ぶらしいが、「ゲルニカ」そのものに謎らしい謎はないので、なぜ無理に別の謎を作ってまでミステリに仕立てたのか疑問。ミステリ仕立てにしなくても充分に面白い小説になったと思うだけに残念。
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天才ピカソの事が少しわかりました。
銃、テロには筆を~~
【本文より】
スペイン館で「ゲルニカ」が公開された、その日。
その全貌を初めて大衆の前に出現した「ゲルニカ」の前で、敵陣視察とばかりにやってきたドイツの駐在武官たちと、ピカソは向かい合っていた。
武官のひとりが、ピカソに訪ねた。
~この絵を描いたのは、貴様か?
ピカソはたじろきもせずに応えた。
~いいや。この絵の作者はあんたたちだ。
このやりとりに会場は騒然となった。
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大変読み応えがあり、使命に燃える熱い情熱に何度も胸が熱くなった。
やはりマハさん大好きだ!
絵画に関する知識はないけど、私も初めてピカソの絵を観てからピカソは大好きなので、「ゲルニカ」に込めた反戦と平和のメッセージに深く感銘を受けた。
どこまでフィクションなのか、そのギリギリのところがミステリーで粋。
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MoMAのキュレーターの八神瑤子は9.11事件により夫を亡くした。世界を震撼させた21世紀を代表するこの事件に対するアメリカのイラクへの報復と20世紀を代表するナチスドイツによるフランス、スペイン制圧。
この本は、時が経っても止まない武力制圧に対し「ゲルニカ」を通して戦争の無意味さを読者に説いている。
パリ万博スペイン館で展示するためピカソが描いた「ゲルニカ」は戦争がいかに愚かで残虐であるかを権力者たちに知らせるための強力なメッセージ、または、未来への警鐘ともいえよう。
瑤子はイラク空爆を行おうとしているアメリカにおいてこの作品を展示することで、戦争が最も醜い行為であることを訴えようとした。
「ゲルニカ」が町の名前であったことすらもしらかった自分が恥ずかしい。バスクのリーダー、「ウル」の妻「マイテ」が母から預かった「鳩」がピカソの愛人「ドラ」の「鳩」と結びつけるところにマハさんの心憎い演出を感じた。
楽園のカンヴァスが面白かった人にはお勧めしたい一冊です。
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読む前は、アートサスペンスが想像つかなくて、もしかして私には難しい?と思いましたが、最初の最初からのめり込んで読めました。最近、あまり読書の時間が取れず、夜寝る前の数十分が楽しみになるほど。
良い読書ができて、とても満足。
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楽園のカンヴァスが予想を超えておもしろかったんで、
2作目のゲルニカを!
ピカソのゲルニカこそ、
始めて見て「なんだこれ?意味不明!」
と、
思ってキュビズムわからん!
と、
なった作品です。
これ、
スペインに実際にあるゲルニカって都市に空爆が行われ、
それに、
影響されてピカソが描いた反戦の意が篭ってる作品なんですね。
知りませんでした。
作中では、
国連安保理の会議場に飾られてることになってますが、実際は違うらしい。
物語的には、
国連安保理の会議場に飾られてるゲルニカに暗幕がかけられた!
なぜ?
それは、
イラクへの攻撃が戦争をおっぱじめることで、
反戦のシンボルであるゲルニカが飾られてるところで、
攻撃します!
と、
皮肉めいたことできんから!
で、
誰がそんなことした?
それは、
主人公の八神瑤子なんじゃないかって!
ピカソがゲルニカを描いてる時と、
9.11のアメリカ同時多発テロの時代とを交互に、
ピカソの彼女のドラ・マール視点と、
MoMAのキュレーターで、
パートナーを同時多発テロで亡くした八神瑤子の視点とで書き分けられてます。
キーワードはゲルニカかと思いきや鳩ですね。
平和の象徴の鳩をピカソは愛してたらしい。
かぐりんがレオパを愛したい!
影の主役は間違いなくパルド・イグナシオですな!
彼がいないと物語がおかしくなる。
そして、
1番美味しいのがルース・ロックフェラー!
最後にMoMAにゲルニカがやってくるのか?
こないのか?
結果、
それずるいわ!
って、
オチが素晴らしいし、
脇役すぎるマイテの存在がずるい。
ちなみに、
ピカソって自分の描いた絵にタイトルってつけなかったんだって!
ちょっと意外かな?
と、
思いきや、
描くことがメインならば、
描き終わった絵に興味がないって感じも天才っぽくていいかも!
そんな彼もですが、
ゲルニカは、
ドラ・マールの影響あってか、
ゲルニカだったらしいです!
自分が画家だったら、
タイトルありきで描きそう。
写真を撮るときも、
イメージ先行で撮るから、
結果、
タイトルありきで撮ってるしね。
ちなみに、
アートに興味ない人にとっては、
ゲルニカ何?
美味しいの?
って、
感じで、
ペンは銃より強し、
ゲルニカは空爆より強しですが、
関係ない人にはまったく関係ない世界観が逆におもしろい。
そもそも「MoMA」もなんて読むかわからん人多いよ。
狭い世界で、
広いことやってる感じがくすぐったくておもしろいのかな?
なんだろ、
この感覚はちょっと分からなくて不思議なんです!