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紙の本

画期的な枠組か、単なる大風呂敷か

2001/11/15 10:57

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:小田中直樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 僕はアジア諸国の歴史や現状をよく知らない。もちろん発展途上国からNIESに発展した国が多いとか、最近民主化が進んだとか、数年前のアジア経済危機への対応が各国毎に違ったとか、部分的な知識はある。でも、知識はばらばらなままで、だから関心がわかず、だから知識がつながらず、という悪循環。この事態を解決するには知識をつなぎあわせることが、そしてそのためにはアジア諸国を全体的で長期的に捉えるための枠組が、各々必要だろう。というわけで、アジア諸国を「共通のレンズを使って横断的に比較考察する」(二一九ページ)この本を読んでみた。著者の岩崎さんは、第二次世界大戦後、多くのアジア諸国が「開発独裁」と呼ばれる政治体制の成立と崩壊という歴史を辿ったことに着目し、「開発主義国家」と「市民社会」というキーワードを用いて、アジア政治の構造変動を説明した。具体的には、韓国、台湾、インドネシア、マレーシア、シンガポールの五カ国経験を辿り、各国の独自性に配慮しつつ、五カ国に共通して働いたメカニズムを明らかにする。そのうえで、アジア諸国に残された課題とそれに対応する方法を指し示す。

 この本のメリットは次の二つだ。第一、宗教も民族も歴史も違う五カ国を比較し、共通点を探るという「言うは易く行なうは難い」作業に挑戦し、それなりの結論を導き出したこと。つまり、独立直後、アジア諸国の国家目標は国家と国民の統合にあったため、強権的な政治体制が採用された。一九六〇年代後半に国家目標は開発に移るが、急速な経済成長のためには国家が経済を主導することが、そしてそのためには強権的な政治体制の維持が、各々必要だとされた。こうして開発主義国家が出来上がった。でも、開発が成功して豊かになると、新しい価値観と生活様式を持った中間層が台頭し、それに刺激されて市民社会が活性化し、民主化運動が広がり、開発主義国家は衰退してく。もちろん例外はあるだろうけど、この「開発主義国家と市民社会の弁証法的相互作用」(一四ページ)はわかりやすいし、色々な国に当てはまりそうだから、アジア諸国の経験を理解するための基本的な枠組として利用できるかもしれない。

 第二、この枠組を下敷きにして、アジア諸国の今後の課題として諸社会集団の平和共存、民主主義体制による開発、民主主義の教育の三点を指摘し、そのうえで、これらは全て「市民社会のあり方」(二〇四ページ)に関わることを指摘したこと。国家体制が民主化されても、市民社会、つまり社会を構成する一人一人が民主主義を理解しなければ、問題は解決しないのだ。これは、アジア諸国だけでなく、民主化なんて別世界か遠い昔の話と思われがちな日本の今後を考える際にも役に立つ視点だと僕は思う。

 それじゃこの本に不満はないかというと、そうでもない。岩崎さんの枠組で大きな役割を果たすのは市民社会を中心的に担う存在である中間層だけど、彼らと民主化の関係がはっきりしない。つまり、中間層は韓国や台湾では民主化の旗手でマレーシアやシンガポールでは民主化に無関心だっていう事態を、どう説明すればいいのだろうか。じつは岩崎さんも困ってるようで、中間層は「問題を孕んだ捉えにくい存在」(一九七ページ)だって結論してしまう。でも、そうすると、民主化を進めた市民社会は担い手がはっきりしないことになるし、開発主義国家が進めた経済成長と民主化の関係も曖昧になる。こうして、岩崎さんの枠組自体が雲を掴むようなものになってしまうのだ。そうならないためには、アジア諸国の中間層の政治意識をもう少し精密に分析し、民主化に対する彼らの評価やその背景を実証的に捉える必要がある。もちろん大変な作業だと思うけど、そうしないとこの枠組はただの大風呂敷に終わってしまうだろう。[小田中直樹]

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2011/03/29 06:45

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2011/05/10 14:29

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2011/11/18 09:24

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