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貴族勢力を削ぐために遥か隋の時代から始まった科挙制度。受験資格にほぼ制限がなく、権力の世襲や軍部勢力の拡大も抑制できるこの制度がいかに当時優れていたかは、王朝が交代しつつも長年にわたって広大な土地に中央集権国家を持続できたことが証明している。
しかし優れていたからこそ清代まで続いてしまい、近代化された外圧に耐えることができなかった。
童生から進士にいたるまでの気が遠くなるような試験地獄が、ドラマを観るようにリアルに想像することができた。
この本が書かれたのが今から60年近く前であることに驚いた。特に後序の筆者の見解は現在依然として問題となっており、筆者の先見の明に脱帽である。
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[かつて中国では、官吏登用のことを選挙といい、その試験科目による選挙を・科挙・と呼んだ。官吏登用を夢みて、全国各地から秀才たちが続々と大試験場に集まってきた。浪人を続けている老人も少なくない。なかには、七十余万字にもおよぶ四書五経の注釈を筆写したカンニング襦袢をひそかに着こんだ者もいる。完備しきった制度の裏の悲しみと喜びを描きながら、試験地獄を生み出す社会の本質を、科挙制度研究の権威が解き明かす。]
「宮崎さんは日本の中国史研究をリードしてきた京都大学の教員であり、中国の古代から現代まで、すべての時代にわたって論文を書き、本を出版している。しかもそれがいずれも抜群に面白い!!そして本当にすごいのは、難しいことを素人でもわかるような文章で書いていること。若い人にぜひ「ホンモノ」の歴史家の文章に触れてほしい。ーこの本も、中国のある特定の時期(清)について、限定された課題(科挙)を考えるだけのものではない。広く分明史として中国をとらえる視点があり、そのために現代社会とも結びつけられていて、さまざまなことを考えさせてくれるものになっている。」
(『世界史読書案内』津野田興一著 の紹介より)
津野田さんは宮崎市定さんの本のファン^^
目次
試験勉強
県試―学校試の一
府試―学校試の二
院試―学校試の三
歳試―学校試の四
科試―科挙試の一
郷試―科挙試の二
挙人覆試―科挙試の三
会試―科挙試の四
会試覆試―科挙試の五
殿試―科挙試の六
朝考―科挙試の続き
武科挙―科挙の別科
制科―科挙よりも程度の高い試験制度
科挙に対する評価
著者等紹介
宮崎市定[ミヤザキイチサダ]
1901‐1995。長野県飯山市に生まれる。1925年、京都大学文学部東洋史学科卒業。60年から65年にかけ、パリ、ハーバード、ハンブルク、ボフムの各大学に客員教授として招かれる。専攻は中国の社会・経済・制度史。89年、文化功労者に顕彰される。もと京都大学名誉教授
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宮崎市定が書いた『科挙』という題の書籍には二つあり、一つは筆者が出征前に書いて、たまたま金庫に保管されていたのが戦災を免れ、前後に出版され、今は絶版しているもの。もう一つは、初代の内容に満足のいかない筆者が改めて執筆し直した内容で出版されたもので、即ち本書。後者には、区別するために副題「中国の試験地獄」がつけられた。
筆者は戦争に出て、よほど見たくないものを見たんだと思う。本書中に度々日本軍のことが出てくる。それがあってか、それとも元々思っていたのかは知らんが、巻末近くで述べている数文が非常に感慨深かった。
「どんなに手柄をたてた将軍にも、政治の最高方針には参与せしめないという制度は……無情……に見えて実は政治の最高の眼目なのである。……軍隊は国家を保護するためにこそ存在すべきで、それが国家・国民の支配者になられてはたまらない。」p.209
中国は文治国家で、特に宋代以降は文が武を抑える構造が顕著になったらしい。同時代の欧洲がまだまだ武に頼る政治から抜け出せなかったのに対して、欠陥こそあれ、中国は文をもって政治の中心としていたと。それを支えていたものの一つが科挙であった。
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・魯迅の『孔乙己』(竹内好 訳, 岩波文庫) を前に一度読んだがよく理解できず。解説や脚註を読んでもピンと来ず。それが、本書『科挙』p.206に『孔乙己』の三文字がでてきてようやくその背景を知れた。棚から牡丹餅。
・中国でよくみかける屋根のついた門、状元坊と呼ぶらしいが、あれが科挙で状元になったお祝いに国の助成金と郷里の後援で建てられるいわば記念碑だとは知らなかった。勿論、今見られるもののうちの大半は偽物だと思うが、それでも次から見る目が変わりそう。
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流し読み。蒼穹の昴でも科挙の激しさは知っていたけど、歴史的な試験制度の変化について触れられていた。私には無理だー
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学問が極まると、その筆致にユーモアが自然とにじみ出てくるものなのだろうか。
あらゆるものを調べつくしたからこそ、このようなおかしみのある描写が可能なのだと思う。
タイトルを見て、糞まじめな内容だと思っていた向きは、ぜひこの碩学の一流のユーモアを感じてもらいたい。
中公新書の数ある名著の中でも個人的にベストの一冊となりそう。
あとがきに、日本の終身雇用制と大学について触れられており、その制度のあり方を鋭く批判している。指摘は今なお有効であり、この国が全く進歩していないことが分かる。