紙の本
理性の時代の残照か
2019/06/12 16:17
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:someone - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分の中でのファクトが更新されていなかったことに気づかされた点は評価。
しかしながら,垣間見える筆者の主張や歴史観には同意できない。
技術の進歩により,社会の「近代化」は世界全体をあまねく包み込んでいる。
平均寿命は延び(≒乳幼児死亡率は下がり),所得水準は上がり,それに伴
い環境保護のような取組にも注力されるようになった。
確かにこれらはファクトである。
・・・だが,だから世界は『良くなっている』と言えるのか?
「私」の知らない100年前の誰かの生活と比べて今の「私」の生活が「良
くなっている」ことは,「私」にとって何ら意味を持たない。
例えば日本の治安状況について,統計上の犯罪の件数は減少している。
筆者ならば,従って「良くなっている」と主張するだろう。それは客観的に
は正しい。
しかしながら日本人の「体感治安」は真逆を示す。
筆者は,こうした事象を知識の欠如による誤解であり,正しい知識を身につ
ければ解消されるものと考えていよう。しかしながら,それは啓蒙主義の誤
謬である。
世界とは,「私」とアクセスする情報のみに依り成立している。
そして,大多数の「私」にとって世界とは自分に近しい(地理的・社会的)環
境であり,その意味で「良くなっている」や否やは近視眼的なものにならざ
るを得ない。
世界とは客観的な存在ではないのだ。
本書は,私には正しい知識が正しい行動を生むという理性の時代の残照に思
える。そうした物語が失われた荒野に,私たちは生きている。
電子書籍
偏向報道に惑わされる
2020/05/01 11:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近のコロナ騒動に限らず、フェイクニュースの類いが氾濫し、デマも横行してパチンコ店の開業に敏感に反応するただ今の日本。ということで、この本に何が書いてあるのかと手に取る。多少実用的にもどんな情報の峻別方法が書かれているのかと興味があった。著者によると、人間には世界をドラマチックに見る習性があって、中でも10の『本能』があるのだという。著者のロスリングはスウェーデンの医師で疫学者、オピニスト。本来の習性に翻弄されて世界が悪い方向に向かっているという悲観論から脱却して、世間が少しでもファクトフルネス(事実らしさ)に基づいて世界を見ることができるようになればという切実な願いに突き動かされて書いたのだという。実際、医師としてのモザンビークやアフリカ諸国での経験に基づきながら、著者は悲観論に嵌らず、あふれるような善意に導かれるように生きてきたことが著書のあちこちにしのばれる。こうした信念のような『楽観』自体にもある種の偏向があるように思える。しかし丁寧に実例を挙げて分類しデータも挙げて良心的な仕事だ。新たな発見があったというより、逐一数え上げ平易に語る世間的な誠実さが印象的。
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データがいつのものなのか、誰が作ったのか、サンプル数はいくつかなど、自分の関わることでは気をつけているのにも関わらず、世界がどうなっているのかについて頭に入っているデータの正確性はあまりにも古く、曖昧だ。
そして、常に偏見に満ちていて、それをベースにアップデートされている。
本書では、正しく世界を見るための妨げになる、10の思い込みが紹介されていて、それに対してどうアクションを取れば良いかが書かれている。
大切なのは、自分の信じている、当たり前と思っていることが本当に正しいことか今一度考え直すこと。
深く根ざした思い込みほど、修正するのは難しい。
ただ、安心するべきことは、そうした思い込みをしているのは自分だけではないことだ。
思い込みに気づいたことをチャンスだと思い、変えていくべきだ。
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多くの人が古い知識や思い込みにより世界を誤解している
最貧国の数は減り、平均寿命や教育率は上がっている
事実として世界は徐々によくなっている
同時に世界には貧困に悩む人がまだ何億人もいる
データに基づいて適切に行動することでより良い世界を作れる
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感染症の世界的な流行の今、人々が力を合わせて小さな歩みを重ねるしかない。
焦り、恐れは批判的に考える力が失われ、判断ミスを犯してしまう。客観的な信頼できるデータを入手し、総合的に分析し、決断し、行動し、評価する。
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話題の書。世界に関する我々の悲観的な/古い認識を正す。リドレー「繁栄」を思い起こさせる。冒頭のクイズには目からウロコ。人類のリテラシーの方向性を示してくれるという意味で希望を、そのために数々の「本能」を手放さないといけないという意味で絶望を与えてくれる本。
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『FACTFULNESS』一気読み。早くも今年のベスト本かもしれない。曇りなくありのままに世界を見つめる技法が具体的にまとまってる。著者が人生の使命を魂とともに一冊にしたのが伝わる。ある意味で『ホモ・デウス』の副読本としても。だから読書はやめられない。
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日本にいると、本当に世界のことを理解できていない。特に日本は島国で、情報統制がされていることが再認識される。
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物心ついたときから経済が成熟した国に暮らしている現代人の必読書
特に政治家、企業の役員、マスコミ、マーケター、投資家、フェイクニュースに騙されたくない人にはおすすめ
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反射的に直感的に判断してしまう傾向を「本能」と呼んで
①分断本能
②ネガティブ本能
③直線本能
④恐怖本能
⑤過大視本能
⑥パターン化本能
⑦宿命本能
⑧単純化本能
⑨犯人探し本能
⑩焦り本能
に分類し、それぞれにこれらの「本能」に抗って、ファクトに基づいた行動を促す解説書。ダニエル・カールマン「ファスト&スロー」のファストに考えるシステム1思考と、スローに冷静に考えるシステム2にも重なる。
重要なことは、これら10分類された本能は、わかりやすく一般化(抽象化)してくれているので、日常生活の中でこれらの認知バイアスに自分や組織が陥っているかどうかを判断しようとするクセ付けと、本書が示すような「ファクトに基づいた冷静な行動を紡ぎ出せるかどうか」だ。
今の自分や社会のその判断(常識や「場の空気」など)は、どの本能で決めつけているだろうか?
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一昔前と大きく変わった世界の様相を捉え直すことができる本。
説明は冗長で、読み易くはないが
エッセンスを読み出せれば気づきはある程度あるかも。
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今更読んだ感はあるけど、評判通りいい本だった!
世の中を見る時、いかに偏った目で見ているか。世界はおもっているよりずっと良くなっている。
データをきちんと捉えるちから、大事。
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この本から、
【事実に基づく「世界の見方」と「自分の見方」】
を教えてもらいました。
この本を読んだ理由は、
世界のことを何も知らない自分が恥ずかしかったからです。
いつも自分の身の周りのことばかり考えていて、
世界に思いを馳せることはほとんどありませんでした。
もっと「自分の身の周りのことだけじゃなく、世界に目を向けたい」と思ったので、この本を読むことにしました。
この本から、
・「先進国」や「途上国」という分類はもはや存在しないこと
・人々の生活は文化や宗教よりも所得が関係していること
・世界は変わり続けていること
などを学びました。
また、わたしたち人間は10の本能に支配されると
勘違いや過ちを犯してしまうことがあって、
本能に負けてしまいそうな自分に気付いて
「ちょっと待てよ」とブレーキをかけることの大切さを教えてくれました。
そうやって本能ではなく事実に基づいて世界と自分を見ることが人生の役に立つし、何より心が穏やかになるとのことです。
10の本能のうち、自分が特に気を付けたいと思ったのは
「犯人捜し本能」です。
物事が上手くいかないときに、ついつい誰かを責めてしまいそうになる。
でも、そんなときはこの「犯人捜し本能」が働いていることを思い出して、「犯人」ではなく「原因」を探す。
なぜなら、犯人を見つけたとたん、考えるのをやめてしまい、ほかの原因に目が向かなくなってしまうから。
誰かを責めることに気持ちが向くと、学びが止まってしまい、正しいことに力を注げなくなってしまうから。
本能にブレーキをかけ、謙虚になり、事実に基づいて世界と自分を見ること。
その大切さを、この本から学ぶことができました。
最後に、この本の著者の1人であるハンス・ロスリングさんは、亡くなる前の数ヶ月間をこの本の執筆に注いだそうです。
ほかの仕事を全てキャンセルし、残りの人生をかけて「事実に基づく世界の見方」を広めるためにこの本を書いてくださったということを知りました。
そんな「おわりに」を読んで、ハンス・ロスリングさんの情熱に改めて感動しました。
この本に出会えたこと、ハンス・ロスリングさんの思いに触れられたことに感謝して、この本での学びを今後に活かしていきたいです。
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世界を正しく見るとは
平均を用いると分布が隠れてしまう
悪いと良くなっているは両立する
数字は比べたり、割合に変換する
数字がなければ世界は理解できない。数字だけでは世界はわからない。
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ファクトフルネスとはまさしく「思い込みを捨てて、データに基づいて世界を正しく見ること」。扇情的なニュースが台頭する現代、全員がもつべき心構えだと思う。
自分の思い込みを戒めるとともに、他の人にもこの本を勧めていきたい。