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紙の本
論理の遊びを楽しみつつ、世間の議論の危うさを実感しよう
2005/12/11 22:41
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アラン - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書では数多くの詭弁が紹介されているが、そのうち「媒概念曖昧の虚偽」という詭弁は、お馴染みの「AはBである。BはCである。ゆえにAはCである。」という三段論法の使いつつ、Bを二通りの意味で使われる言葉を当て、おかしな結論が出すというものである。例えば、「塩は水に溶ける。あなたがたは地の塩である。ゆえにあなたがたは水に溶ける。」第一文の「塩」は物質的な普通の塩であり、第二文の「塩」は「役に立つもの」というような比喩的な意味で使われている。このような詭弁なら笑い話で済むが、次のような詭弁になると事態は深刻になる。「Aは水俣病患者(1)ではない。水俣病患者(2)でなければ補償を受けられない。ゆえにAは補償を受けられない。」(1)は「水俣病の典型的な症状を、すべて具えた患者(医学用語)」のことであり、(2)は「工場廃水による有機水銀中毒患者」のことである。
立花隆著の「東大生はバカになったか」では、「西欧では虚偽論が発達して、・・・論争をするときでも、それは論点先取の虚偽になるなどとパターンを示すだけで相手の誤った議論を封じこめるということが可能になります。しかし日本では、こういったロジックの誤りを見抜いてそれを指摘するという知的訓練が小さいときから決定的に欠けている・・・ため、・・・初歩的な誤謬推理にもとづく議論をふりまわす人が絶えないという知的惨状を呈しています。」として、日本人が、誤った議論を見抜く能力、誤った議論に反駁する能力が不足していると嘆いている。私事で恐縮だが、私はこの立花氏の文章を読んで刺激を受け、一度通読した本書を再び手にとったのである。
本書を読めば、どのような場面で詭弁が使われているかが具体的に分かるし、世間でなされている議論がいかに危うい可能性があるかが分かる。一方で、まえがきにあるように本書の目的の一つは「議論を楽しむゆとりを身につける」ということであるが、紹介されている詭弁が分かりやすいものばかりなので、本書を読むだけでは、実生活で応用して、議論の時にゆとりを感じるようになることは難しそうである。しかし、それはむしろ他書を待つべきであり、本書もう一つの目的である「知的・論理的な観察」は十二分に行うことができ、知的好奇心を大いに満たしてくれる一冊と言うべきであろう。
紙の本
舌先三寸
2012/12/28 16:47
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書を買ったのは、今を遡ること10年くらい前。
たしか、その頃、中公新書でも10本の指に入るロングセラー、と聞いていたのを(かすかに)覚えている。
奥付を見てみると、1976年に初版が発売され、今回読んだものは1998年の第41版。
先日、新聞の片隅に中公新書の発行部数ランキングが載っていたが、そのベストテンの中に本書もランクインしていた。
懐かしさとともに、まだ本書を手放していなかったので、久しぶりに読む事にした。
本書は「詭弁を見破る方法」とか「ある程度の詭弁を弄してでも、自分の主張を通すためには」といった内容ではなく、「詭弁の構造を分析して、議論や論理遊びを楽しもう」という趣旨の本。
(著者も言っているが)ハウツー本とは異なるという事を強調したいために、タイトルに「学」という言葉を使ったらしい。
論理学の専門用語は、いくつか出てくるが、その専門用語自体は知らなくても、実例を見れば、その「理屈のこね方」は、どこかで聞いた事がある、というのがほとんど。
人は時に意図せず、時に意図的に詭弁を弄するものらしい。
著者が外国でつり銭を間違えられそうになった例は、落語の「時そば」の変形(悪意はなかったらしいが)
また、本書には出てこない例だが、数年前、自衛隊の海外派遣に関して、国会で「非戦闘地域とは?」という質問に「自衛隊がいる所が非戦闘地域だ」とのたまった某総理大臣もいた。
例を挙げて「詭弁の構造を分析」する段階で、世にはびこる詭弁のパターンをピックアップしているので、「詭弁を見破る方法」の習得には役立つかもしれない。
が、詭弁だと分かる事と、詭弁であることを相手に認めさせる事は別。
本書では、「そういう場合、こう切り返せ」などという事までは書かれていない。
むしろ、詭弁だと見破る事より、間違っている点を指摘する事の方が難しい。
簡単な例ならば、すぐに分かるが、「上級編」とことわっている例だと、間違っている点がなかなか分からなかった。
そうでなくても、自分で考えた場合、「早とちりで、こういう勘違いをする」と紹介されているケース、そのままの結論になってしまう事がたびたび。
たたみかけるように自説を展開する人は疑ってかかるようにした方がいいかもしれない。
ところで、「たたみかけるように自説を展開する人達」は、つい最近、たくさん街頭に立っていた。
今更だが、その人達の「活動」が始まる前に本書を読んでおけば・・・と思った。
たくさんの実例を集めることができただろうから。
いや、これからでもたくさん集められそうだ。
紙の本
詭弁を打ち破れるか!とても面白い良書です。
2016/06/15 08:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
よく他人に口で打ち負かされたり、うまく騙されたりしたという経験は誰しもあるかと思います。いわゆる「口のうまい人」というのは詭弁や強弁が使われているというこtのようです。本書は、こうした詭弁や強弁を論理学を学ぶことで、打ち破っていこうというものです。題名に反して、最初からとてもわかりやすく書かれているので、誰にも理解しやすいと思います。また、内容自体非常に面白いのでぜひとも読んでいただきたいと思います。
紙の本
読む価値あり
2015/10/30 21:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:でんしゃずき - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は本書の存在を,SF作家山本弘のホームページで知った。
読んでみた。今回が3回目だ。忘れていた内容もあった。所謂「文系」の自分には難解な,というより「見たくもない」個所もあり,そこは飛ばしながら,それでもまた読んでみた。
今回気が付いた。「喜劇には論理性が求められる」。本書では「男はつらいよ」が引用されているが,落語であれギャグ漫画であれ,言い換えれば「笑わせるためには,送り手は頭を働かせねばならない」のである。そして,ひっかけられないためにはその文章の読解力も問われる。算数の文章題には国語の読解力も要求されるというが,それである。
実は,本書は「論理的思考能力」だけでは無く,歴史の知識もまた得られる,という意外な面もある。
本書の内容は現代でもまた通ずるものである。このような本を「古典」と呼ぶのだろう。