紙の本
蟹って、たしかに人の顔にみえる
2020/06/11 22:08
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「三匹の蟹」というタイトルは、海辺のモーテルの名前からきている。緑色のランプがついていたということは空室ありということなのだが、桃色シャツの男と主人公がこのモーテルにはいったかどうかまでは書かれていない。でも、何も起こらなかっただろうと思う、「喋ることが無いのだもの」と桃色シャツを冷たくあしらった彼女だから、彼女は遠くアメリカの地で何もかもに疲れてしまったのだろう。モーテルの名前だけではなくて、冒頭にも蟹が登場する「蟹の甲羅は甲羅であって、顔ではないのだが、どういうわけだか、由梨は何時でもそのいびつな蟹の甲羅が顔に思えて仕方がないのである」。蟹は何だか哀しいという彼女の気持ちを具現化したものなのだろうか。この作品は第59回(1966年)芥川賞受賞作だ
紙の本
人の心と心は、霧の中に立っているようなもの
2001/03/09 15:28
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投稿者:せいあ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「三匹の蟹」は、誰にも起こりうる出来事を描いているだけによりリアルであると思う。
主人公由梨の一夜は、あるコミュニケーションの一つの形にすぎない。この物語は特別な体験を描いた作品ではない。だから、地味な作品である。
ある一定の感情に滞った状態や何かよくわからないもやを払うために、きっかけとして人は何かとコミュニケーションをとろうとする。自分とは違う何かとふれあうことでこれまでの凝り固まった価値観に新しい風を吹かせ、間違いを修正したり、自己を再確認したりする。
人が当たり前のように誰かと会話したり、スキンシップしたりしていることを、深く掘り下げて考えるきっかけになった。
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最近読んだんだけど、
斬新なタッチの、
その短編に詰め込まれた
情報量(心情から情勢まで)のすごさ。
圧倒されちゃった。
女性の、結婚への心情とかその揺れ具合とか、物語にうまく浸透している。
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2010年の今読んでも、「新しい」と思った。
答えのない日常の中で抱える虚無感。
どこか「ずれている」人たち。
明確な意思が見当たらないまま、海岸に打ち棄てられるように、彷徨う主人公。
読後にどことなく気持ち悪さ、煮えきらなさが残った。
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アメリカ在住の日本人主婦が主人公。ホームパーティを開くが友人達との会話が嫌で出かけていきずりの男と関係を持つ。そのホテルの名前が”三匹の蟹”。昭和40年代はこういうひねくれ方が新しかったんだろうと思うが、気持ち悪いだけとしか思えない。不健康な本。
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私としては、‘古き良き日本’の人たち。が過去の人たちに対する
漠然とした印象だが、
倦怠や欺瞞や希望などがごちゃまぜになった世界がいつの世もあるんだと、気づかされる。
黒板をひっかくようなノイジーな、それでいてクリアな文だと思った。
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もっとじっくり読みたい本。
評価は保留で。
中身は満ちているけど輪郭を掴ませない。
表面を流れて落ちていく言葉。縺れあってすりきれた世界。
様々な短編中の、ぼんやりしているように描かれて女性が一番世界の醜さと生々しさを見通していたのではないでしょうか。
気怠い中年の会話の話と、狂気と神秘が半々の自然の話が多かった。
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ちょっとしたショックのある作品で、どことなく、懐かしのアメリカ映画(アクションではない)を彷彿とさせます。
この作品を読んで、フォークナーを無性に読んでみたくなりました。
ふと、アメリカの田舎町の風景が目に浮かんでくるような、そんな文章。蟹というと心臓のイメージがあります。なんとなく、中身が詰まっていそう。
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敬愛する村上龍氏のエッセイに出てきたので、借りてみました。
会話がおもしろくて、おお、中々…!!
とわくわくしてたのに、何か気付いたら終わっとった…
これが文学…
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『淋しいアメリカ人』という昔江角マキ子を嫁いびりした作家の本を思い出す。「三匹の蟹」の主人公が参加したがらない「ホーム・パーティ」というのはその象徴的な場かもしれない。「淋しいアメリカ人」は「淋しい日本人」を呼ぶ。ただしこの著者に限っては、異邦に身を置く日本人としての淋しさのうえに「誰にも本当のことを言えない」母としての、「イマジネーションがありすぎる」妻としての、「どうにもならないで男にすがりつくしかない」女としての淋しさが重なっているらしい。その重なりがなければここまで冷めた女性の肖像はつくれないだろう。それにしても「首のない鹿」の色彩のイメージはすさまじすぎる。
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1968年上半期芥川賞受賞作。タイトルからは日本的な物語を想像していたのだが、なんとアメリカが舞台の小説だった。バス代が85セントというところで気がついたのだが、意表を突かれた思いだった。なんと「三匹の蟹」は、海辺の宿の看板だったのだ。実際の舞台はアラスカらしいのだが、それは小説の中では特定されていない。そこに暮らす(期間も不明だが、それ相応に長そうだ)日本人ファミリーの心の空隙を描き出しているのだが、他者との関係性の異質さと孤独感が、読む者をも寂寥の想いに誘うかのようだ。
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[ 内容 ]
“大型新人”として登場以来25年、文学的成熟を深めて来た大庭みな子の、あらためてその先駆性を刻印する初期世界。
群像新人賞・芥川賞両賞を圧倒的支持で獲得した衝撃作「三匹の蟹」をはじめ、「火草」「幽霊達の復活祭」「桟橋にて」「首のない鹿」「青い狐」など初期作品を新編成した作品群。
[ 目次 ]
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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1968年に群像新人賞と芥川賞を同時受賞した作品です。
当時の文学界を震撼させた!と絶賛されており、興味が湧き図書館で予約しました。(本としては絶版されているそうです。)
芥川賞の割には読み易く、50年前の作品なのに今読んでも全く古臭い感じがしないことに驚きました。
人間関係の不信、外国に暮らす孤独感などが、無意味な会話や皮肉な会話から伝わり、主人公の空虚感がよく表れています。
うーん。でも私には文学的過ぎたな。
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政治風刺を散りばめた、会話劇主体のよろめきドラマ。
アタシ、何をきっかけにこの話を読もうと思ったんだっけ……?と首をひねりたくなった。星2とする。
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#英語 The Three Crabs by Minako Oba
1968年の日本の読者に与えたインパクトは、2021年に読んだ私にはなかったが、後に『浦島草』を執筆する著者のデビュー作だと思うと感慨深い。
"群像新人賞・芥川賞両賞を圧倒的支持で獲得した衝撃作"