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近代の東南アジアに現れた地域システムを追うことで、今後のアジアについて考える本。寄港地に東南アジアが多い今年の遠航の頭に読めてよかった。
シンガポール建設者でもあるラッフルズが提言した中国人を警戒した東インドの自由貿易帝国と実際の中国人を協力者とした東アジアの英帝国が違ってしまったこと。
ブギス人のこと。
近代以前の東南アジア世界が海のまんだら、陸のまんだらと言うようにいくつかの中心で成り立っており、陸と海のどちらが優勢になるかが中国王朝の盛衰に伴うものであったこと。各地でリヴァイアサンが生まれ、その中で民族が実際的な意味を持ち始める過程。
第二次大戦後、米国日本東南アジアの三角形で構成された新しい秩序や上からの国民国家建設のこと。
最後に日本とアジアの関係がどうあるべきかについて。
十年前の本だけど、この本のベースにある東南アジア論は知らないことがいっぱいあったりで勉強になった。
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東南アジアの歴史を帝国主義諸国に占領されたあたりから最近までを解説している。自分がベトナムに関わっているので楽しく読むことができた。再読、購入の価値あり?
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海の帝国とは、もともと東南アジアを中心にあったアジア的な秩序(まんだら)をそこに行きついたラッフルズをはじめとする西洋近代諸国が国際分業体制の中に取り込んでいくうえで構想した非公式帝国のことである。ここで使われる概念に関しては、エマニュエル・ウォーラ―ステインの世界システム論におけるものが使われており、川北稔氏の世界システム論講義が大変役に立った。西洋諸国が構想した非公式帝国であるが、その後東南アジアは植民地に組み込まれていく中で、当初の構想とは少しずれながらも実現していく。そして、その植民地のされ方や、される前の国家の特色により、WW2後の独立国家の在り方が決定していく。そのような汎アジア的な視点で見た、日本の国際関係論的立ち位置についても興味深い。
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2000年刊。著者は京都大学東南アジア研究センター教授。◆近世期前から現代までの東南アジアの政治支配原理を巨視的に解説。記述内容の重複・時系列が章で前後等、雑誌(中央公論)連載の弊害はあるが、交易中心で進展した東南アジアの近世以降の見晴らしが明快に。①人口稀少地域の東南アジア前近世は、海のマンダラと陸のマンダラが相克し、双方一元的な面の支配でなく、中心多+影響圏(多元的影響と交易)の様相。②ポルトガルのマラッカ占領#1511年が東南アジア近世?(=プレ近代)史の起点。中華的朝貢貿易システムからの離脱目的。
③アヘン戦争終了が東南アジア近代史の起点。香港支配による英国の東南アジアの自由交易的植民地支配の完成による。というように気づきの多い書。内容の当否はもとより賛否も論じ得ないが、東南アジア各国の特殊性へも言及され、新書ではあまり見ないテーマかも知れない。なお補足。①マンダラ=国境がない、領域支配の一元化を志向するような近代的又は国民国家ではない、民族概念やこれらへの帰属意識が希薄等。
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東南アジアの歴史についての本。王政が敷かれたタイ、スハルト体制下のインドネシア、アメリカから議会政治が持ち込まれたフィリピンでは、性格が違うことが分かった。東南アジアが、19世紀、帝国主義の名の下に、今のような形になって行ったことも分かり、興味深かった。
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日本が19世紀後半に明治維新を経て近代化した時期に、東アジアにおいても秩序の変化が起こり、従来の「まんだら」型の「国家」(と呼べるものかは分からないが)関係から、ヨーロッパが持ち込んだ近代国家(リヴァイアサン)へと変貌を遂げていた。
そして、人々の「文明化」は人々の意識を変え、1910年代後半から1920年代に労働運動が起こり、コミンテルンの影響など共産主義が入り込んできた。
それに対し、近代国家の側は特高など警察機能の強化で対応している。
近代国家成立の原点は違えど、こうした流れはまさに日本と同じであり、共産化が体制維持の側に与えた衝撃と影響の大きさはこの時期の各国家にとって相当なものであったことを改めて認識した。
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ダメ.多数の概念を明確に定義しないまま議論を進めているため,その議論の妥当性を評価できない.また,ある過去の出来事を理解するのに助かると称し,特定の人の発言を唐突に取り上げ,それに少し解説を加えて終わるというのは,論証とは言えないだろう.結局,過去の出来事を既成の理論に無理やり当てはめて解説している――しかも曖昧な概念で議論を進めているせいではそれっぽく見えるようにしている――だけでは? さらに,固い話を積み上げず,大きな話をしようとしているせいで,曖昧な印象が残るだけだった.
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素晴らしい内容。モヤモヤしていたことに対する一定の答えが得られた様に感じました。東南アジア、東アジアを理解する良書です。
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本書は題名が「海の帝国」とあるように、アジアを海上貿易面からとらえている本です。またこれは後書きを読んでわかるのですが、メインは東南アジア地域を俯瞰的、歴史的に分析して共通性や相違性を解説していると言うことで、日本や中国、朝鮮については記述が薄くなっています。ラッフルズのシンガポール建設など基本的に東南アジア地域の本だと思って読んだ方がいいです。
本書を読んでなるほどと思う点としては、東南アジア地域の国々と東アジア(日本、中国)国家の生い立ちの違い。また東南アジア地域でも近代国家になる過程で表面的には同じ独裁政権でも、権力構造ではずいぶん違っていて、それが経済発展にも影響を及ぼしていることなどが明らかになっています。このような俯瞰的かつ歴史的な分析は貴重だと思います。
一方で物足りないと感じる面もありました。それは副題にもある「アジアをどう考えるか」の側面ですが、これについては明確な回答がなされていないという印象を受けます。アジアは欧州とは違う、日本はドイツとは違う、というように「○○のように考えてはいけない」という示唆はあるものの、ではどう考えるのか、という点についてはかなり抽象的で明確なメッセージに欠けているという印象を受けました。
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アジアのそれぞれの国がどのように近代国家となってきたか、その歴史によって、今日の在り方がどのように違うか、それを踏まえると今後のアジアの、日本の向かう場所はどこか、といったことを述べている。