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木戸幸一「なるべくこのまま東条にやらせて最後の機会――相当の爆撃と本土上陸を受けたるとき――、方向を一転するの内閣を作り、宮殿下(東久邇宮のことー筆者注)に総理になって頂く」
近衛文麿「せっかく東条もヒットラーと共に世界の憎まれ者に成っているのだから、彼に全責任を負わしめる方が良いと思う」
東久邇宮「自分は矢張り東条に最後まで責任を取らせるがよいと思う。悪くなったら皆東条が悪いのだ。すべて責任を東条にしょっかぶせるのがよいと思うのだ。内閣が終わったら責任の帰趨がぼんやりして最後には皇室に責任が来るおそれがある。だから今度はあくまで東条にやらせるがよい」
本書PP.136より
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(2007.10.30読了)(2006.08.27購入)
副題「アジア太平洋戦争の再検証」
本の題名からソ連以外のルートでの和平工作を日本海軍が行っていたのだろうかと想像して読んだのですが、そういう本ではありませんでした。
よく見れば、和平工作ではなく終戦工作なのです。終戦に和平の意味を勝手に込めて期待してしまったということです。
全体として、日本海軍の大東亜戦争に対するスタンスをたどってみたという感じの作品です。主な資料は、「高木惣吉史料」です。
著者 纐纈厚(こうけつ・あつし)
1951年 岐阜県生まれ
1973年 明治大学文学部史学地理学科卒業
山口大学人文学部教授
現代政治論、日本近現代政治・軍事史専攻
(「BOOK」データベースより)amazon
日米開戦をめぐって海軍は、陸軍との対立の中で苦渋の選択を迫られ、最終的には終戦工作をリードして日本を破壊の極みから救った―という史観は正当といえるのか。自立した政治組織・権力である海軍は時局をいかに認識し、日米開戦をどう捉えていたのか。また海軍穏健派による東条内閣打倒工作と終戦工作の最終的狙いは何であったのか。「戦争責任」の視点から「高木惣吉史料」等、新史料を駆使して、昭和初期政治史を再検討する。
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陸軍研究者がみる日本海軍の終戦工作。
現在流布している印象とは違い、海軍内での問題点を扱っているのが面白かった。
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1996年刊行。著者は山口大学教授。
巷に流布するアジア太平洋戦争における陸軍悪玉・海軍善玉論に待ったをかける本書。ここでは主に高木惣吉(海軍スポークスマン的役割を担った)史料を利用する。
本書の検討場面は
① 日中戦争時の海軍の政治的外交的軍事的意思、
② 日米開戦への意思決定過程、
③ 東条内閣倒閣活動、
④ 終戦工作。
日中戦争時は予算獲得、権能拡大が海軍の主な意図。余り積極的に関わらなかった日米開戦決定は、敗戦を了知しつつも海軍無能論の回避を狙う。
爾後終戦時までは、敗戦を見越した海軍の組織・権力温存という意図に基づく。とのこと。
全体を通してみると、他力、例えば、ドイツ、聖断、陸軍等を利用する癖がある。
これは、責任を負い実行する気概を喪失しているとしか言いようがない。それこそ、大久保利通がなした台湾出兵の後始末、小村寿太郎の手によるポーツマス条約と雲泥の差だ。