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自分にとって、つかみどころのない話でした。
芥川賞同時受賞作とも共通する、生きている感覚の希薄さ、空気感、そんなものを感じました。ビットコイン自体が実体のないものだからということもあるでしょう。ニムロッドの物語、塔と駄目な飛行機。現実の荷室仁や田久保紀子の存在も幻のような気がする。
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芥川賞の作品、リアリティのある現実社会の基盤の上で地道なサラリーマンを務める主人公。そして、その主人公と対照的な、浮世離れした不思議な雰囲気を纏うニムロッドと田久保紀子。
言葉一つ一つ、抽象的…というか哲学的な話で、一回では理解しきれてないところはあるけど、二回は読めないかな。一瞬通り過ぎて、「あれはなんだったんだろう」と思うような、刹那的な話だから。
ビットコインとか、登場人物たちの不確実さを味わって終わる話なんだろう、と、自分の中で自分を納得させてみました。
ニムロッドの空想世界はまるでだれかのパラレルワールドのようで、最後、だれも「ダメな飛行機」が作れなくなる下りは悲しさがあったが、あれは田久保紀子だったのだろうか。
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この作家の作るトリップするような、SFな世界観を期待して読んだが、リアルな話、しかもストーリーが展開しなさそうな仮想通貨の話だったため、最初は少しがっかりしていた。小説の中で小説が展開され、さらに呼びかけるシーンのとこでは、単なる何かを題材にした小説では呼び起こさない発見があって、小説内小説、映画内映画をまだ自分は面白がれる、面白がってしまいそうだと思った。ニムロッドは、太陽を目指した。そして表現したい衝動は誰もが持つ根源的な欲求であり、それを記し続け、本来は誰の為でもなくただ自分の為に積み上げる。そこが良かった。
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例えば、僕らが持つスマートフォンがいつしかデザインの多様性を失ったように、人も何れは個性を持たなくなるのだろうか。グローバル化で混ざり合った結果、肌の色や宗教の違いなど淘汰され、同化していく。それが、人としての完璧な姿なのか。
不完全さと完璧さ。
不確かさの上で成り立つ現実世界とブロックチェーンが摩擦を起こすであろう遠くない未来、その時、僕らが目の当たりにする感情をまざまざと見せつけられたような気持ちになった。
久々に想像力を刺激してくれる作品に出会うことができた。
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仮想通貨という、最先端のものを扱いながら、旧約聖書の内容に触れながら物語が進行するのが面白い。
スケールがでかいと思う。
そもそも、引用に旧約聖書とまとめサイトが並んでいるのなんて見たことがない。
物語の合間で紹介されるダメな飛行機の数々。
失敗って、私たちにとってなんなのかな?
いろんなことを考えさせられる小説。
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芥川賞にしては読みやすかった。
小説部分がおもしろかった。
僕はニムロッド、人間の王。
なんかの演劇のセリフっぽい。
ダメな飛行機コレクション、興味深い。
どうしてひとは完全じゃないものに魅かれるのかな?
女性のキャラはイマイチわかんない人だった。
淡々と進んだ感じだったけど、三人が出会ったところへんからドドドっと終わりにむかった感じ。
あの2人の関係は予想ついたけど、
桜花に乗っていくシーンは綺麗だな、と思った。
綺麗、と感じるのがいいのか、悪いのか、は分からないけれど。
ビットコインは殆ど名前しかしらないんだが、
お札を数える時に、これってでもほんとうはただの紙なんだよなあ、
火つけたら燃えるんだよなあっと、よく思うのだが、
皆が価値あると認めるものが価値をもつ、ということの
ふしぎ。
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芥川賞受賞作
IT企業に勤める主人公
結婚にトラウマを抱える恋人
鬱をわずらった元同僚
物の価値、人間を個たらしているもの
ビットコインの採掘を絡めた作品
・・・なんだけど、うーん。
個人的に良さがよくわからなかった・・
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第160回(2018年下半期)芥川賞受賞作。
最近では珍しく、文章技巧ではなく、近未来的な寓話風物語でした。
最近の受賞作同様に、文章は読みやすいので、一気読みできます。
自分としては町屋さんよりこちらの作風の方が好きですね。
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サーバー保守会社に勤める中本は,使われていないサーバーを利用して仮想通貨を採掘する仕事を命じられる。かつて小説を書いていた先輩のニムロッドはその話に興味を持つ。
みんなが存在すると合意することで本当に存在できるのは,仮想通貨に限った話じゃないかもね?というようなことなのか,正直なんだかよく分からない。
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内容がよく理解できなかった。仮想通貨のことが、ぼんやりと理解できたことが、唯一読んでよかったたと思える点。この作品が芥川賞受賞作なのか…良く分からない。自分の読解力の無さを痛感。
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ここに描かれているのは、世界の始まりであり、世界の終わりである。そんなふうに言ってみると、ちょっとホッとする。
「ニムロッド」て、グリーン・デイじゃないの?
Haushinka is a girl with a peculiar name
I met her on the eve of my birthday
Did she know,
Did she know before she went away?
Does she know?
But it's damn too late
ハウシンカ、不思議な名前をした女の子
バースデイのイヴに出会ったんだ
彼女は知っていたのか
行ってしまう前に
分かっているのか
でももう手遅れだ
こんな、感じ。この作品のニュアンス。
以前の作品に比べれば、段違いに読みやすくなってる。でも読みやすいってことはどういうことなんだろう。小説の輪郭が見えやすくなっているってことを、みんな褒めているようだけど、なんか違和感が残った。そこがこの人の難しいとこかな。
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People In The Boxの曲名をタイトルにしている、というだけあって、世界観がかなり似通っていた。
ビットコインという存在の脆さ、情報共有による個の消失といった、現代の利便性における弊害が、語り手=主人公の淡々とした語りにより語られる。物語の根底にある寂寥感に、やはりピープルの歌詞を想起させられた。
メタファーであろうものが沢山描写されているが、ストーリーの続きが気になりすぎて考察をしないまま読み終えてしまった。再度読んで考察する機会を設けたい。
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芥川賞の作品なのに、
最後に途方に暮れることなく読み切った。
現実と非現実がギリギリ紙一重のような世界観。
今すぐにこうなることはなくても、
いつかこういう世界になっていそうだということを
肌で感じられるようなうすら寒い世界観。
淡々と読み進めてしまったが、
一つ一つの小道具に何か意味が込められていそう。
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今しか書けない小説。
戦争体験も、安保闘争もない、大した悩みもない普通で平凡なぼくたちはいつでも代替可能で、ただただ無能だと認めることくらいしかできない。
それを三つの物語を混ぜ合わせながら圧倒的な表現で迫る名作。
「『世界は、どんどんシステマティックになっていくようね。システムを回すための決まりごと(コード)があっめ、それに適合した生き方をする、というかせざるを得ない。どんな人でも、そのコードを犯さない限りは、多様性は大事だからと優しく認めてもらえる。
それで、コードを犯せば、足切りにあって締め出される。収入が足りないとか、TOEICが足りないとか。(中略)世界全体がそんな風に締め出しを始めたら、行く場所がなくなる人が続出するかもしれない。」
「『優しい世界。世界はどんどん優しくなっていく。差別も減っていく。出自の差だって、能力差だって、そのうちにたいした意味を持たなくなる。どんな人もそれはそれでありじゃない?と優しく認められる。』」
戦争も安保も飢えもない僕たちの世代。
普通である敗北。
太宰や安部公房、井上靖などの戦中派戦後派への敗北宣言。
人間の機能とは何か?
僕たちの存在意義とは何か?
代替可能か?
普段漠然と感じている不安が描写。
失敗しない、失敗させない
死なないコントロール可能な社会。
新たなディストピア小説。
劇中小説。
願いが完璧にかなったとき、人間は人間でいれるのだろうか。
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芥川賞受賞作品ということで読んでみました。他の人もコメントで書いてるけど、すっごい村上春樹感があります。ただ、主人公のステイタスは村上春樹っぽいんだけど(30代後半で独身だけど、恋人はいて、結婚願望はあんまりなくて、社会に対して斜に構えているみたいな感じね)、主人公が年齢に対して子供っぽすぎるんだよね。文体なのかな?このあたりは大人の男の渋さを感じさせる村上春樹の描く男性キャラクターとは全然違うね。
ビットコインのことは知識としてよく知ってたので、この小説を楽しめました。個人的には「駄目な飛行機」シリーズ好き。